大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰漆拾陸話

前日までことあるごとに突かれていた、これまでの悪癖に対しての諫言がぴたりと止んでいるのに驚きもし、気味悪くもおもった。城内は打ち合わせの最中でも訝しむのを隠そうともせずに、対面している鷲頭をまじまじと見詰めている。

「何ですか、不躾な」

間近に居るわけでもないのに、鷲頭は城内から向けられる視線を避けたそうに、僅かに身を引いて眉根を寄せる。

「フーンそうか、わかったぞ。嵩利くんがこの帝都から離れたンで、ひとまず説教は勘弁してやろうという訳だネ。違うかい?」

と、一人合点して訊いてくる。脇息に凭れて寛いでいる姿は羅漢さんにも似て、のどかな雰囲気を醸しだしているが、対照的に鷲頭はぴしりと背筋を伸ばして端座している。

「これからは嵩利くんと、かれを名で呼ぶことにするよ。義理の息子なンだからそれくらいはいいよネ」

にこにこと嬉しげに笑みながら言う。まったく反省の色がない城内を目の当たりにした鷲頭は、昨日も嵩利から念を押されたことを思い返し、懸念を放棄するときめて却って良かったのだと、自分を慰めた。今後も何を言おうが、城内には効き目は見込めないに違いない。

「…どうぞお好きになさってください」

投げ遣りな物言いになったのは気張っていたものが崩れた所為でもある。ぐったりと脱力したい心持ちではあったが、城内の前で情けない態度は取りたくなかった。

「お父様、入ってもよろしうございますか?」

「ウン、いいよ」

ふわりと柔らかな声がして、城内が答える。

「いらっしゃいませ、鷲頭様」

スッと襖が開いて、千草色の和服に象牙色の帯という落ち着いた和装の顕子が敷居の向こうで膝の前へ指を揃えて一礼する。顔を上げざま、鷲頭に向かって笑顔を見せた。盆にのせた淹れたての紅茶を運んで、ふたりへ差し出す。

「ありがとう」

ほぼ同時にふたりの父は娘に言って、カップを取りあげる。香りも楽しみつつ喉をうるおした。最後の詰めと、話し合いを終えたあとの一服だけに、飲んだあと思わずほっと息が漏れる。

「さてと。これで諸々の支度は殆ど整ったし、あとはきみたちが帰ってくるのみだネ」

「お父様、お止しになって。あと、たったの二年ですのに…。時はあっという間に過ぎてしまいますわ」

ため息と共に言って、何とも複雑な表情をみせる父を顕子は宥めた。嫁いだあと寂しがる父の姿を見越しての言葉でもあったから、優しさがこもっている。

「待たせる身としては、そう言ってもらえると有難い」

父と違って厳粛そのものといった印象が強い鷲頭だったが、それは初めだけで、鋭さが消えた目元に浮かぶ笑み、声音のなかに在る鷲頭の思いを、顕子はきちんと受け取っている。

「あーァ、鷲頭くんともお別れか。それじゃ、ぼくも明日から真面目に学習院へ通うことにしようかナ」

「学習院院長の推薦は、元を辿れば陛下のお言葉からというのに、なんですかその態度は」

「だって、やっぱりぼくは…海が好きなンだもの…」

鷲頭が部屋を辞そうとするときに城内が思ったのは、自分のなかで海軍士官の匂いをまだ懐かしいものにしたくない、という気持ちだった。ここで現役の鷲頭と軍務について語らったわけではないが、かれに漂う独特の緊張感に触れられて、やはり嬉しかったのだと気づいたからだ。

「城内さん…?」

いつもと様子が違うのはすぐにわかった。鷲頭が怪訝におもって問う前に、城内はぷいと横を向いてしまった。ホンの何秒かの間のあとに、お茶をもう一杯頂けるかな、と言って顕子へ顔を向けたときにはもう、普段の温顔であった。

―これは、那智さんたちにもひと言伝えておくか…?

海軍から離れたうえに、最愛の末娘が手許から離れるとなれば、そこには相当な寂しさが含まれているに違いない。鷲頭は少しだけ城内に同情を寄せつつ、明日から発つまでの間の予定を少し変え、盟友たちを連れてここを訪ねてみるか、と心の内で呟いた。
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| 綿津見の波の色は・171―180話 | 18:03 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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