大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第伍拾肆話

 春先の夜気はまだつめたい。桜と月とにみとれて、和胤の膝の温もりに依っているうちにも、からだは冷えてきていた。それでも、襟の隙間をついて滑りこんだ指さきに肌を丹念に撫でられれば、そこから自然と熱が生じる。

 手首を掴まれて唇で探られたときは、とっさに引っ込めたくなるほど羞ずかしかった。求められて唇を交わすより、よほど扇情的な行為であるように、惟之は感じていた。

 首もとを探っていた手は、耳朶を指で擽ったあと離れて、腰へあてがわれる。掴んだままの右手を手繰るように引かれ、次いで、腕を腰に回されて引き寄せられた。半ば引きずり上げられるようにからだを起こされ、和胤の胸のなかへ抱かれる。

 こつん、とあたまを肩先へあずけて見上げると、ちょうど和胤と視線が合う。真剣な、言うなれば凛とした眼差しのなかに、痛いまでの愛しさが隠れている。

 じぶんが今どんな顔をしているのかわからない。惟之は瞼をふせて、胸に疼くものをすこしでも軽くしようと、ながく息をついた。ともすれば俯きそうになるのを、顎のしたに手を添えられて遮られ、その息のつき終わるまえに、和胤の唇に塞がれる。

 何事も丁寧に、ささいなことでも粗略に扱うことをしないのが和胤の性格で、それは接吻ひとつとっても変わらない。深く唇を交わしながら、惟之はそれに応えつつもあくまで受け入れる姿勢を保った。和胤の濃やかな舌のうごきが、どんな言葉よりも惟之への想いを語っている。

 長い接吻であったが、息苦しくなることはなく、気遣うようにゆっくりと呼吸をおいて離れては、また唇を塞がれる。それを繰り返す毎に、あたまの芯が痺れるような感覚が増してゆく。

 和胤の腕を枕に、天井を仰ぎつつ相当に悩ましい吐息をつくと、すかさず隙だらけの喉もとへ唇を這わされる。襟を掴み、すこしずつはだけてゆきながら、あちこちにくちづけられて吸われ、舌さきで擽られ、あまく噛まれる。

 その一連の行為も、和胤は何の躊躇いもなくしてのけた。それらに惟之はいちいち反応を示して、ときにはちいさく声をあげさえする。そうして暴かれ、遂には半身を月光のしたに曝されてしまう。


 「よいよ…腹が減ったこどもみとーに貪ってからに。いくらなんでも、こりゃァやりすぎじゃないんか」

 向かい合うあいだ、すこしからだが離れたときに、惟之はじぶんのからだに刻まれた痕を、つくづくと眺めおろして、今までの行為と、それを受け入れた自身に呆れかえっていた。

 「何を言うちょりますか。惟之さんが…あげな可愛げな反応をせるから、いけんのです」

 我慢なぞできません、やめろというなら理不尽にもほどがあります、と顎を引いて言って、あとは上目遣いになると、いかにも物足りないというように、すこし恨めしげな視線をむける。

 「けしからん、ちゅうとるんじゃ。夕刻はあれだけ狼狽しよったくせに。おぬしは、おれに対して何もできんのじゃと高をくくらせといて、油断しちょるときに手を出すとは、けしからんにも程がある」

 実際、狼狽しているのは惟之のほうで、態とふてくされてこんなことを口走っているのも、今になって羞ずかしくてしようがないからで。そしてやはり、いまひとつ素直になりきれないじぶんがいることに、苛ついてもいる。

 「…それが本心なら、なぜ、いま拒否せんかったのです。言うちょることと、まったく噛み合っちょりませんが」

 「―ぅ~っ」

 まるで餓えをおぼえた狼のような眼つきで、和胤は三白眼のまま、惟之をみつめている。冷静に指摘されて反論のしようがなく、ちいさくなって眼を逸らしてしまう。

 「…惟之さん?」

 一度吹っ切れれば、素直に甘えられるだろうことは予感している。そこにゆくまでの道程が、惟之の性格が災いして途方もなく遠い。

 和胤に触れられて、拒否などする理由はひとつもない。むしろ心地よさしかない。最もじぶんを大切に扱ってくれるかれに、細胞のひとつまで余さず満たされていく至上の幸福感だけがある。

 それなのに、ふと我に返るなり、羞恥や意地といったものがあたまを擡げて、憎まれ口しか叩けない。これでは、惟之から手を出そうが、和胤から出されようが、真の意味でふたりが結ばれる日は、永遠に来ないだろう。

 「悪戯心でからかわれるのは、閣下の愛嬌だと思うて、笑って受け止めてきましたが…。こげなふうに弄ばれるのだけは、ご免蒙りたくあります」

 長いため息がきこえたあとに、切り捨てるような冷たい声が、惟之の耳を裂いた。和胤が、どんな気持ちで惟之へ手を伸ばしたか、充分すぎるほどわかっているのに。それを傷つけることばをくちにしたのだから、当然の報いだ。

