大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰陸拾漆話

半年後には海軍を退く身で、殆ど隠居のような位置に落ち着いている城内はいま、軍事参議官という肩書きであり、現海相の相談役も兼ねて霞ヶ関の赤煉瓦へ登庁している。

欧州大戦が終息し、独逸領であった南洋諸島の委託統治の為に、視察調査の艦隊を派遣する回数も減ってきたものの、今度は講和条約へ向けて調整が始まり、なかなかに海軍省内部は慌しいままである。

それらを横目にしつつ、海軍大臣執務室を訪ねるのが、このところ毎朝の日課であった。傍から見れば長閑なものであるが、ある意味で城内は、軍務よりも大変な問題を抱えており、普段の温顔にも浮かぬ色が見え隠れしている。

「よゥ、お前ェさんが困って右往左往してるのを見物してるのにも、そろそろ飽きてきたぞ」

と執務室へやってきた城内へ言いつつも、執務机におさまっている那智は、肘杖をついた恰好でにやにやしている。

「まったく…少しはぼくの気持ちを酌んでくれたっていいじゃないか。きみは嫁に出す娘が居ないから、そんなに暢気にしていられるんだ」

「そいつァ聞き捨てならねェな。こちとら、目に入れても痛くねェくれえの可愛い姪がいるぜ?」

「姪と娘じゃ、全然違うヨ」

ほぼ常に微笑を湛えている口元が、珍しくへの字を描いて拗ねたような呟きを漏らす。まったくの他人事のようにして成り行きを眺めている那智へ、城内は恨みがましい眼をむける。

「晴れて海軍を退くってェのに、早くしねェと、秋なんざあっという間に来ちまうぜ。藤原さんの推薦で、次の学習院院長にってェ話も舞い込んで来てるンだろ?」

なにしろ内閣総理大臣に就いたことのある身で、その城内が家庭内の問題―それも娘をひとり嫁がせるくらいの―で妙にもたもたして、せっかくの推薦を棒に振るような事態になっては、みっともないことこの上ない。

「まァ他でもねえ、あの顕子ちゃんの嫁入りとなりゃァ、お前ェさんが悩むのは無理もねェけどな。些か、度が過ぎてると思うぜ」

「そうは言ってもねェ…」

言葉を濁して黙りこんでしまった城内は、執務机の隣に置かれている椅子へ大儀そうに腰をおろした。ここまで深刻に悩んで困っている様子をみたのは初めてかもしれなかった。

「城内、一体ェ、何が問題なんだィ。もう顕子ちゃんは恙無く暮らしてるンだろ?釣書を出すのも躊躇うような事情がまだどこかにあるってェのか?それとも、先方に問題があるのか?」

渦中の人である顕子を、那智はよく知っている。幼少の頃の、儚げな病がちだった少女を、身内の娘も同然にして案じていたし、その後の成長ぶりを知るにつけ、ほっと安堵したものだった。

顕子はことし二十三歳である。欧州留学の経験もあり、教養、人品、器量の申し分ない淑女は、さる高名な女学校から教壇に立って欲しいと乞われているほどだ。

「どこから嫁に呉れってェ話が来てるのか知らんが―」

「呉れとは言われていないヨ」

「何だィ、そりゃァ」

「どうも顕子がネ、ひと目惚れしちゃったみたいなんだヨ」

「あァ?妙な虫がつきそうな社交場には、一切出さねェんじゃなかったのか。で、その相手ってのが問題なのかよ」

「いやァ…問題はないンだけどねえ」

「おい、いい加減にしろィ!誰だそいつァ」

およそ、海軍省の―海相の執務室で交わすような類の話ではない。那智の声が廊下まで響きそうな程高くなって、城内は慌てた。

「ここは恥を忍んで、きみに相談するから…。もう少し声を抑えてくれないかネ」

「手前ェが、そンな間の抜けた答えを寄越すからだろうが!問題ねェなら、そいつに嫁がせりゃァいいじゃねえか。で、誰なンだよ?」

「鷲頭くん。…ご子息のほうネ」

ぽつん、と言った城内の答えに、那智は機関銃の如き勢いで返していた言葉をぷっつりと途切らせた。椅子の背凭れに体を預けて天井を仰ぎ、暫し沈黙する。

「あれか。あいつが英国に発つ前に世話しろって頼んだ時に、か」

やおら、深々とため息を吐いて、那智は思い当たったことをぽつりと呟いた。

「うん」

鷲頭嵩利の海軍での精励ぶりは、誰もが一目置くほどで、その思考回路の八割が海軍で構成されている、と言っても過言ではない。嵩利はいま、英国で駐在武官の任についているが、実に生き生きと留学生のようにして過ごしている。

充実した日々の様子を書き綴った、報告書を兼ねた書簡を、那智も城内も受け取って読んでいるから、そのあたりの様子は手に取るようにわかる。

「なァ…、あいつが今更…妻を娶るってェ方向に意欲をふり向けると思うか?」

「ぼくもそう思ってねえ。鷲頭くん―、あ、父御のほうネ。かれに訊いてみたけど、私信の方にすら、嫁取りのよの字も書かれていないらしいヨ」

「で、帰ってくるまで、あと半年か。お前ェさんの退官祝いの席に引っ張り出して、うまい具合に引き合わせてみるしかねェな。それからが勝負になるンじゃねえか?」

「やっぱり、それしか手の打ちようがないよネ」

才媛としてきこえている顕子を、いつまでも周囲が放って置くはずもないし、片や嵩利は、艦長をつとめる海軍大佐である。お互いに会うことの出来る機会はそう多くはない。果たして嵩利の縁が顕子に繋がっているかどうか、あとは天のみぞ知るところである。
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| 綿津見の波の色は・161―170話 | 21:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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