大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  変わらぬ青空のしたで・第伍拾捌話

 翌日―。

 参謀本部第一局の椅子のうえに、惟之はすわっていた。局長の復帰に喜びを隠せない人々は、始業まえに第一局へ立ち寄って挨拶をしてゆく。

 無事に職務復帰を果たし、再び陸軍省と参謀本部を行ったり来たりする、という日が再びはじまるのだが、初日早々呼びつけられるとおもっていた陸軍省の方面―すなわち尾木の女房役としてはまだ、面倒ごとを蒙っていない。

 惟之としては、次官としてまた軍務を執ることについて念には念を入れて身構えていたところもあり、こうして問題がないのには安堵していても、正直なところ肩透かしを食ったように感じていた。

 「たまには、このような日があっても良いじゃありませんか」

 と、頼れる副官に支えられて、随分と楽な心持ちで軍務に就いている。ことに昼食あとの午後は、参謀本部の局長室にいて珍しく穏やかな空間と時間に身を委ねている。

 ―参ったのぅ。

 内心で呟いて、執務机のうえに書状と封筒とを置いた。その悩める理由というのも、他人からみれば他愛のないもので、やがて日常の中に埋もれてしまうくらいの事態なのでは、と言うところであろう。

 しかし惟之は真剣そのものである。机に置いたそれは、近いうちに鹿鳴館で行われる夜会の招待状で、じいっとそれらを見つめて考え事に耽っている。

 鹿鳴館といえば、帝國屈指の迎賓館であり、社交界である。人の集うところは誰より好きな惟之であるが、どこか浮かない表情をしている。 その原因は、書状に添えられている注意書きにある。

 陸軍の礼装では硬すぎて近づきがたい、と思う御婦人もいるようであるから、今回からは洋服の礼装で来るように、というものだ。

 実を言えば惟之は、軍服以外の洋装に袖を通したことが一度もない。あの独特の窮屈さをおもうと、息が詰まりそうになる。軍服は仕事で身につけるものだから仕方がないが、私生活で洋装を纏うのはまっぴらごめん、と、和装で通してきた。

 故に、洋装などはひとつとして誂えたこともなければ、他所からもその類の品を贈られたこともない。

 「おぉい、山口ィ」

 座っている椅子の背凭れへ、脱力したようにからだを預けて、浮かぬ顔をそのまま和胤へ向けると、気怠そうに呼んだ。はす向かいの机へ向かっている副官に、手にとった招待状をひらひらと靡かせて見せる。

 「礼装ですか…、閣下はいつも和装でおられますから、新しく誂えねばなりますまい」

 招待状を両手で受け取り、その書面をつくづくと読んだ和胤は、至極当然のことをくちにのせた。

 しかし、惟之が洋装のことで知っているのは、軍服と将官礼装の着方だけと言い切っていい。そのうえ軍服は、勝手に陸軍のほうで誂えてくれるから、じぶんで何かする必要もない。黙っていても出来上がって、支給される。

 何しろ興味をもったことがないから、文明が開化して久しい今日ともなれば、大人なら概ね一般常識として知っていてもいいはずのことさえ、知らないのである。

 知らないにも程があるのはさておき、いまさらひとに訊ける類の話でないことくらいは、いくら惟之でもわかる。が、頼れる副官なら別だ。

 「―ちゅうわけじゃ。おれは洋装を好かんので、ひとっつも知らんのよ。こういうときは、どうすればええんじゃ。教えてくれんか?」

 惟之は本気で困っている。和胤にその悩みを打ち明けると、隠さずに途方にくれた顔をした。

 窮屈な洋装のために、手間を取らされるのは癪だったし、面倒なことは極力回避したい。いま訊いておきながら、そのすぐそばから案がうかんだ。

 「のう、いっそ陸軍省の方から、どこぞの仕立て屋に話ィ通してもらうちゅう手でいくか。以前、少将に昇進したときに礼装を誂えるちゅうて、あれこれ寸法を測ったけぇのう。そもそも招待されちょるのは陸軍少将・杉惟之なんじゃ、このくらいの私用は頼んでもよかろう」

 そうは言いながらも、私用を職場に持ち込むのはやはり、公平無私が主義の惟之としては気が引ける。
それも手伝って、和胤に向かって同意を求めたい一心で目を向け、その癖で首を傾げる。

 「それはいけません、夜会までの日数は限られております。面倒なのはわかりますが、餅は餅屋に任せるのが一番です。知り合いの縁で世話になっている仕立て屋があります。自分がお供致しますから、次の休みにそこへ行きましょう」

 と、そこまできっぱりと言われては惟之も断れない。そうして、なかば和胤にしょっぴかれるようにして、言ったとおり定休日になるや、銀座の一角にある仕立て屋へ足を踏み入れることになった。
→【3話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 変わらぬ青空のしたで・51―60話 | 01:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/63-ac30a753

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。