大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰漆拾弐話

内々の退官祝いを終えた翌日。嵩利はふたたび城内家を訪れ、当主の居室に通されていた。

「てっきり書斎に行くのかと思っていたよ。何か訊きたいことでもあるの?」

「いえ。今日は、それよりも大事なお話があります」

「海軍のことなら、もう諾いてあげられないからネ」

と、ふたりの会話が始まって、まさか城内はこのあと居ずまいを正した嵩利の口から、

―顕子さんとの結婚をお許し頂けませんでしょうか。

などという言葉が出てくるとは露ほども思っておらず、手にしていたベネチアングラスを取り落として高価な絨毯にワインの染みを拵えてしまったが、そんな粗相などいまは些細なことでしかない。

末娘の一目惚れから端を発して今日まで、あたまを悩ませ続けていた一大事。傍目には表面は普段と変わらぬ風であったが、内心では気もそぞろ、ややもすると家のことも、己が身に託されようとしている次の御役目にも、全く手がつかぬような有様であった。

それらを踏まえると、あまりの急展開に直面した城内はとっさに言葉を返せなかった。どのくらい呆然としていたか分からない。何度か瞬きをして、眉間を指で揉み解してから漸く、目の前で手をついて頭を下げている嵩利を認める。

「鷲頭くん、ぼくに頭を下げる理由はないよ。ホラ、顔をあげて」

「大事なことですから、城内さんが返答を下さるまで―」

健気に言う嵩利がいじらしく、またもどかしさも相まって途中で言葉を遮ると嵩利の手を取って体を起こさせた。城内はそのまま、嵩利を抱きしめて言った。

「いいの。ぼくはずっと待っていたんだから、きみからそう言ってくれるのを」

「え…ッ、それは、いったいどういうことです?」

「渡英前にここへ来ていたきみに、顕子が一目惚れしちゃってネ。でもきみはあっちに行っても相変わらずで…。きみにその気がないのにぼくが無理に話を持っていくのも、おかしな話でしょ?それに、そんなことをしたら顕子が一番悲しむ。それだけは避けたかったから、ずうっと待っていたんだ」

「そうだったのですか…。そんな状況だったとは思いもしないで…すみませんでした」

「いいんだ、もう。過ぎたことだもの」

元のように対峙すると、城内は不意に物憂げな眼差しを漂わせて呟いた。

「問題はあとひとつあってね。家と家のことなんだ」

「それは、父もよく相談してこいと言っていました」

「きみが家を継ぐから、最終的な判断はきみに任せるつもりなのかな、鷲頭くんは。それで、何て言っていたの?」

「懇意にさせて貰っているとはいえ、相手は子爵家。爵位も持たぬ鷲頭家に令嬢を嫁がせるというのは、城内家にとって良いと言えるかどうか、ということを気にしていました」

その答えに、城内は仏頂面になって頬を膨らませた。

「フーン。それが本音だったら、何て水臭い話だろうね。でも思うにそんなのはただの建前だネ。いま家と家の問題と言ったけれど、これは鷲頭くんとぼくの問題なんだ。きみの父御は、ぼくン家と姻戚になるのが嫌なンだよ。だって彼、ぼくのこと嫌いなんだもの」

「それは…ぼくには分かりかねます…」

「きみの父御に嫌われるについては、ぼくに非がある。だからこの件については今夜にでも鷲頭くんを招んで、よくよく話し合わないと。これだけは父親同士の問題だから、きみは心配しなくていいんだよ」

城内と鷲頭の間にどんな経緯があって今に至るのか、嵩利は知らない。めったなことでもない限り、他人を批判したり貶すような言葉を鷲頭の口から聞いたことは、今まで殆どないからだ。

「ま、それは置いておくとしてだネ」

打って変わって、城内は目を輝かせながら身を乗り出した。

「いったい、どういう風の吹き回しで顕子を貰う気になったの?」

ふたりの間に紡がれていた運命の糸が、どのような経緯で結ばれたのかを詳らかに説明せよと言われても、こればかりは嵩利と顕子の心の通い合いの末であって、言葉で全てを説明しきれるものではない。

顕子にとってこの日の装いは、他のどんな豪奢な品よりも勝る生涯の宝となったし、嵩利はこのとき着ていた海軍大佐の礼装を、進級する度に仕立て屋に出して、階級章から何から全て付け直し、大将で予備役に編入されるまで大事に袖を通して身につけた―。

そういった類の深い想いがこもっている。

だから嵩利は、もうすぐ義父になるであろう城内へ茶目の効いた笑顔を向けて、ただひと言、

「それは内緒です」

と言うにとどめたのだった。
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| 綿津見の波の色は・171―180話 | 21:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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