大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第陸拾弐話

 もっとも愛する花である藤を楽しむ間もなく、それも散りゆき、気づけば桜の青葉が陽に逞しく照り映えて、初夏をおもわせる南向きの風をうけ、大きく揺れている。

 参謀本部と陸軍省へ舞い戻った惟之は、八方から伸びる手にかわるがわる引っぱり出されて、設置される委員会という委員会に、必ずといっていいほど顔を連ねる事態になった。

 持ち前の面倒見のよさと、機敏さを見込まれてのことだが、そういったものを五つも六つもかかえていながら、鼻で小唄をうたうような顔をしていて、その点だけはいつもと変わらない。

 気が気でないのは和胤で、個人的な感情はともかく、副官としては上官のあまりの多忙さに、あたまを抱えたくなる状況だった。

 しかもこの二、三日ほど、陸軍省へ泊まりこんでいるらしい。惟之の療養が明けたから、和胤もいまは官舎へ戻っており、惟之の傍にはいない。

 くびに縄をつけてでも帰宅させ、からだを休ませるようにさせたかったが、軍務のこととなると、説得しても頑として諾かず、しかも理屈がとおっているだけに、渋々頷かざるを得ない。できるだけ負担を減らそうと、和胤も走りまわってはいるが、惟之はそれ以上で、吹き抜ける疾風のようである。

 そんな日々をこなしながら、窓からそとの景色をみて、一瞬呆気にとられる。桜の青葉がやけに眩しく、まったく時が経つのは、まことに早いものだ。

 執務机に向かっている惟之を、ちらと見る。心なしか、以前より白髪がふえているようにもおもえる。これまでも同年代の将官とくらべて、ずいぶんと白いものがめだつほうだったから、余計に感じるのである。

 もっとも、それに反して本人は至って闊達としているし、相変わらずの悪戯好きであるし、生き生きとしている。惟之の惟之たるゆえんである、少年のような元気とあかるさを遺憾なく発揮している。

 「まァおれもそろそろ、中将になるちゅうはなしじゃから、今のうちにこき使っておこう、ちゅう魂胆なんじゃろ」

 と、磊落に笑って冗談を言い、昼食の休憩時間のいまは、参謀本部の中庭で煙草を燻らせている。和胤が久しぶりに惟之のそばにいて、ふたりで並んで草のうえに腰をおろした。

 ついでに言うと、ふたりともかなり疲れきっている。いつもきっちり喫みきる煙草を、なかばで揉み消してしまい、つまんだ細巻を恨めしげに睨みつける。すきな煙草の味がうまくないなど、相当なものだ。

 「しかし、川上さんのように己の意思で昇進せんのとは、だいぶ毛色が違う。あっちこっちええように担がれて、流されるまま成り行きで昇進しちょるおれなんぞは、同じ将官でも中の下、ちゅうところじゃのう」

 昇進の可能性が高いと尾木からきかされても、惟之はちっとも嬉しくない。名誉もへったくれもないような、半ばお飾りで与えられる官位など、あってもなくても同じである。

 「あァ、もう今日はやめじゃ。まだせることは山積みになっちょるが、さすがにこれ以上無理はでけん。今日は帰るぞ」

 腹立たしさに紛れてか、草のうえへ仰向けにひっくり返って、惟之は隠さずに声をあげた。一度療養の憂き目にあっているだけに、弱音を吐くこともおぼえたらしい。ただし、それはいまのように、和胤とふたりだけでいるときに限られているが。

 「そろそろ鹿鳴館の夜会もあるけぇ、ゆとりを持たせんといかん。特におぬし、初めて招ばれちょるんじゃ。眉間に皺を寄せて、そげな怖い目つきでおったら、お偉方のご令嬢から舞踊の誘いも来んぞ」

 からかい混じりに言われてみて、はじめて己の相好を自覚した。眉間を指さきで揉みほぐしながら、次いで笑みが漏れる。惟之のあかるさには、何度助けられていることか。

 「閣下は逆に…、もうすこし窶れた顔をしてゆかれたほうが、よいかもしれません。放っておけぬものがありますから」

 実際、本人は自覚していないが、それは翳りがあるときの横顔などに垣間見える。無言の訴えとでもいうのか、面と向かって“疲れた”などと言われるより切実なそれは、別に和胤に限らず、庇護意識を嫌でも擽られる。

 「馬鹿、放っておけんのはおぬしだけじゃろ。まったく、油断しちょると何をされるかわからん。じゃけぇ、そうならんうちに、今日は早う帰るんじゃ」

 和胤の切り返しに心の片隅を擽られつつも、やはり疲れがおもてに出ているのか、と、内心で苦くもある。

 すこし前であれば、己の内情など他人に覚らせもしなかった。それも今となっては、和胤は別としているが、やはりこれまでのことを振り返ると、極力、弱いところは見せたくない。半ば意地もあるが、これ以上要らぬ心配をかけさせたくなかった。

 「おぬしも、今日はもう帰れ。おれに付き合ってずいぶん無理をしちょるじゃーないか。ここにきて倒れられても困るぞ」

 「あのくらい、無理のうちにも入りません。閣下こそ、今日はかならず帰宅なさってくださらねば、自分も困ります」

 「帰るちゅうたじゃろ、まったく…。ここまできて、おれを信用せんのか」

 「軍務が絡むと、閣下は私事など弊履のごとく打ちすててしまわれるので、それだけは信用を置くことが至難であります」

 「ふん、同じ轍は踏まん。しかし、そがいに言い切るなら四六時中、気の済むまで見張っちょりゃァええじゃろ」

 「では、明日は定休日ですから、そうさせていただきます。一指でも軍服に触れたら、一歩たりとも外に出させませんので、そのつもりでいてください」

 「勝手にせい」

 惟之のくちから、“泊まりにこい”のひとことが素直に言い出せぬのを汲んで、結局はこんな婉曲な言い回しで、久しぶりにふたりだけの時間を得ることにこぎつける。
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| 変わらぬ青空のしたで・61―70話 | 23:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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