大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰漆拾肆話

「鷲頭くんは、何時になったらぼくを信頼してくれるの?」

居室で鷲頭と対峙した城内は憂鬱そうな声で訊いた。心底から沸きあがる嘆きを長いため息に乗せつつ脇息に凭れ掛かると、背筋を伸ばして端座したまま身じろぎもしない鷲頭を見詰める。


海軍の務めを全うして退官の花道を歩き去っていった城内の背を見送ったとき、かれの歩んだ日々を知る者ならば、こもごもの感慨を覚えずにいられなかっただろう。鷲頭もそのなかの一人であり、今もなお、かれに対する態度に頑ななものを抱いている。

放埓な振る舞いを隠そうともしなかった若き日と、いまの城内を比べてみれば確かに、嘗ての乱行は鳴りを潜めたとはっきりと言い切れる。そして、若気の至りが齎した影響から成る関係が全て清算されていても、人を惹き付けてしまう天性の気質までは消えない。

歳を重ねるごとに、様々な功績と権力と人脈とが城内の“天賦の才”のうえに積みあがってゆき、こうして海軍を退いたいまも、本人がそれと意識していなくても、城内にかかわった周囲の人間は大いに影響を受けてしまうのである。

無邪気に周囲の人間を振り回しかねない性質が今更になって直るとも思えないが、今後の嵩利のためにも自覚してほしいと、鷲頭は懇々と説きに参上しているのだ。ここで諦めてしまっては、父親失格である。

「兎に角、ご自身の持つ影響力を自覚なさらない限り、あれが顕子嬢を妻に迎えるとなっても、あなたにはこれまで通りの距離を保って頂きたい。あれこれと陰ながら世話を焼きたいところでしょうが、それも控えて頂きたい」

いまの嵩利が城内に振り回されるようなことはないにしても、それによって周囲にどう思われてしまうかが問題なのだ。これから海軍を背負ってゆく者のうしろに、いつまでも先達の影が見え隠れしているようでは示しがつかぬというのもある。

「きみだけ独り占めして、ずるいヨ。ぼくは義理の父親になるンだから、そういう面できみと同じくらいにご子息と接したっていいじゃないか」

「あなたと私では、立場が違います」

「理詰めで圧すなんて、ずるい」

「拗ねている暇があるなら、少しは真剣に省みてください」

「拗ねてなんかいないヨ」

父親の居室でこのようなやり取りが続いているのを、顕子は茶の差し入れをする度に耳にしている。嵩利がふたりにいかに大事にされているかよくよく感じ取れるものであり、こうして憚りなく嵩利を取り合う様子を、微笑ましく思っている。


そこへ、赤煉瓦を退いた嵩利が訪ねてくる。今後の軍務を見据えると婚礼までかなりの間をあけてしまうにもかかわらず、顕子は婚約を望んだ。お帰りを待っていますと言うかの女がいじらしく、こうして短い時間でも会いに来ているのだ。

玄関のホールに出迎えてくれた顕子がにこにこ笑っているのを認めて、嵩利は困った顔を向けて訊いた。

「…またですか?」

「ええ、今日もご相談をなさってますわ」

そのまま、顕子に導かれながら声と足音を忍ばせて城内の居室へ向かうと、その道なかばにしてふたりの会話が聞こえてくるが、とても“ご相談”と呼べるような内容ではない。しかしそれは父親の立場としてみれば言い合うのも無理はないと思えるものだった。

「どうなさいます?」

「…どちらの言い分も理はあると思いますので、あとはどちらかが折れるのを待つしかありません」

敢えて止めずに好きなようにやらせて置けばよい、と新見に言われたことを思い出し、嵩利は道を引き返そうと踵を返しかける。

だがそのうち、どこからどのように話が飛び火したのか、鷲頭はいつぞやの、“呉鎮長官付副官抜擢の件”を持ち出してくる。嵩利はこれについては詳細を知らず、このふたりの間で片付いていたことであったから、つい話に聞き耳を立てた。

「例の車内でのことを言っているなら、あれはホンの挨拶なんだよって何度も言ったよねえ?」

「―そこです、あなたが自覚せねばならぬ所というのは。あの時、あれを呉へ遣ることに徹底して抗議したのも、今と同じ理由です。私の見ていないところで、あれの唇を盗るくらいのことならば何ということもないと思われては困る。これからはもっと―」

真剣そのものの口調で諭す鷲頭の言葉を最後まで聞かぬうちに、嵩利は顔に熱が上るのを覚えながらとっさに顕子の手をとると、引き潮のような勢いでそこを立ち去った。

別室に引っ込んでソファに腰をおろしたが、痴話喧嘩同然の父親同士のやりとりを思い返すと、即刻止めに行きたくもなる。

「白状しますが…あれは今に始まったことではなく、父と城内さんはもう長年ずっとあんな調子なんです」

「では今になったからといって、どちらかが折れなくても宜しいのではありませんか?鷲頭様が、おふたりから大事にされているということなのですから」

その告白にも全く動じない。器の深さは城内のそれを受け継いだのだろう。

慈母の如き笑みを浮かべながら説いてくる顕子へ、嵩利はまだ熱の引かぬ顔を隠すように片手で覆い、途方にくれた仔猫のような眼差しを送った。そのまま暫く見詰めあっていたが、嵩利は現状を受け入れるという意思を含めて、観念したように頷いた。
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| 綿津見の波の色は・171―180話 | 22:50 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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