 すい、と影が動いて、和胤が座を立つ。

 結局己はどこまでも孤独なのだと、月の怜莉な光に告げられているようにすらおもえて、惟之はますますちいさくなり、庇うように自身の腕でからだを抱きすくめた。

 胸に痛みが走って、涙が堰をきったようにあとから溢れてこぼれ落ちる。堪えても嗚咽がもれて、両手で顔を覆って泣いた。涙はとまらず、更けていく夜の冷気に晒したままの身は、切られるような痛みすら感じていた。

 「おれァ…何ちゅうことを言うてしもうたんじゃ。和胤…、今度ばかりは―赦してはくれんじゃろうのう…」

 あれだけ大切におもっておきながら、結局はこんなふうにしか接することができない惟之には、呆れたにちがいない。いくら寛容な和胤といえど愛しさ余って憎さ百倍、ということになるだろう。いっそのこと、憎みきられたほうが幾らか気は楽かもしれなかった。

 つと袴の紐を解くと脱ぎすて、和服の下締めの帯を解いて手にする。はだけたままの着物が落ちたのも気づかず、白い襦袢だけのすがたで、ほとんど幽霊のような足取りで、ふらりと立ち上がって木戸へ近づく。かるく飛び降りれば、すぐ庭に降り立てる場所で、虚ろな眼のまま、銀色の桜の樹をみつめた。

 月あかり 夜露に消えし 悪しき夢

 朝に桜が きみに笑むかな

 せめて、桜だけは笑っていてくれ。そうして朝には、傷ついた和胤をやさしく迎えてやってくれ。おれには、もうその資格も価値もないから―。

 そうおもって、ぽつりとくちにした。

 井戸で水をかぶって、少しあたまを冷そう。明日の朝、和胤に謝らねば。たとえ赦してもらえなくてもいい、憎まれてもいい。しかし、これだけは謝らねば。

 庭に降りようと一歩踏み出したとき、背後から襟首を掴まれて、それこそからだが浮くほどの勢いで引きずり戻された。あまりの勢いに、一瞬何が起きたのかわからないくらいで、息さえ詰まったほどだった。

 「何を―、何をせる気ですか。あなたは…」

 「かっ、和胤…!」

 襟を両手で掴みあげられ、詰め寄られる。本気で怒っているのは、ことばを俟たなくてもわかる。それにしても、愛想を尽かして、東屋から出ていったものとおもっていただけに、惟之は目を白黒させるしかない。

 しかし、なぜこんなに怒っているのか―。

 和胤は惟之の左手から晒しの帯を素早く取り上げて、畳のうえに抛った。何のことはない、帯は井戸へ行って水をあたまにかぶったあと、手拭い代わりに使うためのものなのだが…。まさか、身投げか、首を吊りでもするとおもったのだろうか。

 「いや、あのな―」

 ぱんっ、と左の頬が鳴って、打たれたことを認識した惟之は目をまるくした。もちろん叩いたのは和胤だ。決定的に勘違いをしているが、正そうとしてもややこしいことになるだけだろう。

 「手を出したことを、貶すような言われかたをされてつい、かっとなってあげなことを言ってしまいましたが…。あれが惟之さんの本心でないことは、わかっちょりました。後悔して、謝ろうとおもって戻ってきたら、あなたというひとは―」

 「謝るのはおれじゃよ。ありゃァ、おぬしが怒って当然のことじゃ。おれがじぶんから手を出させるように仕向けちょったんじゃけぇのう。それでおれ自身が素直になれんことへの腹いせに、おぬしに八つ当たりときては…、愛想を尽かされるも止むなしじゃ」

 「あなたが素直じゃーないことくらい、百も承知しちょります!まったく、こげな危ういことになるくらいなら、初めからここで強引に押し倒しちょけばよかったっちゃ」

 「危うい…じゃと?おい、まさか、それじゃ今、おれが自殺せるように見えたちゅうことか」

 「ついこの前まで、現世などどうでもええと、体を毀すほど酒に仕事と、じぶんを苛め抜いちょったのは、一体どこのどなた様ですか」

 「ぅ…。いや、それとこれはちと論点が違うじゃろーが」

 「違いません、おれには一緒です。…もう、羞ずかしくても、どれだけ泣いても喚いても、素直になるまで離さんので、覚悟しちょってください」

 ぎろり、と例の狼のような眼つきでもって、人騒がせな栗鼠を睨むと、有無を言わさずにことばを遮った。それから和胤はきっぱり言ってのける。

 身を屈めて、床に散らばった着物や袴を素早く手にとるなり、惟之に持たせる。両手が塞がったのを見計らって抱き上げてしまうと、さっさと母屋の洋館へ戻っていく。

 惟之は文字通り栗鼠のようにちいさくなって、しおらしくしている。これ以上逆らったら和胤に締め殺されそうな、そんな気配すらあったが、愛想をつかされるより何倍もましである。
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