大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  変わらぬ青空のしたで・第肆拾漆話

 「―ちゅうわけで、こうもおぬしに心を占領されていては、旅立つことはでけん。というのは冗談じゃが。徒に天命を削るまねをして、大切な者をあとに残してあちらへ行っても、佳乃は笑ってくれんちゃ。悲しい顔をされるのは堪らんけぇのう」

 と、妻にと言うよりもむしろ、母親に叱られるのを予想して狼狽するこどものような口ぶりで言う。それが妙におかしくて、和胤は微笑むと、手の甲で涙を拭った。

 「おちついたか。…そんなら、ちと風呂を沸かしてきちゃるけぇ、待っちょれよ」

 惟之の胸元へ、和胤は頬をくっつけるようにしてあたまを預けていた。ぽんぽんとやさしく髪に手を置かれ、さらりと言われたことばに、和胤はあわてて惟之をひきとめる。

 曲がりなりにも将官が風呂焚きをするなど、いくらつきあいが深くともそれに甘えるには抵抗があった。それを言うと、惟之は苦い顔をして和胤の額をぴしゃりとやった。

 「無粋なことを言いようるのう、ここまで本心を晒しておいていまさら将官だの佐官だの。公私の別をつけんと、おれはおぬしにしてやりたいこともでけんっちゅうのがわからんのか。すこしはおれの気持ちも酌め。…それから、今度ふたりだけで居るときは“閣下”などと呼んでくれるな」

 言っているそばから羞ずかしくなったらしく、抱きとめていた和胤のからだからそそくさと離れ、小走りに扉へ駆けていってしまう。

 「ちゃーんと着替えて、温まっちょれよ」

 ―はたして。襷がけをした惟之が、手斧で割った薪を釜の焚き口に放り込んだりしているすがたを想像してみたが、奇妙すぎてこそばゆい。そこは惟之のことだから、持ち前の機敏さでそれらを的確にこなしているのは、まちがいないのだが。

 待っている小一時間のあいだに、和胤は着替えを済ませたが、やはり落ち着かない。こっそり階下へおりていって台所へ入り、めしを炊いてちょっとした汁物まで拵えた。しかし、台所と風呂場は、火を使うだけに隣接している。

 めしの炊ける匂いが風にのって、庭の裏手にある焚き口まで漂い、惟之に嗅ぎつけられてそれで発覚する。勝手口から飛び込んできた惟之に、薪を振り上げられつつ追いかけ回されたのは言うまでもない。

 新聞紙の巻紙とはわけが違うから、さすがにゴツンとやられたのは一回だけであったが、風呂場であたまを撫でてみると軽くこぶができていた。

 それでも、どこか吹っ切れたような様子の惟之に、和胤は心底安堵していたから、どこか擽ったい気持ちで湯につかった。湯加減はどうだ、と惟之がそとの焚き口から声をかけてきたりもし、ますます擽ったい。

 しっかり芯まであたたまって風呂から出てくると、和胤が拵えた朝食をかこみ、それが済むと今度は惟之が拵えた卵酒をすすった。いささか顔色がよくないのう、と心配してのことである。

 今日は雲ひとつない青空で、昨日までの寒さが嘘のような小春日和である。雪はまだどっさりと積もっていたが、それもすぐに溶けるだろう。

 ふたりで居間から空と庭とをながめた。いつものように、和胤の膝枕に憩って、惟之が“下手の横好き”と言ってはばからない和歌や漢詩を練ったり、昔この国を席捲していた、数々の武将のはなしを聞かせたりと、いつもと変わらぬ穏やかな一日のひと幕であった。

 ただひとつ違うのは、ふたりの心が強く結びつき、この青空と同じく、晴れて澄みきっていることだろう。和胤は願っていたとおり、触れたいと願い続けてきた惟之の心を、思いがけなく深くその掌で包むことができたのだ。何があってもけして離すまい、と心に誓った。
→【3章・1話】 →目次へ戻る 

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| 変わらぬ青空のしたで・41―50話 | 13:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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