大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第参拾玖話

 さすがに観戦くらいはさせてくれ、と頼み、川上と並んで雪洞のすぐそとに腰をおろす。ついでに、汁粉をよそった温かな椀を両手で包みながら、箸をつけているという、傍から見れば緊張感もへったくれもないかっこうでいる。

 そんな風に惟之たちが戦況を見守る丘のうえを目指して、進撃してくる白軍の攻勢が、おもった以上に果敢で、遠目からみても将兵らが、まるで親の敵にでもぶつけるような勢いで、朱軍の連中へ雪玉を投げつけているのがわかるほどだった。

 仮にも敵将の前だけに、惟之は白軍の戦況をみても眉ひとつ動かさないでいる。それでいて内心では、これは勝てると確信をもっていた。あたまの中で次に起こすべき行動の算段をたてている。

 そうしながらも、最後のひと口、餅とともにほおばった汁粉を、小豆のひと粒までゆっくり噛みしめて味わう。惟之は小豆がすきで、例えを出すなら赤飯など祝い事でもないのに、頼んで食べる。そのくらい好物だ。しかもいまは、香ばしく焼けた餅と相まって、また格別にうまい。桜の宴をひらくときに、また食べたいのう。と、片隅でそんなことを考えたときだった。

 川上が隣を離れ、部隊長や参謀の和胤らと何やらひそひそと作戦の話をし始めて、十五分程経ったころ。それは遠く、この広い演習場に於いて発生源を極めて定めづらいものであったが、惟之の敏い耳は確かに雪洞の裏手からあがる鬨の声を聞き取った。

 戦況をみて予想していたとおり、白軍は極少ない人数ながらも編成した別働隊が、奇襲をしかけてきたのだ。

 「まったく、あのでかい声は恩田じゃな。さて、と」

 おかしさに吹き出したかったが、ここは堪える。くちの端に笑みを湛えるに留めつつそっと呟いて、惟之は盆のうえに椀と箸を揃えて置く。それから別段慌てたようすもなく席を立った。その挙動があまりに自然だったため、すぐ近くにいる川上を筆頭とした朱軍の面々に、見咎められることはなかった。

 そっと踏み出して、雪洞の入口まであるくと、すぐそばの湾曲をえがく雪壁に寄りかかった。ここに居れば、裏手もすぐに視認できる。まだすがたこそみえなかったが、背後から二度目にあがった喊声ははっきりそれとわかった。しかも、敵本陣を前後から挟撃していることを覚られないため、計ったように同時に進軍の喇叭が鳴り響く。

 惟之はもう、躊躇わなかった。

 和胤のものである外套を脱ぐと、手早く畳んで雪洞のなかへ置き、濃紺縅の冬軍服に金色の飾緒が輝くすがたで、酷寒のさなかへぱっと身を翻すと、駆けだした。

 おそらく、白軍の精鋭部隊との距離は十町もあるまい。背後から猛然と飛んでくる雪玉を、跳ねるような駆け足をゆるめずに、天狗のような身ごなしで避けてゆく。

 「杉閣下ァ」

 そう叫んだのは恩田か副官か。あるいは両方だったかもしれない。この逃走で間違いなく五町は全力で疾っただろう。雪の舞う視界に、白い装備を身につけた猛者たちがみえた。もう、背後を襲う雪玉はない。

 「おぬしらァ、行軍の速度を緩めるな。本陣はすぐじゃ、行って叩きのめすぞ」

 恩田を筆頭とした、三十人に満たない別働隊は、惟之を得て千人力とばかりに目を輝かせた。揃いも揃って、まるで戦ごっこに熱中する少年が、頼もしい大将を見つめるような顔をしている。

 「そうですな、行って思う存分暴れてやりましょう」

 腕白小僧をそのまま大人にしたといった顔つきで、恩田は快活に笑った。
 
 それから、携えていた軍装を惟之へ差し出す。からだになじんだ外套へ袖を通すと、白い鉢巻を締め直された軍帽をかぶせられ、戦装束に身を固める。そのとき、丘のうえでひと際大きな喊声があがった。

 「敵本陣へ、本隊が攻め入ったようじゃのう」

 惟之が部下をしたがえて、再び丘のうえに戻ってみれば、両軍入り乱れての合戦の真っ最中だった。敵本陣に残っていた朱軍の将校らは、悉くその濃紺の軍服が白い粉をはたいたような斑模様になっている。その例に漏れているのは川上くらいのもので、かれはひとり、山のように構えて雪洞の前に腰を据えている。

