大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第陸拾参話

 何もからだを求めることだけが、愛情をあらわすのではない、というのは惟之も和胤も同じ考えである。

 とはいっても、和胤はどうにも惟之が愛しくてならず、どんなに軍務に追われていても、閨のなか、和胤の腕のなかでだけみせる、惟之の媚態を三日に一度はおもい返さずにいられない。普段の天邪鬼ぶりが、いったん素直になると、何をとっても愛らしくてたまらないのだ。

 久しぶりに杉邸へ訪れて、居間でくつろいでいるいまも、甘すぎる衝動がこみあげてくる有様である。

 そもそも、激務で疲れきっているから、もう、休日中はこうして惟之のそばに居られるだけでよい、とささやかな幸せを噛みしめていたばかりなのに、やはり若さであろうか。疲労をおぼえていても、その方の元気は旺盛なようだ。

 性欲の捌け口など、すこし遊郭にでもゆけば解消されるかと、惟之とこのような関係になってから、悶々としたときなどは対処していたものだが、この衝動はどうも違うらしい。

 やはり惟之のことをおもうと、いくら堪えても抑えられぬものがある。これはいわゆる、髪のさきから爪さきまで惟之を愛している証拠なのだろう、と勝手にきめてからは、遊郭通いをやめている。

 対して惟之はといえば、和胤と確固たる繋がりを持ててからというもの、それまでと違って淡白に接するようになったのは、惟之の年齢もあるが、その性格だろう。

 やはり自らを戒めることは、国のまもりを第一に考える軍人であるからして、当然である。

 特に和胤との関係は、ふたりだけの固い絆であるから、節度もわきまえずにのぼせ上がってはならない。と、かたく心に言い聞かせている。むしろ信念に近いといえる。

 普段は実直で穏やかな和胤も、私的に接するとなると存外遠慮がなくなり、“腹を空かせたこども”同様で、無邪気に惟之を求めてくるのはよいが、時として歯止めがきかなくなりかけることも、しばしばである。

 場の空気を嗅ぎわけるのは、惟之の得意とするところで、程々のところで和胤を抑えねば、何もかも台無しになりかねない。だから、ふたりきりでこうして自宅に居るときでさえ、その感覚は常に研ぎ澄ませているほどだ。

 しかし、そんな惟之もひとりの人間である。いま、脳裏を横切ったあることに、内心では落ち着かず、不安と寂しさがじわりと滲み出してさえいる。その理由は何かといえば、陸軍省で小耳に挟んだ人事異動のことで、欧州の各国に配属になっている駐在武官の、大幅な配属変えを行うらしいのだ。

 その新任海外駐在武官のなかに、どうやら和胤の名が挙がっているというのだ。和胤は中尉のときに独逸へ参謀候補として留学していて、語学力と知識のたかさは他の同期とくらべて群を抜いていた。

 独逸の水があったのか、留学は予定よりながく許され、当時駐在武官だった某中佐に、あちこち連れて行ってもらい、中佐から副官にと切望されたが、本朝からの命令で帰国したという。

 尉官時代でそこまで見込まれていて、いまは駐在武官に適任の少佐である。小耳に挟んだ程度の人事とはいえ、辞令がくだる可能性は、極めてたかいと思わねばなるまい。軍務ならば、致し方のないことである。だが―。

 「―さん、惟之さん」

 椅子に凭れつつ物思いにふけっていて、和胤が呼んでいるのにも、気がつかぬほどだった。目の前に屈みこまれても目は遠くを見たまま動かず、肩をそっと掴まれて、かるく揺さぶられてから、ようやく顔をあげた。

 「お疲れでしたら、階上ですこし眠られては…?あとで起こしにゆきますけぇ」

 心配という字が顔中に書いてあるような表情で、和胤は惟之をみつめている。そんなかれに対して、どうにも顔を合わせられない。情けないことに、いじいじとしている自分に気づかされる。こういうじぶんが大嫌いなのに、なかなか直せない。苛ついて和胤に八つ当たりをしてしまいそうで、また心にもないことをくちに乗せてしまいそうで、怖くなる。

 「うん…。いや、そがいに疲れちゃァおらん。ただ、ちっと考えごとをしちょっただけじゃ。すまんが、ちと独りきりにしてくれんか」

 「あ、はい…。強引に押しかけるようなまねをして、すみません。おれ、やっぱり帰ります」

 「いや、居ってええ。ここに居ってくれ、すこしの間だけ独りになりたいんじゃ」

 申し訳なさそうに言ってあたまをさげた和胤は、踵を返してしまう。惟之は慌てて、椅子から飛び跳ねるように身をおこして、和胤の背へ声をかけた。ついでに、その背へ手をのばして軍服の裾を指さきで掴んでひきとめる。かるく引いて促すと、振り向いた顔は訝しげであった。

もし、和胤が独逸へゆくことになったら、向こう半年からの任務で、最低でも二年は帰朝できまい。惟之のなかを 温めている甘い時間はもちろん、こうしてそっと触れることも叶わなくなる。

 ―軍務じゃけぇ、仕方なかろうが。何をうじうじしちょるんじゃ、しっかりせえ―

 「そげな顔をして、何かあったのですか」

 「何もありゃせん。ただ…己が情けのうて、呆れちょる。それだけじゃ」

 そう言って、ため息混じりに和胤へ抱きつく。ぎゅっ、とからだに回した腕に力をこめると、その温かさがすぐに伝わってくる。

 ―いくら軍務とはいえ、こればかりは承諾できそうにない。たのむ、おれから和胤を奪わんでくれ―

 「情けないなんて、そんな…。軍務では甚だ頼りになりませんが、おれに話せることなら言ってください。それとも、何か別のことで?」

 「別じゃーないが、こりゃァ別じゃ。おぬしと離れにゃならん事態が起こりそうで、ただその可能性がたかいちゅうことを考えただけで、この有様よ」

 「また藪から棒に、なんですそれは」

 「うん…、人事でちっと小耳に挟んでな。和胤、こげな話はあとでええ。階上へ連れていけ、今日はおれががちまんでけんっちゃ」

 けして杞憂ではないこの事態に、和胤へのおもいがひと息に溢れ出してきて抑制がきかない。いまは、溶けるほどの甘さが欲しかった。
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