大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰陸拾捌話

士官将校みな貴族という、ロイヤル・ネイビーの使命感の強さ、優雅さといったものに触れて、少しは落ちつきを身につけるとか、何か典雅さのようなものの片鱗でも漂わせて帰ってくるかと、周囲は少なからず期待を抱いていたのだが、大正八年の十月に英国から帰国した嵩利は、相変わらず眸の輝きは少年のようであったし、片瀬の海辺のにおいがまるで薄れていなかった。

しかし、学ぶべきことは確りと学びとってきている。

英国の工業力や海軍が国にとってどれほどの影響力を持っているかを目の当たりにして、嵩利はますます深く新たな海軍のありかたについて模索するようになっていた。

嵩利に遅れること約半年、今度は守本が米国へ渡り、そこで二人は随分と手紙の遣り取りを交わした。

列強各国からみた日本がどのようなところへ位置づけられているか、その日本に於ける海軍がどのように見られているか、そういった内容が殆どで、実際に英国、米国へ身を置いて彼の地を見聞きしていることもあって、冷静に祖国日本を見つめることが出来ている、と互いに思うことも少なくなかった。

英国を発って横須賀へ着いたときに、戦艦長門の進水式及び艤装へ向けての予定などが耳に入ってきて、嵩利はじぶんが新型戦艦の艤装員長に任ぜられることを知った。

竣工後にすぐさま横須賀籍、就役となる長門だが、いまはまだ呉造船所である。何に於いても、只の軍艦とは一線を画す艦であり、その艤装員長ともなれば大役であるからして、気を引き締めねばという思いと、すぐにでも呉へ飛んで行って、完成に向けて長門に携わりたいという逸る思いとが、嵩利の心中に見事な波模様を描いている。

それらの葛藤をあからさまに面へ出すような、そんな迂闊さは流石になくなったものの、呉へゆくまであと少しの間だというのに、青山の自邸に居ても手帳と万年筆を手放すことはなく、自室や居間、果ては前庭の縁側にまで、付箋のついた読みさしの書籍が点々と置かれて、嵩利の落ち着きのなさは、それらが如実に物語っていた。

そのような日々であったが、今日は少し違っている。

いつものように、日向ぼっこをする猫さながらにして、嵩利は自室から廊下を出てすぐ、中庭に面した縁側で寝そべっている。その手には洋書、耳に万年筆を挟んで、分度器と三角定規とコンパスが、地図の端、肘枕の傍にキチンと並んでいる。

よく晴れた晩秋の穏やかな昼下がりで、家の中は物音ひとつしていないほど静かだった。何か、ひとつのことにじっくり取り組めそうな環境であったが、なかなか頁を読み進めずにいる。嵩利は軒下から青空を見上げながら、しみじみとため息を吐いた。

「早く帰って来ないかなァ…春美さん…」

渡英の期間を含めると、一年半は顔を見ていない。その鷲頭が上陸休暇で一週間ほどここへ帰ってくる。今日か明日、と届いた手紙には日付が認めてあった。

落ちつかぬ気持ちを宥めようと、自室に戻って本棚を眺めて、ふと三冊の洋書に目をとめた。随分前に城内から拝借していたものだが、きっと役に立つから気の済むまで使いなさい、という言葉に甘えてそのままである。

四十年以上の長きに渡って務めを果たしてきた城内は、今週とうとう海軍を退く。

かれは退官後も今までと変わらずに、嵩利を含めた後輩たちの行く先を見守ってくれるだろう。しかしどこか、安心して温まっていられた木陰が、忽然としてなくなってしまうような寂しさが、心の片隅にうまれるのは否めなかった。

程度の差こそあれ、このような気持ちを抱くのは、嵩利だけではない筈である。

無事に退官を迎えたかれを労う祝いの席が、その日のうちに城内邸で設けられる、と、そのことについてだけは、英国に滞在している最中に鷲頭からの便りで知らされていた。招かれるのは気心の知れた仲間だけで、華やかな席を好む城内にしては珍しく、慎ましい規模にとどめるらしい。

三冊の洋書の背表紙を見詰めながら暫し思いを巡らせたあと、先刻縁側へ持ち出していた洋書や地図を携え、居間へ持って行ったが、それらは結局座卓の隅、安楽椅子のクッションのうえなどに点々と放って置かれる羽目になり、嵩利は鷲頭の帰宅を待ちわびる気持ちを、庭先へ出てあてもなく歩きまわることで紛らわせた。
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| 綿津見の波の色は・161―170話 | 23:01 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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