大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第参拾捌話

 すっかり警戒しきって、惟之は和胤から距離を置こうと、この小部屋の対角へ座りこむ。ついでに隅に畳んで置いてあったかれの外套をひったくって、手早く着込むと、ふたたび毛布にくるまった。

 「山口クン。先ほどは何やら、栗鼠のもじょか鳴き声がしもしたなァ」

 などと言って雪洞へ川上が顔を出す。いかにも人を食ったような笑顔を目にし、惟之は河豚のように頬を膨らませる。ついでにこどもじみたむかっ腹をたてて、只でさえ地の大きな声を更に張り上げた。

 「何ィ、そとでおれの喚き声を聞いちょったんなら、止めに入らんか!山口に手篭めにされたじゃろーがっ」

 「て…っ、手篭めになぞしちょりませんっ。何ちゅうことをおしられますか、閣下!」

 途端に、和胤は顔を朱に染めてうろたえる。もちろんからかっただけだが、惟之はそれを見て胸のすく思いであった。毛布で口もとを隠してほくそ笑む。

 ふたりの様子を交互に見ると、川上は太い声をあげてさも愉快そうに笑った。小机のうえに鍋と椀を置くと、入口を背にしてどっかりと腰をおろす。

 「おい、爺さん。おれの軍装はどうした」

 「恩田サンにあずけっきもした。どげんしておはんを奪い返すか、息巻いておりもした。さてさて、おいどまもうかうかしとられん。栗鼠どんはここで汁粉でも食べながら、おとなしゅうしてらんやよ」

 厳しい顔で問いただしてくるのを宥めるように、手を伸ばして毛布を被った惟之のあたまを撫でつつ、川上は和胤へ目配せして腰をあげる。つと立って、雪洞のそとへ向かう熊の身ごなしは、油断がない。そして、いかにも毅然としている和胤の後ろ姿に、惟之は頼もしさを感じずにはいられなかった。

 いまは敵同士という立場であったが、それでもつい、目を細めてしまう。川上に続いて少し狭い入口をくぐろうと、身を屈めかけた和胤へ、惟之は声をかける。これ以上、性質の悪い冗談を飛ばされてはかなわない、という顔で振り返るのを、意地の悪い笑顔で受け止める。

 「もし、恩田がおれを取り返したら、そんときゃァ覚えちょれよ。くびまで雪だるまに詰め込んで、帰るまでほうたっちょくけぇのう」

 「絶対に…閣下は渡しません」

 これも、半ばからかう意味もこめて言ったことだが、副官は存外、真面目な顔で切り返してきた。ただ負けたくないという意地から言っているのとは違う何かが、そのなかにあった。これに対して惟之は目をまるくして、くびを傾げる。

 妙なもので敵方の捕虜になっているというのに、和胤にそう言われると、まるでここで守られているような錯覚におちいる。

 「大した自信じゃのう。じゃけぇ、そっちには川上さんが居るちゅうて、安心しちょると足元を掬われて穴にはまるぞ」

 「では、白軍を負かした場合には、閣下は身の振り方をどう処するおつもりでありますか」

 「そんなものァ、考えちょらん。おれは恩田たちを信じちょる。…もし白軍が負けたら、煮るなり焼くなり好きにすりゃァええじゃろ。アア、擽るのだけは禁止じゃ。もししおったら、即刻副官を解任せる」

 毛布のなかから腕を出して、和胤へ指をつきつけながら言う惟之だったが、いかんせん丈のあっていない外套を着込んでのことであるから、袖口からは指さきがすこし覗く程度でしかなく、何とも締まらない宣言になってしまった。それに気づいて手をひっこめると、下唇をつき出してへの字に曲げてそっぽを向いた。

 「それでは擽れとおしられちょるのと同じです。第一そげな理由で、人事が解任を受理せるとは到底思えませんがのう」

 精悍な顔が、包みこむような笑顔になると、惟之はますます面白くない。

 「こんなー、おれをあれだけ責め苛んでおいてまだ足りんちゅうのか。はあ、ええけぇ。とっとと行かんかっ」

 雪洞の厚い壁から、ひと掴み毟った雪を手早く丸めて副官へ投げつける。それをひょいとかわして、まァ見ちょってください、と笑声で言い残して副官は表へすがたを消した。

 そとでは、喇叭が鳴り響き、整然とした号令の声があがっている。惟之はそっと入口まで這い寄って、くびだけを出してその様子を眺めた。

 「頼むぞ、恩田」

 敵軍の士気のたかさを目の当たりにして、一抹の不安が横切る。空をみあげると、相変わらずの曇天で、絶えず雪が舞い落ちている。
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| 変わらぬ青空のしたで・31―40話 | 18:45 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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