大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第参拾陸話

 白い目印をくっつけたすがたで、軍医長のもとへゆくと、新垣は万事心得たような顔で、仕方がないですなあ、と言って雪合戦への参加をゆるした。

 食後だけに、腹がこなれるまで散歩をしようと、惟之はそとに出ていった。天幕の張られたしたで、めいめいに寛ぐ兵たちの邪魔をしないよう、裏手から迂回しつつ雪を踏みしめて歩き出す。

 本部の食堂に居たとき、遠くの方で何やら一部隊だけ離れて固まっており、せっせと雪を運んでいるのを見て、気になっていたのだ。

 ゆるやかな丘をのぼってゆくと、見えてきたのは何とも大きな雪洞であった。目をまるくして見つめていると、できあがったそれの周りにいた将兵らが、惟之のもとへやってくる。

 「こりゃァ、風雅なことをしようる。しかし、立派なカマクラじゃのう。ちと、入ってみてもええかな」

 目を輝かせて言う上官に、この雪洞を拵えたかれらは僅かに誇らしげに、照れながらも嬉しそうに頷いた。

 よく見れば、部隊を指揮している少佐のひとりは副官の和胤と同期の参謀、そして親友でもある竹内だった。かれは和胤と入れ替わりで、川上の副官になっている。

 「のう竹内、川上閣下はどこへ行ったか知らんか?演習中からちっとも姿が見えんのだ」

 「このカマクラを作ったらどうかと、提案されたのは川上閣下でして。演習が終わるやいなや、自分たちの部隊が引っこ抜かれた次第であります」

 おもったより巧いものができて、川上も非常に喜んでいるという。それでいま、この作業に使用したものを担いで、しまいこみに行っているらしい。

 てっきり、雪に埋もれちょるかとおもったわい、などと冗談を言いつつ、惟之は一足先に雪洞のなかへ入る。そこは大人が四人ほど悠として座れるほど広く、雪がきれいになくなっている土のうえに、アンペラや毛布が敷かれてあり、小机まで置かれている。

 「おいおい、なんじゃ。雪合戦もええが、ここで汁粉でも食いながら見物と洒落こむほうが、ええ気がしてきたぞ」

 ちょこんと奥へすわると、もう動きたくなさそうな素振りをみせ、くるりとくびを回して雪の小部屋を見渡す。

 「それはそうと、おぬしらは午後の合戦に参加せんのか?恩田が籤をもって本部でうろつきようるけぇ、引きに行くとええよ」

 「それが実は―」

 竹内が何とも言えぬ困ったような顔をしていると、そこへ川上がひょっこり帰ってきた。惟之が片手をあげて、よう、邪魔しよるぞ。と声をかけると、意外な珍客をみたというような顔をしたあと、いつもと変わらぬ笑みを浮かべる。そんな川上の後ろには、和胤がいた。惟之を認めると、目を剥いて驚きを露わにしている。

 「杉閣下…、何故ここに居られますか」

 「そりゃァ、食堂に居ったときからここのようすを見ちょって、気になっちょったけぇのう。散歩がてら見に来てみたちゅうことじゃ。そがいに驚かんでもええじゃろ。まァ、三人座れるけぇ、ちょうどええじゃないか」

 まことに無邪気にそう言って手招きする惟之へ、川上と和胤は入口に立ったまま揃って、朱色の腕章と鉢巻をひらつかせて見せる。それでふたりが敵対する組に所属したとわかったが、意にも介さずけろりとしている。

 「おれァ、ここで見物するけぇ。参加はなしじゃ」

 「何を暢気に言うちょりますか。新垣軍医長から、閣下の参加が許可されたときいて、恩田大佐が雀躍りしながら白組の連中に触れまわって士気旺盛。本部で閣下のお戻りを待ちよりますのに」

 「何ィ、そんなら話は別じゃ。こげなとこへ居らんで、戻らんといかんじゃないか」

 その事情をきくなり、惟之はぱっと立ち上がった。そのようすをみた和胤が、苦笑を浮かべつつ入口をあけようと体をひねりかけたところで、川上の手が押しとどめる。

 「杉サン、そいはでけもさん。たった今から、こん雪洞はおいどまの本陣とないもした。図らずも乗り込んできた敵軍の将を、誰が黙って帰すまねをすっとお思いかな?」

 「何じゃとぉ、まだ合戦は始まっちょらんじゃろ。戦わずして捕虜になれちゅうのなら、武士の名折れちゃー。断固として拒否じゃっ」

 そう言って睨みつけるも、既に逃げ道はない。大兵の川上がのそりと中へ入る様子は、まるで冬眠する熊の如きであるが、この熊は穏やかな表情を崩さぬまま、錐のように鋭い軍師として、惟之の前に立ちはだかっている。

 飛んで火にいる夏の虫ならぬ、冬の栗鼠、などとからかったあと川上は、猛烈に怒らせている惟之の肩へそっと手を置いて、宥めるようにやさしく撫でる。

 「まあ、まあ。杉サン、ゆー聞いてたもんせ。こん度は、おはんがおいどまに拉し去られ、白軍は司令官が居らん状況に置かれるちゅうこつごわす。ここいへ、おはんを取い戻しに来さす積もりでおりもす」

 「なんじゃ、おれが敵陣に居座れる口実を拵えるちゅうわけか?川上さんもひとが悪いのう。しかしそれなら、一つ芝居を打たんと格好がつかんのじゃないか」

 それでやっと、惟之から怒気が抜ける。そのあたまから、軍帽をそっと取り上げたのは和胤で、いつものように外套を脱がせにかかる。

 「おはんの軍帽と外套を、いっとどま拝借しもんそ。おいが白軍をずんばい怖がらせっ行たっくっで」

 外套のかわりに毛布を掛けられ、和胤と一緒に奥へ腰をおろす。すっかり安心した顔で寛いでいる惟之を認めると、川上はにこにこして頷いた。惟之の軍帽と外套を小脇に抱えた川上は、どこか楽しげなようすで雪洞から出て行く。

 そのころ本部では、恩田が惟之の帰りを待ちかねていた。そこに朱色の鉢巻と腕章を帯びた川上がひょいと現れて、参謀たちが何事かと出ていくと、敵方の大将の手には、見慣れた上官の軍装の一部がのっている。

 「こいを見やんせ。おはんらの栗鼠閣下は、おいどまの本陣に拉し去っちょったで」

 逃げようとしたところを取り押さえて、見動きがとれないように丸めて放りこんであり、人質娘のようにおとなしくしている、などと大げさに言いふらしたものだから、恩田たちは俄然色めき立った。

 惟之がのんきに敵陣のあたりを散歩していたのは、なんとも間抜けな話だが、それを引いても開戦前に拉し去るとは、卑怯ではないか、と相手が将官であるにもかかわらず食ってかかる佐官もいる。

 「雪穴に栗鼠が丸くなっちょっと、もぜもんじゃ。おいはこいから、栗鼠どんをももじんたくりに戻りもそ」

 川上のからかいたっぷりなことばに挑発されまいと思って、熱のあがる思考をぐっとおさえる。恩田は思いつく限りの手を尽くして、惟之を奪還することを胸に誓いつつ、川上の背を見送った。
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| 変わらぬ青空のしたで・31―40話 | 14:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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