大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第陸拾漆話

 豪華絢爛とはまさにこのことで、煌びやかなシャンデリアのさがったホールは、舞踏に興じている人々で占められ、歓談の声や和やかな笑いも加わって、たけなわの様相を呈していた。

 惟之は賑やかな場所が好きであったから、鹿鳴館の夜会は楽しみのひとつであった。

 しかも今回の夜会では、惟之が療養していたのをどこで知ったのか、各国の大使、秘書官たちがことごとく見舞いの言葉をかけてきて、いつになく気遣われた接待を受けている。

 自邸で慣れぬ洋装の礼服―やはりタイの締めかた―に戸惑い、それでなくともぎりぎりまで仕事を片付けていただけに、予定を大幅に遅れてしまったのだ。入場した途端、ホールの入口で揉みくちゃにされかけ、目を白黒させているうちに、仏蘭西国の大使一家につかまり、そのまま来賓席へ足を運んでしまった。

 席についてひと息つくまで、やけに時間が長く感じられた。鹿鳴館へ到着したら、いの一番に探そうとおもっていた和胤が、じぶんの近くまで来ていたことに気づいていなかった。ちょうど視界と人の陰に隠れて、まったく認識できなかったのだ。

 懇ろな接待に対して、無邪気な笑みで礼を述べているあいだも、和胤のことが気になっていて、受け答えがそぞろになりかけるのを、抑えるので精一杯であった。

 「杉閣下、わたくしと踊って頂けませんか」

 やがて、仏蘭西大使の令嬢が羞じらいをみせつつ、遠慮がちに大使である父のうしろから、そっと申し出てくる。これはさすがに断れぬ、と惟之はふたつ返事で承諾した。ホールに出れば、却って和胤を探しやすいかもしれない、とおもったのだ。

 なにしろ、この来賓席は一段高い場所へ据えてあり、おいそれと気軽に近寄れる雰囲気ではない。惟之くらいの将官とか、或いは男爵とかいった箔の持ち主でないと、見向きもされぬ、というのがその本性である。

 堅苦しいのは大嫌いだが、惟之を囲む面々は、この座にいる人種にしては大らかで気さくな人物が多い。そうでなければ、一秒たりとも居たくない場所なのだ。

 ホールの片隅で葡萄酒の杯をちびちびやりながら、各国の武官たちと雑多な話に花を咲かせる方が、よっぽど実になるし、性にあっている。

 ともあれ、惟之はたっぷり二曲分、大使令嬢と舞踏に興じた。日本の伝統的な舞踊はともかく、外国の舞踊など毛ほども知識はなかったが、もともと機敏な惟之は、その負けず嫌いな性格もあいまって、何度か夜会に訪れるうちに、すっかりそれらを身につけてしまっていた。

 小柄な惟之は、他の来賓が居並ぶホールにいてひどく目立つ。曲が終わるなり、先刻入口に詰めかけた幾人かの婦人が惟之の傍へやってきて、頻りに舞踏の相手を申し込んでくる。

 彼女たちと全て舞踏の相手を済ますころには、喉がすっかり渇いてしまっていた。最後のお相手である米国大使夫人を丁重に席までお送りすると、給仕から差し出された葡萄酒の杯を嬉々として受け取り、ついでにひと壜拝借する。ホールの隅で椅子に落ち着くと、手酌をしつつ飲みはじめた。目線をあちこちに向けるが、和胤のすがたは終ぞ見当たらない。

 「あっ、杉閣下―」

 それを目ざとく見つけたのは、惟之の部下連中で、舞踏に付き合わされて程よく酔っているのか、みな上機嫌である。

 「おぬしら、よう踊っちょったのう。誰ぞ、意中のご令嬢はおったか?おれが口を利いてやってもええぞ」

 などと、先んじて冗談を飛ばすと磊落に笑った。からだを動かしたあとだけに、心なしか酒精の巡りが早いような気がする。まだ喉が潤わず、三杯目を注いで、それも水か何かのように飲み干した。

