大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰陸拾肆話

襷がけをした鷲頭の後ろ姿を、嵩利は飽かず見つめている。漕ぎ出した和船は、凪の海を滑るようにして進んでゆく。

艪を慣れた手つきで扱い、船を進ませることに黙々と専念している鷲頭の、ゆったりとした体の動きや、時折こちらを振り返る表情には寛いだ穏やかさがある。

懐かしい島影へ眼を向けて船縁に肘をつくと、凪の海面を切って進む船が作る白波の飛沫が間近で撥ねる。それは目の前で、春の陽光に透かされて水晶のような輝きをみせた。

ところどころ桜色に覆われた江ノ島が近づいてきたとき、嵩利の心を強く敲くものがあった。このちいさな島は、千早家を鎌倉時代以前から先祖代々、見守ってきてくれた綿津見の神が憩うところである。

「あの…、春美さん」

「どうした?」

片瀬の浜辺から漕ぎ出して、舟はもう島まであと半ばの距離である。鷲頭は艪から手を離すと、不意に神妙な顔つきになった嵩利を訝しげに見詰めた。何か言い出したいようだが、唇を結んで僅かに俯き、逡巡をみせている。

嵩利が腰をおろしている船の真ん中まで危な気なく近づくと、隣へ腰をおろした。

「今朝から何か考えているようだったが、そのことかね?」

「…はい、その…。そろそろ、嫁を貰いたいのです」

まだまだ、嵩利自身も若いという気持ちでいるし、実際に若々しい印象が強いが、ほんの少しつま先立ってみれば、来年には不惑を迎えようという年齢である。佐官の―それも大佐にもなって嫁をとっていないのは、海軍でも数えるほどしかいない。

年を追うごとに、昔から面倒を見てきてくれていた上官や将官が、やきもきしながらもその行く末を見守る、といった風になってきているのは、嵩利も感じていた。

それにあの時―戦艦長門起工式のあった日―、嵩利たちの“嫁探し”をはっきりと口に出した城内に対して、鷲頭が賛成の意を含んで頷くのを見ていた。ただ鷲頭は、それもこれも嵩利が軍務を大事と思ってのことなのだからと、これまで何も言わずにいただけである。

「そうか。やっとその気になったか」

鷲頭の安堵したような表情を、嵩利はまっすぐ見返せないでいる。そうは言ってはみたものの、下手をすれば今年中には日本を離れて、英国か米国へ駐在武官として赴任するかもしれない身なのだ。とても一年や二年の間に嫁を貰えるような状況ではない。

「…どうしましょう」

思わず、そんな言葉が出た。

迷子にでもなったような顔つきで、傍らの鷲頭へ指針を乞うような眼を向ける。

「こればかりは慌てても致し方あるまい。しかしな、縁はどこで繋がっているか分からんぞ。きみは今、きみが成したいと思うところを進めばよいのではないか?」

若しその機会がないまま時が過ぎるようであれば、またその時に考えればよい、と言って、鷲頭は嵩利の短い髪を戴く頭をやさしく撫でてやった。

「はい…春美さん…」

「今度は、この舟に家族を乗せて、あの島へ詣でたいものだな」

千早家から続いて鷲頭家へも、綿津見の加護が受け継がれるようになればと、嵩利も同じことを思っていた。あの家に、新たな温もりの増す日が来るだろうか、と青山の緑静かな邸を思い返しつつ、嵩利はすぐ傍の鷲頭へ身を寄せて、祈るような気持ちで島を彩る桜を見上げた。
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| 綿津見の波の色は・161―170話 | 01:42 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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