大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第伍拾弐話

 午後の陽がかたむいて、夕刻まえに宴はおわった。

 心地よい酔い加減でいる部下たちは、ぼつぼつと徒党を組んで辞していったし、芸妓らは夜の座敷にかかっている者がほとんどで、刻限いっぱいまで杉邸で過ごして、慌しく帰っていった。

 庭に支度された宴席も、店の者が来てあっというまに片付けてしまい、もとの静けさが戻るのにそう時間はかからなかった。

 いい宴だった、と惟之はひとり桜のしたに佇んで、花を見上げながらおもいに耽っている。夕刻の陽に照り映えた花の色は、美しい輝きを放ち、そこから目を離せなくなる。すこし肌寒くなってきてはいたが、樹の幹に手をついて寄りかかる風にし、揺れる花房をみつめている。

 「惟之さん」

 そっと、うしろから肩を掴まれて軽く促すように引かれるまま、半歩ばかりさがる。背が和胤の胸にあたると同時に、包まれるように抱かれた。はじめはやわらかい抱擁も、すこしばかり強いものになってゆく。触れられる感覚が、どことなくいつもと違う。

 「どうした、和胤」

 とん、とあげたあたまで和胤の肩をおして訊ねる惟之の口調は、いつもと同じにきこえた。惟之は最後のひとりまで、来客と懇ろに会話をかわして、その帰りを見送っていたが、和胤はといえば、宴の終わりのほうは殆ど上の空で、惟之への想いを対処するのに精一杯だった。

 それで、いまはどうかといえば、実はまだ治まっていなかった。

 「もうちっと、こうしちょってもええですか?」

 「うん、ええよ」

 ひくい声で訊いてきた和胤へ気軽に返事をしたが、惟之も内心では和胤がいまどんな気持ちでいるか、わかっていた。

 今日は、惟之にとって大切な者ばかりが集まったわけだが、そこにおいてもなお、和胤が自身にとって特別な存在であると改めて感じた。だから、その気持ちを今日は素直に、皆の面前であるにもかかわらず、くちにしたのだ。その結果がこれである。もう、これ以上知らん顔をしているのは、酷というものだろう。

 「寒うなってきたのう、花見の続きはここでのうて部屋でせんか」

 身じろいで腕のなかでからだを捻ると、向かい合うかたちになって顔を見合わせる。じっと和胤の目を見つめ、からだに腕を回して軽く抱きついた。

 「惟之さん…、あの―」

 「なァにをしちょる。早う、部屋へ連れてゆかんか」

 眉をよせてくちをとがらせつつ言う、すこし不機嫌な顔であったが、夕の陽に照っただけではない赤みが、確かにその頬にさしていた。心拍のたかさは隠せず、触れ合っているからだを通して伝わってくる。

 いつものように惟之を抱き上げたが、どうしてよいかわからない。まさか惟之から行動をとるとはおもっていなかったから、和胤はうろたえた。

 「あの、ええんですか…?」

 「とんだ野暮天じゃのう、皆まで言わんとわからんのか」

 まったく興ざめした、と言わんばかりの呆れ顔で言うなり、惟之はするりと腕揺り篭から抜け出して降り立つと、さっさとあるいていって家の中へ入ってしまう。

 この、馬鹿―

 ひとり夕闇の桜のしたに残された和胤は、惟之の部屋にあかりが点くのを認め、うなだれると自身のあたまを拳で小突いた。いざとなると意気地がないなど、男の風上にも置けないではないか。惟之にどうおもわれたか、少なくともこれで機会はひとつ失われたと言っていいだろう。

 はらり、と肩先をかすめて桜の花が一輪おちてくる。脳裏に惟之が詠んだ歌が浮かび、胸がしめつけられるおもいで、それを手に包むようにして持って、そっと自室へ戻る。

 この桜を見ていつか想いを示せるように、押し花にしておこうと本の間に挟んで、それからやっと紋服を脱いだ。和服は着慣れていないだけで、知識がないわけではないから、今朝教わったことは既にあたまに入っている。ひとりで全て済ませると、畳む物は畳んで、あとはきれいに衣桁へかけておく。

 「惟之さん…」

 シャツにズボンを穿いただけという格好になると、長椅子へ寝ころがってため息を漏らした。自身の不甲斐なさに対する鬱々とした気分のなかでも、惟之への愛しさはいや増すばかりだ。

 ひとが、ひとに触れるときほど、その感情が如実にあらわれるものだ。惟之はそれを敏感に察して和胤を促してみたのだが、普段と違い、まったく初心な少年そのものの狼狽ぶりをみせたものだから、惟之は拍子抜けしたおもいで、部屋へ引っ込んでしまった。

 やはり、ここはこちらから手を出すほうがいいのか。と、自室の机に向かって真剣に考え込んでいる惟之は、着替えを済ませて普段の和服に、袴をつけたすがたでいる。頬杖をつくと、頬をふくらませた。

 惟之にしても、もともと男色の趣味はないが、和胤だけは別だ。

 かれに弱み―感覚の鋭敏さを晒している時点で決定的だろう―を握られて、それに今まで対策もたてずに放置しているのも暗に、いつ手を出してもいいぞ、という気持ちがあるからだ。

 それはさておいて、と、あたまを切り替えて冷静におもい返してみる。和胤は根っからして真面目な性格だから、年上の惟之に対してじぶんから事を起こすのは、かなり抵抗があるのかもしれなかった。

 「―まったく。花見をせるのに桜を右から観るか左から観るか、そげなことを言うちょるのと変わらんじゃーないか」

 と、まことにざっくばらんな例えを引っぱり出してきて、ぼやいた。
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