 「冗談を言っておられる場合ではありません。山口のすがたが、暫く前から見えんのです。閣下、ご存知ありませんか」

 「ん、おれァ知らんぞ。ずっとご婦人方のお相手をしちょったけぇのう。しかし…、そうか、居らんのか」

 独逸大使へ挨拶をしに行ったあと、武官と話しこんでいるのを見た者もいたが、それでも来て一刻もしないうちに、どこか落ち込んだ様子であったと、ある佐官がこぼした。

 「竹内のはなしだと、つい半刻前に、ふらっと中庭の方へ出て行ったと言っとりましたが、見にいっても誰も居ませんでしたなあ」

 「何ぞ、あったのかのう。もしかすると官舎へ帰ったかもしれんが、今日は駐在武官に赴任する連中を送り出す趣旨もあるんじゃけぇ、行方不明のままでは困るぞ。ともかく今すぐ、官舎へ電話せい。居れば無理に来させんでええが、居らんかったら、探さにゃならんぞ」

 さすがに、惟之でも鹿鳴館で騒ぎを起こしたことはない。場所も弁えずに徒に悪さをするほど、馬鹿ではない。
まして和胤が、そのようなことをするとは、とてもおもえなかった。何か事情があったか、それとも飲みなれぬ酒を勧められて、気分がよくなるまで庭か別室で休憩しているのかもしれなかった。

 「閣下、山口は官舎に戻っておらんそうです」

 すぐに戻ってきた佐官がそう告げると、惟之とその周りに集まった幾人かで顔を見合わせる。

 「とにかく、夜会がおわるまえに探すしかあるまい。おぬしらも手伝え、小うるさいお偉方の耳に入ったら、山口がいらん説教を受けるじゃろ。それでは不憫じゃけぇ、もし訊かれても他の連中には言うなよ」

 と、まるで作戦の伝達でもするような真剣さで、惟之は声を顰めて言った。和胤の同期でもあるかれらは、頷き合うと散り散りになってホールから出ていった。惟之も飲みかけの杯を干すと、葡萄酒の壜と一緒に置いたまま、椅子を立ってくびを傾げた。

 ひとくちに探すといっても、鹿鳴館は広い。どこから手をつけたものか、酔いがすこし回ってきた思考であったが、トコトコと石造りの階段をおりて、中庭へ出てみる。そこをひと渡り見て、今度は二階のテラスへ出て、外づたいに歩いていく。

 なかば建物の裏手まで来ると、室内の明かりがかなり落ち着いて、夜空を見上げるとかなりの星がみえる。

 ―む、今日は…そうか。今日は七夕じゃったのう。
 
 帝都の夜空に天の川まではみえないが、満天とは言えぬにしろ六分ちかい星空をみあげて、ふと思いあたった。

 「まったく、厄介な織姫じゃのう」

 と、ぼやいて再びしばらくあるいてゆくと、通り過ぎかけたテラスに面した硝子の扉が風に煽られて、きい、と音をたてて揺れた。薄いカーテンがしきりにはためいて、大きく揺れている。

 他に、扉や窓が開いていた部屋はない。惟之は足音を忍ばせて、開いた扉と揺れるカーテンを手でおさえて、室内をのぞきこんだ。部屋にはランプの灯りがひとつ、それもぼんやりとともっているだけで、おぼろげにしかみえない。

 人の気配もないようにおもえたが、微かに葡萄酒の匂いがした。そのまま、そっと中へ足を踏み入れるが、絨毯の敷かれた床だけあって、万が一誰か居ても、すぐに気づかれる心配はなかった。他の来客がやすんでいるのであれば、素早くテラスから出てしまえば済むことである。惟之は息をひそめて改めて室内を見渡した。

 テラスの傍に据えた小机のうえに、空の麦酒の壜がいくつか。それと杯があった。それから室内の長机には、ほとんど減っていない飲みかけの葡萄酒の壜が一本、長椅子のうえに空の杯が転がっていて、脱いだ燕尾服がその脇へ無造作に投げ出されてある。背もたれにも絹のタイが引っ掛かるようにして放ってある。

 何気なしに、その燕尾服を手に取って、惟之は眼を見開いた。鼻先に漂ったのが、白檀の香りであったからだ。

 この裏手に位置する部屋の並びは、来賓の宿泊にも使われるはずである。暗いながらも幽かな灯りに眼が慣れてきたところで、寝台の位置を確かめ、まだ足音を忍ばせたままそこへ近づいた。靴があらぬ方向へ転がっていて、それを拾いあげて寝台の足元へ揃えて置くと、ほぼ確信を持って覗きこんだ。

