大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第伍拾話

 宴席は、やがて芸妓らが男たちのそばに侍って、なんとも甘やかな雰囲気になった。酒と料理と、芸妓らとの話の種もつきぬものの、一部の者―主に恩田の部下たち―は拍子抜けした気分でいた。

 たまたま、恩田の昇進祝いが重なって珍しく堅苦しいかたちにはなったが、本来のこの“桜の宴”は、普段と変わらぬ和やかな交流の場である。そろそろ、惟之の悪戯が出てくるのかとおもっていたが、結局しまいまでそれはなく、久しぶりに会う人々が宴を楽しむ様子を嬉しげにみている、といったふうであった。

 料亭で遊ぶのと一緒で、大抵の遊興の用意はあったが、それにも加わる気配もないまま、隣に白藤を座らせてもっぱら彼女の話に耳をかたむけている。

 縁故あるとはいえ、降ってわいたような華族からの養子縁組の話に、十四歳の娘が不安を抱かぬはずはない。
惟之は、彼女の父代わりと自負してきたこともあって、白藤の話に逐一頷いて、濃やかな返答を忘れなかった。


 話はかわるが、花柳界で派手な遊びをすることで、惟之は有名であった。しかしその割に、芸妓との艶聞、醜聞の類は一切ない。

 勿論、お気に入りの妓は幾人もいて、中には世間に出てやってゆきたいという者や、その身の上があまりにも過酷な者などは、その苦労から解くために落籍したこともある。

 白藤もそのひとりで、彼女の背負っていたものは全て惟之が清算している。ただ白藤は、そうしても他に行くところがなく、そのまま芸妓として生きてゆく道を選んでいたのだ。

 落籍したということは、事実上、惟之が“旦那”となるのだが、それを逆手にとって彼女たちをいいように扱うことは絶対にしない。今でも、客と芸妓という間柄を保って、平素と変わらぬ態度でいる。

 それがまた、芸妓らの心を擽るのであって、惟之は“身持ちの堅い旦那”として、花柳界でもかなりの人気者なのである。

 ―ともあれ。ふたりは懇ろに語り合ったあと、漸く肩の力を抜いて一緒に料理へ箸をつけ、茶を楽しんだ。

 「藤や、これは約束じゃ。何かあったら、何時でもええから、すぐにおれのとこへ来んさい。遠慮はなしじゃぞ」

 「はい、杉さま」

 惟之が白藤の膝を枕にして寛いでいるとき、彼女を仰ぎつつ言った。それだけでなく、指きりまでしてみせる。

 健気なふたりの様子をみて、妹同然に白藤を可愛がってきた姐妓の円龍は、そっと袂で目頭をおさえた。惟之に白藤を引き合わせたのは、他でもない円龍だったし、ずっとふたりをみてきたから、心中の切なさが手に取るようにわかっていた。

 湿っぽい拍手なんて打つもンじゃない―などと白藤へ言っておきながら、このような祝いの席でじぶんが涙をみせてはいけない。

 「こらッ、白藤、いつまで杉さんとくっついてンの!あんた、琴が上手なんだから、一曲聴かせてさしあげたらどうなのさ」

 ぴっしゃりと言うなり、手のなかで広げた扇子をくるりと宙に投げて舞わすと、美しい仕草とともに華麗にそれを受け止めた。ひととおり扇の舞を披露する間に、もういつもの円龍にもどっている。扇の舞がおわると、座は喝采に沸いた。

 「おぅ、おっかない姐さんじゃ。―とはいえ、おぬしの琴は聴きたいのう。弾いてくれんか」

 惟之は身を起こすと、ちいさな腰掛けをもっていって桜のそばへすわった。つくづくと、白藤が弾く琴の音に聴き入り、琴を弾く彼女のすがたを見つめたかったのだ。

 「ありゃァ、まるで、嫁入り前の娘との名残を惜しむ父親そっくりじゃのう」

 と、恩田が半ば呆れたような口調でからかう。そう言いつつも、じぶんにも娘がいるだけに、切なさが伝播して、どうにも複雑な気持ちになっている。

 「久しぶりの宴会でありますから、きっと馬鹿騒ぎすると踏んで、尻馬に乗ろうと期待しとりましたが、外れました。しかし閣下は、何かこう…お変わりになられたようでありますな」

 今まで、しみじみとした部分などは、こういった場では微塵も見せなかっただけに、部下たちもどこか感じ入った様子でいる。この春の宴には、喜びと別れの予感とが入り混じっている。よいことばかりが続くわけではないぞ、と浮かれ気味の心を戒められているようにも感じられた。
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| 変わらぬ青空のしたで・41―50話 | 23:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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