大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第伍拾参話

 昼間にすきなだけ料理をつついたのもあって、夕食は時間をずらして夜食のかたちにし、軽く蕎麦がきを食す程度で終えた。宴会の招待客が持参して来たとっておきの土産物である。

 毎度のことながら、食事中は沈黙の時間が流れるのが常だったが、今日のそれは和胤にとって一段と重く感じられた。惟之は普段と変わらない。夕刻の庭でのことなどなかったかのように、けろりとしている。目が合えば屈託のない笑みを向けてくるものだから、和胤も含羞みつつそれにこたえる。

 「信州の蕎麦粉だけあって、美味かったのう。―おっ、ええ月が出ようるぞ。今日は何から何まで膳立てされちょるようじゃのう。そとで月見桜としゃれこむか、和胤」

 そういって、もう庭へ出ている。離れというにはちいさいが、茶室のような東屋が建っていて、ちょうどそこから桜も月も眺められ、春先はまことに居心地のいい場所なのだ。

 しずかに引き戸を開けて中へはいると、惟之は木戸と障子を開け放して、畳のうえに寝そべって寛いでいる。しらじらとした月光が降りそそいでいて、外に映える桜はみごとな銀細工の樹にもみえた。

 「―おい、膝ァ貸せ」

 「はい」

 惟之は起きあがりもせず、空いている手を空へあげて、指さきでチョイチョイと招きつつ、言う。傍へ座ると、いつものように惟之のあたまが膝のうえに載る。膝枕など毎度のことなのに、和胤はそれだけでどきりとしてしまう。

 和胤と心通わせる仲になっても、何かにつけて惟之が主導権を握るかたちになっている。と、いうより和胤はあの通りの性格であるから、惟之に我が侭ひとついったことがない。

 好き放題いうのはいつも惟之で、時折あたまを痛めつつも、和胤は概ねそれらを諾いてくれる。そうやってぽんぽん投げつけても、受け止めてくれるものだから、寄りかかっているほうは大いに居心地がよい。

しかし、惟之としては今回の件について、和胤から何がしかの行動を起こすまで一切、手をださずに知らん顔を決めこむことにした。

 受け身で支えてくれる分には、とほうもなく器が大きい和胤だが、攻めの姿勢に転じてみよ、と言ってみたらどうかといえば、からきし駄目であることは、夕刻みせたあの態度であきらかである。

 そこからどうにか、じぶんの意思でもって行動を起こして接してほしいのだ。惟之からならばいつでも、それこそ強引に押し倒しもできる。それが一番手っ取り早いのだが、絶対にしたくない。
 
 何も、初めが肝心などと、初心なことをおもっているわけではない。しかしどこかに、筆おろしをどう迎えるか悩む年頃に抱く、どこか甘いような、なまぬるいような気持ちに似たおもいが、惟之のなかにある。やはりこればかりは譲れない部分で、

 “おれをどこまで想っちょるのか、示してみせろ”

 という、試すかのような無言の催促を続けるつもりでいる。そのかわり一度手を出されたら、どれだけ羞恥をおぼえようとも、とことん受け止める覚悟もしている。

 と、惟之がこのような思惑でいるなど、和胤はおもいもよらないでいる。ただ、先刻の自身の不甲斐なさを愧じつつも、惟之が普段と変わらない態度でいることに、ほんのすこし安堵していた。

 膝にかかる温もりはあたまだけでなく、惟之が時折身じろぎすれば肩も触れるし、膝頭へ手を置かれたりもする。そとの風景から視線を膝もとへうつしてみれば、真っ白な月光が、寝そべって憩う惟之にも降りそそいでいる。

 病み上がったばかりの痩せたからだが、その光に一層はっきりと浮かぶ。その身にはやく、いつもの活力がもどればよいのに、と和胤は僅かに眉を顰めておもった。

 華奢な肩へ目をやって、和服の襟から覗く首のほそさに、はっとする。月光のせいで、そこに居るはずの惟之があまりにも希薄にみえてきて、膝のうえの温もりすら、薄れてきたような錯覚におちいる。

 つと手を伸ばして、肩へ掌をおいて確かめる。そこには夜気に触れた和服の、ひやりとした生地の感触しかない。小振りの耳朶をつまむと、すこし冷たかった。耳のうしろをかすめて頬に触れ、そっと包みながら撫でて、襟の隙間から首すじへ掌を滑りこませた。

 指さきで探って、ようやく温かみを感じてほっとする。惟之のからだが冷えているのか、それとも和胤の手指が冷えきっているのかもしれないが、それにしてもまるで実感がない、とおもっていたとき。

 ぴくり、と惟之のからだがちいさく震えて、膝頭に置かれた手にも、くっ、とちからが入る。惟之が鋭敏な感覚の持ち主だということは百も承知であるが、肌の感触が心地よくて、愛しさも増すがゆえに手を止める気はない。さすがに襟を乱すようなことはしていないが、指を首すじからうなじに沿わせて撫でていく。

 それにしても、こんなにほそかっただろうかと、畳のうえに置かれた右手へ目を落とし、袖口から覗いている手首を掴んでみておもう。

 掴みあげた手首の裏側の、やわらかな肌へ唇を寄せてそっと触れてみれば、かすかに指さきが跳ねる。そんな僅かな反応をして、惟之の隠れた本心が見えてくるような、そんな気がしてならない。ひとたび肌に触れることは、百のことばを介するよりおもいが通じるのかもしれない。
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| 変わらぬ青空のしたで・51―60話 | 14:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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