大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  変わらぬ青空のしたで・第肆拾肆話

 川上との会話を、自室でぼんやりしながら思い返す。

 すっかり和胤に寄りかかっていることを、まさか嫌味などで言ったわけではなかろうが、和胤に対して、何かしてやりたいとおもうことはないのか、と川上に訊かれて、とっさに答えられなかったことに、後ろめたさを感じていた。

 「してやりたいこと、か…」

 呟いてみて、思いつくことは幾らかでてくる。しかしそれらはほぼ軍務に関することで、たとえば戦術を学ぶ足しになるような、外国の書物を購入してやるといったようなものでしかない。

 これならば物を遣るといっても嗜好品の類ではなく、実益を兼ねているのだから、受け取らないことはないはずだ。和胤がしてくれたことに比べて、なんと味気ないものかと、ため息をもらす。

 籐の椅子の、肘掛けに頬杖をついていると、細く開いた扉のむこうから、仔犬の吠えるこえがきこえた。珍しく頻りに吠えていて、惟之を呼んででもいるようだ。

 「小太郎のやつ、このくそ寒いちゅうのに何ィしちょるんじゃ…」

 惟之が腰をあげて廊下へ出ると、小太郎は三つ先の扉の前に座っていた。そこは和胤が使っている部屋である。

 「これ、こげなとこに居ったら寒うていかん。おぬし、今夜は山口が帰って来んのが、わかったんか?」

 屈んで抱き上げると、くぅん、と切なげに鳴く。それでいて惟之がそこから動こうとすると、引きとめるように吠えるので、部屋に何かあるのかと取っ手を掴んで扉を開いた。

 あかりをつけると、小ぎれいに片付いた室内が目に入る。いかにも和胤らしいといえる部屋のつかいかたである。小太郎は腕のなかからおりて、寝台のうえに畳んで置いてある綿入りの羽織のなかに潜りこんでしまう。くるりとした尻尾だけがみえて、それがぱたぱたと左右に振られる。

 いくら惟之に慣れているといっても、やはり主人が不在となると、寂しいのだろう。すこしでも主人の匂いがするところに居たいにちがいない。だからといって、こんな寒い場所に仔犬一匹を放っておくわけにはいかない。そこで惟之は自室の暖炉を消しにゆき、今夜は和胤の部屋で過ごすことにした。

 薪をくべなおして、小太郎を羽織ごと暖炉の暖かな場所へ運んでやる。暖炉の前に陣取って本を読んでいると、ふと鼻先に仄かな香りがかすめた。いつもの、和胤の身に漂う白檀のそれである。見ると、書棚のうえに香木らしきものが置かれている。鼻をうごかして、その香りを吸いこむと、安らぐのと同時に、どこか切ないものも湧きあがってくる。

 この療養が終わるまで、あとひと月―。

 体調をくずすこともめっきり少なくなったから、こどもを看病するようにあれこれと手を焼かせて、かれの貴重な勉強の時間を費やさせることもなくなるだろう。その間に、和胤に何をしてやれるだろう。

 「ん…」

 再び本に目を落とすも、眠気がそれとなく全身を包みはじめているのを感じて、すぐに閉じた。自然ともれる欠伸を仕舞いまでしてしまうと、暖炉の前で羽織に挟まったまま寝息をたてている小太郎と、寝台とに目をやる。

 どうせ今夜は帰ってこないのだから、和胤の部屋でねむっても構わないだろう。寝台に潜りこむと、胸元に小太郎を抱くようなかっこうで横向きに寝相をとる。ふとんを肩まで掛けると、やはり白檀の香りに包まれる。

 「…和胤…」

 そっと密やかに、小声で初めてその名を呟いた。和胤がひと晩居ないだけだというのに、寂しいのは惟之も小太郎と同じだった。しかし、小太郎がいなければ、この寝台でねむることはおろか、部屋に入ることすらしなかっただろう。

 いまこうしてふとんにくるまっていると、和胤に抱きしめられているようにおもえて、ほっとしているじぶんがいる。

 療養が済んでも、そしてこの先、異動になって惟之の副官の任から外れたとしても、和胤には傍にずっと居てほしい。軍人として前途ある有為の青年であることは、惟之も認めている。しかしそれを抜いて、軍人としての立場でなく、ひとりの人間として傍に居てほしかった。

 いつも切なく胸を圧す気持ちの正体が、果たして和胤が惟之をどうおもっているのか、という不安からであるというのを、眠気に霞む意識のなかにあって、はっきり認識した。
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| 変わらぬ青空のしたで・41―50話 | 19:44 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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