大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第肆話

 一方、惟之は陸軍省にあがりこみ、尾木靖一陸軍卿の部屋で散々舌戦を繰り広げていた。

 毎度のことながら、尾木と惟之の意見はかみ合わない。重要だというのに、尾木が面倒がって後回しにしている問題を、的確につっ突いて、相手が観念するまで遣り込める。

 矮躯などと陰口を叩かれるほど、惟之の体は小さいが、猛意を揮う嵐のように現れ、しかも地声が大きいだけあって、その叱責は文字通り雷の如く室内に響き渡った。ただの挨拶と副官に言っておきながら、その実、烈しい討論である。結局昼ちかくまで続き、尾木に約束をとりつけ、言いたいことだけ言うと惟之は清々したという心持ちで、あとも振り返らずに帰っていく。

 ―ええ天気じゃのぉ。

 敷地内の前庭を横切りながら、いまが昼であるのに気がついた。

 見上げた空に陽がたかく中天にある。このままぶらりと、満開の梅の花でもながめにゆきたい、そんなような気持ちにさせる陽射しの暖かさで、広がる青空も申し分ない。空を見上げたついでに、ふと参謀本部の、ちょうど自室のあたりに顔を向ける。確実に仕事をこなしているだろう新任副官の顔を思い浮かべて、惟之はくすっと笑みをこぼした。

 今朝の一喝を怯みもせずに受け止めた副官が、大いに気に入ったのである。

 大抵、惟之の雷が落ちたあとと言えば大抵が、顔色を窺うか、反発するか、萎縮するか、そのどれかであるのだが、山口和胤少佐はというと、そのどれでもなかった。しかも、惟之が無造作にあたまへ載せた軍帽に触れて、きちんと被り直させるということもしてのけた。惟之の不行儀を口では諌めていても、実際に手を出してまで正させた者はこれまでひとりとしていなかった。

 「ありゃァ、なかなか大したやつだ」

 嬉しげに独りごちながら、頷いてみたりする。

 それから帰りしな、参謀本部前の衛兵に使いを頼み、のんきに鼻歌をうたいながら自室へもどってゆく。扉を開け、部屋を一瞥する。副官が顔を上げて軽く辞儀を寄越すのを見て頷くが、何も言わない。かれが執務している机上には、遣り残した書類が殆どないし、木箱に幾つか手の付けられないものがあるのみだった。

 「オイ、山口。昼だぞ。めしを食ってこい、めしを」

 任せた仕事について全く心配していない。故に惟之が副官に対して言ったのはそれだけだった。

 「あの、くそ爺ィが、やっと折れて清々したっちゃ。ちゅうことで昼寝せるかのう。ごっぽう眠うてかなわん」

 暖かな陽気に促されるまま、窮屈な五つ釦の上衣を払い捨て、軍帽とひとまとめにして長椅子に放り投げる。

 実はここ数日まともにねむっていない。その原因である尾木との決着がつき、ほっとしたのだ。眠くもなろうというものだ。

 「ちと、階上で寝ころがっちょるけぇ。あとで起こしに来てくれ。午後は午後で、喧しいのが来るけぇ、相手をせにゃならんのだ」

 くあーっ、とひとつ、猫のような欠伸をしながら、惟之は涙の滲んだ瞼を軽くこすった。まったく眠たそうなことこの上ない上官の、その一連の動作を見ていた和胤は、席を立つとまず放りだしてある上衣と軍帽とをきちんと壁へ掛けなおした。

 しかし、そのような眠たげな様子でありながら、すぐには寝にゆこうとせず、上官は自分の椅子に腰をおろしている。ひとまず、処理しきれないものは何が残ったのか、それだけを確認しようというのか、木箱に入った書類を手にとった。

 和胤はそれを見て、小火鉢のうえにかけてある薬缶の湯で茶を淹れる。濃いめではあるが、飲み易いように湯加減は温く。

 「では、昼食をとってきます。目を通して頂いたあとであれば、遅滞なく処理致します。後ほど起こしに参りますので、これにて失礼します」

 茶を淹れた湯飲みを盆にのせると、そっと机上の邪魔にならぬ手の届く所へ置き、和胤は軽く一礼する。そうして扉へあるいてゆく。

 「うん、残りは後でたのむ」

 言葉は明瞭ではあるが、眠気が多分に含まれており、どこかふわりと浮いた、こどものような声音で返事をしつつ、手にとった湯呑からひとくち、茶をすすって顔をあげた。ちょうど出てゆく副官の、広い肩と背を見送る。

 便箋に書かれた内容は、説明を受けずとも簡潔で非常にわかりやすかった。この点でも惟之は大いに満足していた。何気なく長椅子をみれば、先程放り出した上衣と軍帽はなく、きちんとあるべき場所に仕舞われている。飲んでいる茶の濃さといい、熱さといい、副官のそつのない、しかもさりげない気遣いが嬉しかった。

 「よし、今日は日本橋にゆくとするか」

 何かにつけて宴会を催すのは参謀本部第一局の、というより惟之の慣例になっているから、近日中には副官の着任を口実にして、料亭へ繰り出すつもりでいたのだ。

 柳橋か日本橋か、はたまた新橋か築地か―。

 贔屓にしている芸妓はそれぞれの料亭に、それこそ星の数ほどいるが、宴会で芸妓たちと一緒になってうたったり踊ったり、騒ぐのが何よりすきな惟之は、およそ偉ぶったところのない軍人らしからぬひと、とみられて芸妓たちから好ましくおもわれている。

 主催の惟之がこのようであるから、自然、和やかな宴になる。しかも連れてゆく部下達には遠慮なくやれ、と言って憚らない為、半ば無礼講がまかりとおっているくらいだ。揃いに揃ってみなで、大いに騒ぐ。そういう座である。

 惟之はひとり局長室で、上機嫌である。

 心もち眠気も手伝って足元を浮つかせつつ、四階の寝室へあがってゆき、短靴をぬぐと寝台にもぐりこんだ。短時間の昼寝であるとはいえ、ぐっすり眠れそうだった。

 そうしていくらもたたないうちに、もう、聞こえるか聞こえないかくらいの微かな寝息をたてている。二六時中喋っているような惟之だけあって、豪快な鼾でもたてそうにみえる。が、意外なことに、ねむっているときだけは静かなのである。
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