 「…酔いつぶれて彦星に逢いに来ん織姫なんぞ、前代未聞じゃろ。まったく、こがいなしどけないかっこうで眠りよってからに」

 ひくく、声を殺して呟く。

 そこに眠っていたのは和胤だった。寝具のなかにおさまっておらず、酔いに耐えきれずに倒れこむようにして伏したのが、ありありとわかる。

 黒のベストどころかシャツも半ば脱ぎかけて、ほとんど上半身を晒したままのかっこうで、うつ伏せになって寝息をたてている。その寝顔は酒精に火照って赤みを帯びていたが、別段苦しそうでもなく、酒に弱い和胤にしては、悪酔いの部類には入らずに済んだようである。

 杯がふたつあったということは、誰かと一緒であったのだ。惟之はテラスの扉を閉めて、廊下に面した扉から外へ出た。部屋の番号を確かめると、そのまま部屋の前で佇む。

 予測した通り、程なくして人影が向こうからやってくるのが見える。視認できる距離にきて、それが外国人であるのが、惟之は意外におもった。

 「私は独逸大使館付き武官、ベッセル少佐であります。もしや、杉少将閣下であられますか」

 こちらが身を向けるのと同時に、素早く挙手の礼を寄越して、その武官―ベッセルは独逸訛りの日本語でそう言った。それを聞いて、惟之は全て察したうえで納得した。

 「うん。貴官には世話をかけさせて、すまなかった。あいつは酒に弱いのだが、見たところ悪酔いしておるようでもない。あのまま寝かせておいてやって、あとはおれが面倒をみる。今、わざわざ伝えに行ってくれたのだろう、ありがとう」

 「とても、起こして連れてゆける状態ではありませんので、ひとまず、川上閣下と吉田閣下には、お伝えしておきました」

 ベッセルの律儀さに感謝をしつつ、惟之が重ねて礼を述べると、今度は慇懃に一礼をして、ベッセルはもと来た廊下をきびきびとした足取りで去っていく。さすがに軍服を着ていないときに挙手の礼は、条件反射とはいえ不釣合いであると気づいたのだろう。

 その後ろすがたを、半ば苦笑しつつ見送ると、就寝中の札を表の取っ手にさげてから、再び部屋の中へ入る。

 酒に酔ったからだには、閉め切ったままでは寝苦しいかもしれない。惟之はテラスの硝子扉を開くと、長机に載っている葡萄酒の壜と長椅子のうえにあった杯をとりあげて、外へ出た。石造りの張り出しに腰かけて、足をぶらぶらさせながら、葡萄酒を注いだ杯を傾ける。

 酒を制限されていることを、すっかり忘れたような顔で、とうとう葡萄酒を一本あけてしまうと、すこしふらつく足取りで室内へ戻った。

 「まーだ寝こけちょるんか…、よし、こうなったら夜這いをかけちゃろー。以前の逆襲もあるけぇのう」

 と、半ば据わった眼でひとりごちると、靴を脱いで寝台のうえにあがった。膝立ちでにじり寄ると、うつ伏せになったままの和胤へ覆いかぶさる。露わになったうなじから背中まで、くちづけていって、脱ぎかけの衣類を剥ぎ取りながら、仰向けにさせる。

 「ん…」

 ほんの初めだけかるく唇を啄ばみ、あとは激しやすい性格同様の、情熱的な接吻を一方的に繰り返す。と、幾らもしないうちに、絡めとった舌がひくり、と反応をみせた。

 「ん…?ん?っ」

 目覚めた和胤は突然のことに狼狽し、身じろいで抵抗したが、惟之とてまがりなりにも武芸を修めた身であるから、しっかり押さえ込んでそれを許さなかった。唇を交わして、たっぷりと舌を弄んで味わったあと解放し、そこでようやく顔を合わせる。

 「惟…之さん…、こげなやり方…せるのは、ずるいです」

 「へっ、何とでも言え。七夕じゃちゅうに酔い潰れて逢いにも来ん織姫に、夜這いくらいかけても罰はあたらんのじゃ」

 今日はおぬし、覚悟せえよ。と耳元で甘く囁かれ、和胤はぞくり、と背筋を震わせる。からだに力がはいらないのは酔っているせいもあるが、惟之の愛撫が苛烈極まりない凄まじいもので、残った力も根こそぎ持ってゆかれそうだった。

 こんな状況に置かれても、ここからどう逆転するか、ともすれば陶酔に溺れそうになりながら、和胤は強かに作戦を練りはじめていた。
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