大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰漆拾玖話

余程の事態が発生しない限り、通常の流れでゆけば軍艦の艤装員長という立場に置かれた者は、そのまま初代艦長となる。

いま嵩利が置かれている状況を喩えるならば、契約した新築の貸家が落成するのを待つ店子のようなもので、店子とひとつだけ違うのは艤装員長が艦首脳部の居住区内部の配置などについて、細かいところまで注文をつけられるということだった。

榛名での日々を思い返し、乗員たちが少しでも快適かつ効率的に動けるようにするには如何したものかと、尉官佐官合わせた艤装員たちからの提案も盛り込んで、そこはすんなりと進んだし、出来上がった計画書は一緒に乗組となる予定者たちの間でも概ね好評である。

あとの問題は、艦長や長官公室、各科長室と士官室などの内装に残された。

壁や床のみならず、調度品は何を配置するか、絨毯の素材や色は如何にするか、照明はどのようなものを選び、何処に取り付けるか―。

何しろ聯合艦隊の旗艦となるだけあって、諸外国国賓や各国海軍将官なども訪問する区画なので、それらを踏まえて恥ずかしくないものにせねばならない。そういった選定が一手に任されることもあって、大いに頭を悩ませる段階に突入している。

「鷲頭くん、鷲頭くん」

と、いくらか急いている様子をみせながら、午後を過ぎたあたりに落合が事務所へやってきて、運用科と主計科の艤装員と打ち合わせをしている嵩利を引っ張り出すように連れて廊下へ出る。

「何かあったんですか、工廠長…?」

「問題は何もないから、そんな不安そうな顔をしないでくれ。ただ、長官がくびを長くしてきみが来るのをお待ちだから、今日は早めに切り上げて必ず訪ねるようにな」

「…長官が?」

赴任してきてから鷲頭とは一切接点のない状況であるから、その理由を問いかけるかわりに落合の顔をまじまじと見詰める。

「長官が赴任された日に挨拶に伺ったんだが、そこできみがどんな様子でいるか訊かれて、入船山から出たがっていたことをお伝えしたんだ」

「あの話についての言動は、軽率に過ぎました」

「ウン、長門は機密の塊になるからな。でもそうは言っても何か思い立って、数日だからとチョイと起居する場を移すかもしれないだろ?それはまずいんでな、いっそのこときみを公邸で預かって貰えないかと長官に頼んだのさ」

「そうでしたか…」

「それをきみに伝えるのをすっかり忘れてしまっていた。先刻用があったついでに挨拶に伺ったんだが、昨夕になっても来ないが一体どうなっとるのか、と訊かれて思い出した次第さ。些細な連絡でも疎かにしてはいかん、と睨まれてしまったよ」

面目ないという落合の表情を認めて、嵩利は申し訳なく思いつつも手にした予定表をひろげて見せた。追記が赤鉛筆の文字によって足され、紙面を埋め尽くしている。

「本日の夕刻はちょうど他の主計科員が見積もりを持って帰ってくる頃でして…。直ぐに折衝にあたれば予算に余裕が出るような状況なので、難しいかと…」

「あァ、調度品の発注が云々と今朝から言っていたアレかね」

「そうなんです。ですので鎮守府にはお伺いできません。遅くなるかもしれませんが、長官公邸に直接お伺いしますとお伝えください」

「事情が事情だからな、執務室に戻ったらすぐ連絡しておくよ」

「宜しくお願いします」

そのやり取りが済んで室内へ戻ろうとしたとき、すぐ傍の階段をあがってきた吉井がひょいと廊下へ顔をだした。陽焼けした貌のなかで鼻のあたまが赤くなっているのがわかる。

「鷲頭くん、まだ打ち合わせは終わらないか?」

「遅くても夜九時には、目途がつきます」

「よし、それなら今週中に居住区に着手できるよう手配しておくから、終わったらすぐに連絡してくれ」

冬到来となっても、あちこち奔走していて防寒着に用はないと軽装のまま動き回っている吉井だが、さすがに今日は寒かったらしく、そこで盛大にくしゃみをした。

「や、ちょっとやせ我慢をし過ぎた。今日から外套を着るかな」

そう言って巻いた設計図を小脇に抱えなおして笑顔をみせると、また身軽に階段をおりてゆく。

もう艦上ではデッキの基礎となる鉄板を貼り始めて、兵装工事の計画も着々と進んでいるらしい。絶えず人の往来があり、なんとなく隔離されているような感じのあった事務所も、やっと生き生きしてきている。

日が飛ぶように過ぎるなかで改めて思い返してみると、嵩利が呉へ赴任してからもうひと月半は経っている。鷲頭が長官に赴任したのも、それより四日か五日違うだけである。

規則や軍規には口喧しい鷲頭が、今日まで“身柄預かり”について催促してこなかったということは、嵩利を少しは“信用”してくれていることのあらわれと受け取ってもいいのかと思ってしまう。

―春美さん、落合工廠長にどんな顔をして催促したんだろう。

そのときの鷲頭の表情や心境を想像して、ほんの少しだけ擽ったい気持ちになる。
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| 綿津見の波の色は・171―180話 | 16:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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