大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第伍拾玖話

 その店は英国人が経営しているらしい。

 店内は落ち着いた雰囲気で、帝都の雑踏から突如として、英国の古風なにおいが漂う、裏通りの店へでも来たようにさえおもえた。静かな店内に居て、いくらか気分が落ち着きはしたものの、ここで何をどうすればいいのかさっぱりわからない。

 和胤はといえば、この店の常連でもあるらしく、奥へ入ってゆくと店主らしき老人と、いかにも親しげに会話を交わしている。それを横目で見つつ、勝手にそのあたりの腰掛けに腰を落ち着けた。

 ―おれが洋服なんぞ着たら、滑稽なだけじゃ。

 陸軍の礼装は、辛うじて自身の職務と礼装の威厳とがつりあっているから、それなりに見えるだけであって、ただの礼装などは問題外、恥の上塗りである。そう言って、好きでもない洋服を着ることを避ける、逃げの一手を打つつもりでいたのだが…。

 ―からだの均整が取れているから、きっと洋装が似合う。

 と和胤はあっさりと言ってのけ、惟之は赤面しつつ、ことばに詰まってしまったのだ。

 確かに惟之は小柄で、体格はややもすれば華奢であり、軍人らしからぬ身体つきである。が、均整はよく取れていて、ちびた鉛筆のような容姿ではけしてない。それはじぶんだけの密かな自慢であった。

 ひとたび蜜月の時をすごせば、和胤へ羞ずかしげもなく裸身を晒している事実があるだけに、それを指摘されてしまっては、反論の余地がない。首根っこを摘みあげられた猫も同然である。

 前例もあるが、一度和胤の掌中に収まってしまえば、幾らじたばたしても放してはくれないから、諦めていまここに居るわけだ。

 それでも、局長室で交わした他愛もない遣り取りを思い返し、下唇をつき出して膨れっ面をする。それというのも、口の達者なのがとりえなのに、和胤のひとことで反論に行き詰ってしまった、己の情けなさに呆れているからで。

 それらが微妙に折り重なって、どうにも腹立たしく、それに付随する、こどもじみた拗ねっぷりを隠そうともしない。不機嫌な顔のまま何気なく向けた視線の先に、ふと、壁の一角に帽子が並んで掛けられているのを発見した。

 「おっ、帽子があるのか」

 一変して笑顔になるとその方へ歩いてゆき、何気なくそこからひとつ、中折れ帽をとりあげてひょいと被ってみる。洋装は嫌いだが、帽子だけはすきだった。気が向いたときにはいまのように、和服姿で山高帽などを載せてみることもある。

 「閣下、お待たせしました」

 たまたま被った帽子だったが、あたまにしっくりとくる。被り心地のよさに感心していると、うしろから呼ばれて、そのままの姿で振り返る。和胤が、店主を伴ってこちらへ歩いてくる。ふたりは一瞬顔を見合わせ、何ともいえぬ目つきで惟之をしげしげと見た。

 「なんじゃ…?」

 ふたりの様子を訝るように、ほんの少しくびを横に傾ける。和胤は、いや、あまりに似合っちょりましたもので、驚きました。などと言ったが、それとはまた別の意味があるようにおもえた。

 「杉閣下、採寸致しますのでこちらへどうぞ」

 案外と流暢な日本語でにこやかに言う店主は、副官の和胤より更に背が高い。かれと向き合うには、惟之などはそれこそ見上げるようにせねばならないぐらいだ。

 しかし店主は小腰をかがめて、自然と目を合わせるようにしながら、話しかけてきた。職人らしい生真面目一本といった風の相好を崩した、親しげな笑顔であるにかかわらず、帝国陸軍の将官である惟之に敬意をもって接してくる。

 促されて間仕切りのむこうへ入ろうとしたとき、和胤の手が伸びて頭上の帽子をそっと取り上げられる。

 「おい、その帽子は戻さんでええ、気に入った。そのまま持っちょってくれ」

 それに対して和胤は、何故か嬉しそうな笑みを口もとに浮かべた。何か含むものがあるような笑顔が、惟之にはおもしろくない。

 「なんじゃその、してやった、ちゅうような顔は。おれの礼装姿を見てちっとでも笑いよったら、おぬしゃ即刻、副官解任じゃけぇのっ」

 以前も似たようなことを口走った気もするが、ともかく何かひとこと言わねば気が済まない。むくれた顔をなかば扉から覗かせ、きっ、と睨みつけると奥へ引っ込んだ。
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| 変わらぬ青空のしたで・51―60話 | 01:08 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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