大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第陸拾話

 そして、翌週の日曜日は、かくして、和胤の果断で決行した仕立て屋ゆきが実り、惟之の礼服が出来上がった日である。仕立てを急がせたこともあったが、腕は確かだというので、惟之は別段心配もしていなかった。

 受け取りにゆくだけなのに、和胤も同行する。

 どうせなら最後まで面倒をみろ、と、惟之から半ば理不尽な理由をつけて引っぱり出され、内心で嬉しくおもいながらも、呆れた表情を装っておいた。

 市ヶ谷から馬車に揺られ、店の前に乗り付けると、もう和胤が待っていた。相変わらずこざっぱりした、様になる洋装すがたである。

 揃って店に入ると、主人は微笑を湛えて出迎えてくれる。そんな店主の人柄も大いに占めているのだろう、ふしぎとこの店は居心地がよい。苦手な洋装は別として、二度目の来店にもかかわらず、惟之はここが気に入ってしまっている。

 店に入るなり、壁際へあるいてゆく。先日の帽子が見当たらず、きょろきょろと見回して探した。実はまだ仮縫いであったがために、買えずにいたのを残念におもっていたのだ。

 「ひとまず杉閣下、あちらでお着替えなさってみてはいかがです」

 そうすすめる店主を振り返り、まるで失せ物をしたこどものような情けない顔で、例の帽子の行方を訊いた。

 「あの帽子でしたら、誂えた洋装の中に入れてあります。―きっと、お似合いのはずです」

 「おっ、そうか。それなら安心した」

 にこっと笑みを浮かべて頷くと、奥の部屋へ気軽にはいってゆく。中には和胤が待っている。着替え易いように、かれが揃えたらしい。テーブルのうえに、誂えたばかりの洋服が広げてあったり、畳んであったりしている。相変わらずの和服すがたでいる惟之は、足袋を脱ぎすて、羽織を放り出してぱっぱと帯を解きはじめた。

 「惟之さん、あの…」

 「和胤、向こうで待っちょれ。いくらおれでも着替えくらいはひとりでできるっちゃー」

 背中を向けたまま言う。無論、照れ隠しである。それを察した胤は生真面目な顔で、わかりました、と返事をすると部屋を出ていった。

 ひとり残った惟之は、テーブルへ目をやった。

 ―たかが洋装ひとつ、何じゃっちゅうんじゃ。

 そうあたまを切り替えると、あとは早い。軍服は着慣れているから、要するにそれの応用といったところだろう。袖を通す前に何がどういう構造になっているか、よく見ればわかるにちがいない。軍装の装備を確かめるようにいちいちそれをやってみて、結局はすんなりと着替えてしまった。―タイを除いては。

 白いシャツにベストと、黒い細縞のズボン。燕尾服の上着まで着込んでみても、からだに沿っているために、少しも息苦しさを感じさせないことに驚いた。軽くその場でからだを動かしてみるが、和服と同じくらい身軽である。

 「おおぃ、和胤」

 呼ぶと和胤はすぐに顔を出した。そして暫く、礼服を纏った姿を穴の開くほどに凝視したものだから、やたらと落ち着かない気分に陥る。その気持ちの始末に困った。困った挙句、テーブルの上に残ったタイを引っ掴むと眼前に突きつけるようにし、

 「タイちゅうもんの締めかただけは、ようでけん。やってくれ」

 と言って和胤の前に立った。それを受けて別に笑うでもなく、タイを手にすると手もとで長さを揃えながら、すこし屈んで襟へ手を伸ばした。

 和胤とて、あの“桜の宴”のときに意地でもひとりで着てみようと、四苦八苦した結果、まともに紋付を着られなかったことがある。特につけなれない袴などは、みっともない有様になっていたものだ。

 それに比べたら、惟之は初めからできぬものはできぬと、素直に認めている。もっとも、かれが妙な意地を張るときは、大概が照れ隠しか、負けず嫌いの部分が顔を出したときくらいで、本当に必要な場面では柔軟、かつ素直に受け入れることがほとんどである。
       
 「俯いたら、締められません。少し顔をあげていてください」

 「む、そうか…」

 そう言われれば、確かにそうだ。もっともどう締めるのかと、和胤の手許を覗き見ようにも、俯いたくらいでは無理なのだが。

 しゅる、と絹製のタイが襟のまわりを滑る音がして、惟之は言われたとおりに顔をあげた。和胤の涼やかな顔が、すぐそばにある。

 「おぬしゃ、おれに風穴開けるちゅうくらいの勢いで、このかっこうを見ちょったが。笑いはせんかったのう。まァ、これで副官解任は免れたな。馬子にも衣装ちゅうが、これなら陸軍の礼装と比べても、さほどみっともなくはなかろう」

 「何をおしられますか。あまりに似合っちょられますので、見惚れちょっただけです」

 「ちゅうことは、惚れなおしたんか」

 「それはもう、今更ながらに」

 そんな軽口を叩きあいながら、喉もとでタイをきゅっ、と軽く締められる。シャツとベストの襟を、手際よく整えていく和胤を見ると、ちょうど目が合った。敢えてどちらかといえば、和胤のほうから唇を求めて、すこしの間だけ、やわらかく啄ばみあう。

 「惟之さん…、本当に素敵です」

 「これ、どこを触っちょる!油断も隙もないのう、おぬしは」

 身を寄せあったついでに、和胤は惟之のからだへ腕をまわして、背から、腰や臀を掌でかるく撫でさする。
その行為は思わず手が出たといった感じで、いつもの求めるようなそれではなかったが、初めて洋装を纏った気恥ずかしさもあって、小声で叱りつける。

 和胤も心得たもので、それを承知で態とふざけかかる。とはいえ、惟之の洋装すがたは、和胤にとって本当に魅力的であったから下心は隠せず、できるならばこのまま襲ってしまいたい、という気持ちを発散させる意図もあった。

 くすくすと甘やかな声をたてつつ、じゃれあうようなひとときだったが、和胤の手をやさしくとどめることで、惟之が遮った。

 「のう、和胤。この締めかたはさすがに、覚えにゃならんだろうから、またあとで教えてくれんか。…ひとまずは、洋装を誂えた記念じゃ。一緒に写真を撮ろう。この近くに写真屋がおったら呼んでくれんか」

 「写真、ですか。おれと…ふたりだけで…?」

 「あたりまえじゃろ。…なんじゃ赤くなりよって。よいよ、おれには淫らなことをようけせる癖に。写真を撮るくらいで照れようるんか、可愛ええのう」

 からかうように言い、今度は惟之がつと詰めよって、ちょん、と和胤の唇を奪ってみせる。たったそれだけで、和胤は思い知らされる。いくら腕のなかへ閉じ込めて、甘く酔わせることができても、惟之には敵わないことを。

 「和胤、いつまでも赤くなっちょらんで、頼んできてくれ」

 突然写真を撮りたいと言い出したにも拘らず、仕立て屋の主人は快く部屋を提供してくれた。そのうえ、紅茶まで淹れて二人のもとに持って来る。

 もてなされ、椅子のうえで寛いでいる惟之の姿は、洋服を着ているという意識がないらしく、振る舞いが自然で、すっかり新しい装いに馴染んでいた。自然体でいるだけなのに、そんな惟之のすがたが、和胤にはどうにも目にまぶしい。
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