大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第伍拾壱話

 一方で、美妓がいても侍らせもせず、気心知れた同士で固まって飲んでいるほうがすきである、という連中もおり、宴席の一角を占めている男どもの中に、和胤は引っ張りこまれていた。

 「なんだ貴様、名実ともに杉閣下の女房になるんか」

 紋付すがたの花嫁御寮、などと歌ってからかったりしているなか、親友の佐官などは複雑なおもいで、和胤を見つめた。

 「これからは、おいそれと貴様を連れ出して付きあわせるような真似はできんな」

 ある者はついふた月前に、酔った勢いで和胤に抱きついて、近頃の付き合いの悪さを盾にとり、ねちねちと恨み言をいって絡んだ記憶があるだけに、杉閣下に睨まれたらあとがこわいなあ、と言う表情は、冗談でなしに強張っている。

 男も惚れる男、というのにはすこし語弊があるかもしれないが、和胤は生来からくる穏やかな性格と面倒見のよさから、同性からも愛されることが多い。実際、和胤を友人以上に慕っている者は、少なからずいる。例えば竹内もそのうちのひとりである。

 軍人にしては思慮が繊細で、武人というよりは文人肌である竹内が、第一局において重宝されているのは、その文才によるところが大きいというのを、自他ともに認めている。

 それで他の同期と同じように出世しているから、どこか引け目を感じつつ、いままでやってきた。いっそ軍人を辞めて、秘書官にでもなろうかとおもったことも一度や二度でなく、そのつど親身になって相談に乗ってくれるのが和胤であった。

 はなしを聞いてもらいながら杯を煽るものだから、つい酒を過ごしてしまうことも度々ある。記憶が定かでなくなるほど飲んで、気づけば介抱してもらっている。

 そんなだらしのない部分を、長年のつきあいだというのに、和胤は呆れもしなければ叱りもしない。ただ、竹内の気が楽になるまでだまって傍にいてくれる。今まで、何かにつけて甘えてきただけに、上官が和胤を手許におくとなれば、以降はそうはいかないだろう。

 「竹内、まさか山口に手をつけとらんだろうな」

 と、隣の同期から、からかいたっぷりなくそ真面目顔で訊かれ、竹内はさすがにそれはない、と首をふってみせる。和胤は輪の中で胡坐をかいて座りつつ、連中の馬鹿騒ぎに苦笑をうかべるしかなかった。

 「この馬鹿どもがァ、なーにをほざいちょるかっ。それ以上言うたら、ただじゃおかんぞ。下衆な推測をしちょるあたまがあるなら、もっとましなことに使え!」

 白藤の琴を堪能して、席に戻りながら目撃した光景が、この騒ぎである。

 惟之は感傷に浸っていた気分と、自身を温めている和胤への想いとを、いっぺんにぶち壊しにされて頭にきていたから、懐から抜いた扇子で以って、連中の後ろあたまを容赦なくびしびしとやっていく。

 「ええか、おぬしら。下衆な噂を流されるのは真っ平ご免じゃけぇ、この際はっきり言うておく。山口はおれにとって家族も同然じゃが、これはおれと山口との心の問題であって、他は何も変わらん。平素どおりしとりゃええんじゃ、陰間を囲ったようにおもわれてはまったく心外じゃ」

 侮辱にもほどがある、山口に謝れ、と言って、ちいさな肩を聳やかして席へもどってゆく。

 和胤との仲は、もっと高潔なところへ置いておきたい、と願っている惟之からすれば、もっとも警戒すべきは自身の感情の暴走で、次いでのそれは、周囲の好奇の耳目である。

 「まったく、怪しからんのう」

 と、言いつつも、和胤がやはり同性からも慕われる存在であることを認めて、内心でヒヤリとしたのも、否めなかった。

 「まったくもって、怪しからん」

 と、二度いって、手に触れた升をとりあげると、そこになみなみとつがれていた祝い酒をいっぺんに干した。

 上座に落ち着いた惟之から、まだ鋭い視線を突き刺されている連中は、これは相当に怒らせてしまった、と慌てふためいて和胤へ謝意を示した。

 「あァ、貴様らが本気でそげなことをおもっちょるとは、おれは考えちょらん。気にせんでくれ。閣下はおれが宥めるけぇ、心配するな」

 穏やかな笑顔とともにきっぱりと言い切って、和胤は男どもの輪から抜けていった。惟之が、あの馬鹿騒ぎに本気で腹をたてているのなら、それは和胤を相当に想っているということのあらわれだ。それだけで、和胤の心はたとえようもなく温かくなる。

 「閣下、それ以上の酒はいけません。お約束を破られては困ります」

 惟之の隣へ膝をつくと、ムスッとしたまま二杯目の升をあけるのを待って、和胤は慌てて惟之の手を押さえた。左手で銚子をつかんで、まだ飲むつもりでいるのだ。

 くちをへの字に曲げて、きっ、と和胤を睨みつける。あの馬鹿騒ぎが、余程腹に据えかねているように見受けられた。

 「離さんか、山口。こりゃァ清めの酒じゃ、構うな。冗談でもあがな話は聞きとうないわい、おれの気持ちが穢されたも同然じゃ」

 まったく、このひとは―。

 そのことばに和胤は、雷にうたれたような感覚を身におぼえていた。ひとつも隠さずに、惟之はじぶんの気持ちを言う。それで、和胤がどうおもうかなど、おそらくほとんど考えていない。さきほど詠んだ歌もそのひとつで、和胤の心は擽られてやまない。

 惟之が愛しくてしかたがない。いま二人きりであれば、即刻抱きしめているところだ。否、抱きしめるだけで済むかどうか―。

 「いまの閣下のお言葉で、おれは充分清められました。あと一杯で、酒は堪えてください」

 一瞬、切なさと愛しさを堪えるように瞼をかたく閉じて、それでも隠しきれない。そう言うのがやっとで、あとはまなざしで訴えかける。

 「ここでまた、おぬしを困らせては本末転倒じゃな。わかったわかった、もう飲まん。…あァ、そがな目でみられよると、擽られるよりこそばゆいのう」

 いっそ飲み倒して、おぬしに“やいとすえられる”ほうが、ましかもしれんのう、と照れながら言ってはみるが、両手は銚子と升から離している。
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