大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第肆拾話

 風呂につかって温まったあと、予備の軍服に着替えてこざっぱりしたすがたになったものの、和胤の気持ちはどこか晴れなかった。友人でもある同期の少佐連中から、これでもかと袋叩き同然にされ、改めて第一局に於ける上官の存在のおもさを痛感したからだ。

 しかし、かれらはもう、和胤を懲らしめたことで気持ちに区切りをつけたらしく、一緒に風呂へ入ってもけろりとしているものだから、その場では調子を合わせておいた。

 あとに残ったのは、上官に対する己の態度が、軍務外の個人的なつきあいにかまけて、軽々しいものになっていたことへの愧ずかしさであり、そのことで和胤のあたまは一杯になっている。

 上官に呼びつけられて、かれが寛いでいる部屋へ向かう足取りも自然と重くなる。廊下でひとつ息を吐き、殊勝な顔つきを崩さぬまま、遠慮がちにコツコツと扉をたたくと、いつものように「どうぞ」の声が、打てば響くようなはやさで返ってくる。

 声だけは明瞭に、聞き取りやすい発音で、失礼します、と言って扉をくぐる。そうして後ろ手にしめると、一歩室内に踏み出して、そのまま直立不動の姿勢になる。

 「なんじゃ、浮かぬ顔をしおって。そげなところでつっ立っちょらんで、こっちィ来て座れ」

 火の焚かれた暖炉の前で、長靴どころか靴下も履かずにいる惟之は、ぶ厚い座布団がいくつか置かれた毛皮の敷物のうえへ、裸足で立っている。

 自宅にいるときと変わらぬ、上官の気さくなことばを、いまの和胤は素直に受け止められなかった。それどころか、いっぺんに居たたまれない気持ちになってしまい、目を床へ落として、再び顔をあげると惟之を見つめる。

 「杉閣下…、自分は―」

 今回の件について、くだくだと言い訳がましい理由を述べることでしか、解決の道はなかろうとおもって、口をひらきかけた。

 「わかっちょる」

 惟之はそれ以上和胤にことばを継がせず、やさしく遮った。ひとことだけ言って、軽く頷いてよこす上官の顔には、ただ穏やかな微笑があるだけだ。

 その態度に打たれ、何も言えずにいると、上官は敷物のうえに胡坐をかいて、ここへ来いと催促するように、傍に敷いた座布団をぽんぽんと叩いた。靴をぬいでそこへ腰をおろすと、焚かれた暖炉の温もりが心地よくからだを包む。

 「これを飲んで、もうちっと寛いで温まっちょれ。列車は、相当遅れようるそうじゃ。この天候では仕方ないのう」

 葛湯をいれた湯呑みを、盆に載せて敷物のうえに置くと、そのあたりに転がっている座布団を適当にいくつか占領してからだのしたに敷き、惟之は手枕をしつつ和胤の横に寝そべった。

 ふたりは暫く、暖炉で踊る火を飽かずに見つめたまま黙っていた。一緒に居ると惟之はよく喋るし、笑い声も絶えないが、時にはこんな空間もうまれる。かれと居るときのこの穏やかな静けさも、和胤はすきだった。

 「のう、佐々井に旨い牛鍋屋があるちゅう話をきいたぞ。帰りに足を伸ばして食いに行かんか?なに、いざとなれば佐倉から列車に乗ればええ」

 ふと思いだしたように惟之は言って、ごろんと仰向けになる。その提案に和胤は反対する理由もない。牛鍋は好物だし、そとで食事をとるなど、久しぶりのことだから、嬉しかった。

 しかし、そこまで思い至って気がついた。ひと好きな惟之のことだ、他にも誰か呼ぶかもしれない。できれば今日は、いまのような雰囲気のまま、静かに過ごしたかった。念のためと、和胤はそれを囁くような小声で訊いてみる。

 「おい、気にし過ぎじゃ。実を言うと牛鍋屋の件はな、あんならの提案じゃ。さっきおれのとこに来て“山口にはやり過ぎたから、牛鍋を馳走したい”だとかぬかしよったけぇ、おぬしらは浅薄でいかん、ちゅうて叱ってやったんじゃ」

 へっ、と鼻を鳴らして言うと、快活な笑い声をたてる。

 「おそらくここへ、おぬしに頭をさげに来るじゃろ。そのときは、笑ってゆるしてやれ。じゃけぇ、そげな顔をせるのはやめい。あとは腹いっぱい食って、今日のことは笑い話にすればええちゃ」

 上官のあかるい笑い声をきいて、和胤は漸く肩から力をぬいて頷いた。確かに、本当に上官を蔑ろにしていると判断されたなら、まず惟之本人から恐ろしいまでの雷が落とされるだろうし、第一局の連中からも白い眼でみられることは間違いない。

 だとすると、今回受けたこの袋叩きはいったい何だったのだろう。腑に落ちぬ顔をしていると、惟之はすこし困ったように後ろあたまを掻きつつ、どこか申し訳なさそうな顔をして言う。

 「先に言うが、きいて怒るなよ。あんならー、おぬしが敵方に回ったのにもかかわらず、おれを独り占めしたかっこうになったのが、気に入らんかったんじゃと。おれを大将に担いで、大いに雪合戦をしたかったちゅうとった。あれだけ叩かれたおぬしからすれば、ずいぶんと割に合わんはなしじゃろうが」

 はじめは驚き、つぎには呆れて、しまいにはそれを通り越しておかしさがこみあげてくる。これは、こどもが喧嘩する理由と、何らかわりない。心底愧じ入っていたじぶんがまったく馬鹿みたいではないか。

 「それでは、腹いっぱい馳走になるとしましょう」

 すっかりもとの心持ちに戻って、和胤は微笑んだ。その内心で、安堵していたのは言うまでもない。
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| 変わらぬ青空のしたで・31―40話 | 08:39 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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