 その渾名に違わぬ栗鼠のような機敏さで、惟之は雪原を縦横に駆けまわり、軍帽に締められた鉢巻が風に煽られて靡く。そのつど雪玉が惟之の身をかすめるが、ひとつも当たらない。

 白軍の大将であるから、討ち取ろうと投げつけられてくる雪玉の数も勢いも、一向に減る気配がない。半ば囮役となって、そうやって朱軍の連中を引きつけるだけ引きつける。

 「今じゃっ、右翼ががら空きじゃぞ。最終防衛線を突破せえーっ!」

 よく徹る惟之の号令が、進軍喇叭の如く丘のうえに響き渡った。攻略地点に近い白鉢巻の連中がこぞって丘をまわりこみ、その天辺に駆けあがるのと、雪玉が庇をかすめて惟之の軍帽が空に飛ぶのと、ほぼ同時だった。

 「勝負ありもした、白軍の勝利でごわす」

 丘を駆けあがってきた白軍の面々へ、川上はまるで遊びにきたこどもを迎えるような、柔和な笑顔を向けている。しかし、きっぱりと敗北の宣言をしてのけるあたりは、果敢な名将と謳われた片鱗を窺わせるものがある。

 ひっきりなしに飛来していた雪玉がぴたりと止み、惟之は漸く逃げ足をとめた。いかな健脚でも限界がある。あともう少し遅ければ、雪まみれにされていただろう。

 隊を離れた恩田が駆け寄ってきて、途中で拾いあげた惟之の軍帽を再び頭上にのせる。そうやって一緒に丘をのぼった。

 「凱旋の入城ちゅうわけか」

 「そうですのう。さしずめあのカマクラが城といったところですかのう」

 たかが雪合戦でもその最中は真剣そのもので、終わってみれば皆けろりとしている。あまりに雪玉を食った将兵などは、早速くしゃみを連発しつつ戦場を去ってゆく。これから兵たちには、温かな風呂の湯が待つばかりである。

 「そうじゃ、誰か山口を知らんか。どこに居るんじゃ」

 「決戦開始早々、自分たちが蜂の巣にして、いま向こうの雪だまりに放り投げるつもりで、さきほど引きずって連れて行きました」

 真面目極まりない顔で言ったのは、第一局の参謀少佐連中だった。和胤とは同期の仲で、私的にも浅からぬ付き合いがあるはずの佐官ばかりだ。

 「なにィ、蜂の巣じゃと?あそびじゃちゅうに、そりゃちとやりすぎじゃろ。まてまて、ほうたるのはよさんか」

 穏やかでないことばに、さすがに慌てた。先程は和胤へ冗談で、雪だるまにくびまで突っ込んでほったらかす、などと言ったが、ただの冗談で本当にする気など毛頭ない。

 雪洞へとって返すと和胤の外套を脇に抱え、いったいどこへ連れて行ったんじゃ、と問いただす。そもそも、何事につけても根にもつということをしない惟之だから、和胤に弱点をつかれて散々な目に遭ったことなど、もうすっかり忘れたような顔でいる。

 「何をおっしゃいます、開戦前に閣下を拉し去るのに加担するなど、副官としてあるまじき行為です。ここはひとつ、閣下に代わって懲らしめたい次第であります」

 「イヤ、そこまでせんでええ。開戦前の行動についちゃァ、おれが迂闊じゃったけぇ、気が済まんのじゃったら、あとはおれを責めるべきじゃろ。山口ばかり責めてくれるな」

 案内しようとする若手参謀らに向かって、眉をさげて懇願するような眼差しを送りながら言う。ともすれば、兄弟のように深い惟之と和胤、ふたりの繋がりを知っている彼らは揃って、仕方がないですなあ、という表情を浮かべる。

 果たして和胤はどんな有様になっているかと、辿り着いてかれをみれば、まさに満身創痍。よほど硬い雪玉にしこたま撃ちのめされたのか、ぐったりとうなだれて雪のうえに腰をおろしてしまっている。

 「おい、山口。杉閣下が貴様のために嘆願してくださったぞ。これで勘弁してやるが、二度と閣下を蔑ろにするなよ」

 見ると丘の北側は雪が吹き溜まっており、もしそこに放り投げられたら、いまの和胤では容易に抜け出せないだろう。軍服も雨にうたれたように濡れそぼっており、副官の変わり果てた姿に、惟之は眉をひそめた。

 「山口、あそびは仕舞いじゃ。ひと風呂はいったら家に帰るぞ」

 和胤の傍に屈むと惟之は囁くように言って、脇に抱えてきた外套を和胤の肩へそっとかけてやる。かれがいつも、そうしてくれているように。
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| 変わらぬ青空のしたで・31―40話 | 06:12 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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