大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰捌拾伍話

瀧本翁をまじえて食後の歓談を長々と楽しみ、それではごゆっくりお休みくださいませ、と丁寧な挨拶を残してかれが洋館を辞していったあと。再びふたりは居間に於いて対峙している。

ふっつりと言葉を切らせて一人掛けのソファに体を沈めたまま、じっと見詰めてくるまなざしが、一段と妖艶な色を含んで微笑みかけてくる。嵩利はそうしてゆっくりと小首を傾げてみせる。

その次には間違いなく、濡れたような紅い唇がひらいて、挑発するも同然の言葉を紡ぐ筈だ。

―こいつめ。

眉間を険しくして、内心で吐き捨てた。

猛禽の鷲と違わぬ鋭い視線で突き刺すように見返し、不埒な唇から甘い毒に浸された涼しい声が響く前にと、鷲頭は席を離れるなり、嵩利の腕を掴み取った。

「来い」

渦巻く感情に任せ、強引にでも寝室へ連れてゆくつもりの、粗暴とも言える挙動だった。

―漸く、か…。

きつく腕を掴む鷲頭の手の感触に、寧ろ嵩利は安堵していた。不器用に押し込めてきた伴侶への愛情を、苛立ちや怒りの中に熔かし込んでいるとわかっている。だから、業火に焼かれても構わない。

気になっているのは、ここまで煽らなければ殻を脱げない鷲頭の心情だった。それを全て吐き出させてやりたいと嵩利はおもっている。

薄明かりに浮かぶ寝室へ入り、真っ白なシーツの掛かった寝台へ抛り出されて、嵩利はされるがままに身を横たえた。そこへすかさずにじり寄った鷲頭が覆い被さってくる。

横臥したからだに沿って、軍装越しに鷲頭の体温を感じ、ゆっくりとした静かな息遣いを感じた。この生意気な大佐をどう料理してやろうかと、容赦なく組み敷いて身を暴く算段を立てているところなのだろう。そうであってもやはり、懐かしく愛しいおもいが胸にこみあげてくる。

「きみが言ったこと、後悔するなよ」

低く囁いてきた言葉も、嵩利は敢えて冷たくあしらった。

「後悔…?何を後悔するのです」

「私を傍から離さないことを、だ」

その声が苦いものを含んでいる。鷲頭の手が伸びて、肩へ掛かる。

―どうしてそんな声で言うの。何を危惧しているの…?

ぐっと強く掴まれて仰向けにさせられるなり、唇を奪われる。

歯列を撫であげながら舌を割り入れて、ぞろりと口内を探りだす。押さえ込まれた受身では抗えず、易々と舌裏の付け根を捕らえられて執拗に擽られる。

「ん…、ふ…っ」

弱点を攻めたてられ、喉をひくつかせて声をあげる。鷲頭の腕に押さえ込まれた肩が小刻みに震えてしまうのも、止めようがない。抵抗を諦めて弛緩しきった舌を翻弄するとなっても、攻勢は緩まなかった。

息を継ぐ間だけは与えられたが、唇を重ねる深さと角度を幾度も変えられて、蹂躙は続いた。嵩利の弱みを知り尽くしているだけに、嬲るような舌遣いは最早拷問に等しい。

「は…、ぁ…」

どれだけ長い時間経ったのか。

くちづけに篭められていたのは、情欲だけではない。それは長い言葉のかわりだった。嵩利は喘ぐように息をして、鷲頭の腕のしたで指ひとつ動かせない。眸を潤ませて半ば恍惚としてはいるが、ただ甘さに酔っているわけではなかった。

離れた唇は笑みすら浮かべておらず、涙に滲んだ視界では鷲頭の表情まで捉えられないと、利かぬ腕をあげて涙滴を払おうとした。

「思い切れぬからこそ、最後にしたかったのだ」

重々しい鷲頭の声が、静かに低く耳に届いた。

手首をそっと掴み取られて、するりと指が絡む。その触れ方には、ここへ連れて来たときのような荒々しいものがなくなっている。武骨な掌で手の甲を押し戴くように包んでから、唇を落とした。口許に整えている髭が甲を撫でて擽り、労わるが如くふたたび腕を寝台のうえに憩わせる。

「どうして―」

手巾で目許を拭われながら、嵩利は涙声のまま問う。

「黙ってひとりで負って、行ってしまおうとするのです。ぼくは春美さんの半身ではないの?」

「半身だとも。…だからこそ、だ。わからないか?」

「そんなの…嫌ですッ」

初めて抱いたときも、この海の子はそう言って駄々を捏ねて、鷲頭を困らせた。

「では、どうする?」

愛児を寝かせつけるように身を寄せて、鷲頭は嵩利の頭を撫でながら訊いた。そつなくあしらうようでありながら、甘さも匂わせている所作で、ずるい、と嵩利はおもった。

「どうもしません。春美さんはずっとあの青山の家で、ぼくと居てくれればいいンです」

「あの家に家族が増えても、私はきみを独占せずにはいられなくなる。時にはこうしていたいと思うぞ。それでも、きみはずっと傍に居ろと言うのか?」

「何だ…そンなの。お得意の雲隠れで、どこかへ連れ出して呉れりゃァいいだけだべ」

浜育ちのぞんざいな口の利き方で不貞腐れながら言って、ぷいと顔を逸らせるのを、鷲頭は呆れながらみている。呆れながらも、どこかでほっとしている。

「それでいいのか?」

「しつこいなァ、もう。春美さんが素直に欲を出すのは、ぼくにだけ。我侭を言うのも、甘えるのもそうでしょう。いいじゃないですか、白髪のじじィになってもそれで。陽当たりのいい縁側に来て、この膝を枕に昼寝できるのは春美さんだけです」

「…そうか。…そうだな」

一体、何を危惧していたのかと思えば。この結末に辿りつくのに、ああでもないこうでもないと、ひとり森を彷徨って悶々と考えこんでいた己を思い返して、ため息をついた。

「でも―」

不意に声を落とし、鷲頭の胸へ頭を預けて甘え掛かる。

「でも、たぶん…ぼくはとうに、春美さんの気持ちに気づいていたのだと思う。大佐に進級して艦長に就いてから、今日まで二年半近くもずっと、こんなことしなかったでしょう…」

「うむ…」

「軍務に託けて、見ない振り、気付かない振りをしていたんです。だから、春美さんを責めることを、してはいけないんだ…」

それについて鷲頭は否とも応とも答えず、抱擁と共にもう一度、嵩利の唇を塞いだ。それは強奪ではなく、真に愛情を篭めた、ひとつに解け合う時間の始まりを意味するくちづけであった。
→【36話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・最新話 | 10:37 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

こんばんは

ああ、深いなあ・・・
二人の思いの絡み合うところの深さが切なすぎます。

特にラストの
>それは強奪ではなく
以下が最高に効いています。全体をここできゅっと引き締めてて・・・♡

| 見張り員 | 2013/08/25 21:51 | URL |

コメントありがとうございます

返信、大変遅くなりました。
いつも読みにきてくださって、ありがとうございます。

嵩利が妻をむかえようとも、このふたりは生涯こんな調子です(・∀・)
続きどうしようかなあ、といま悩んでいるところで筆がとまっていますが、最後まで書きますのでまた見に来てやってくださいませ。

| 緒方 順 | 2013/09/19 07:27 | URL |

はじめまして

数日かけて読み進めました。
物語にどんどん引き込まれてしまい、気付いたら深夜まで読み耽っていました。
続きが気になりますが、一読者として気長に待つことにします(つД`)ノ

| 読者 | 2014/05/19 01:04 | URL | ≫ EDIT

はじめまして!

お越しいただきまして、まことにありがとうございます!
もうほぼ1年ほど放置していますが、必ず続き書きますので、また思い出した頃に読みに来てやってください。

| 緒方 順 | 2014/05/25 12:16 | URL |















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