大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第佰陸拾参話

昨晩は千早一族あげての盛大な宴会となって、“無沙汰”をしたツケを支払うかたちで、杯に注がれる酒という酒を飲み干す覚悟でいたのだが、嵩利がその窮地を救った。

何とか人並み以上には飲めるようになった嵩利が、“そのツケなら、ぼくにも払う義務があります”などと言ってほぼ半分ちかくを受け持ったのである。

しばらく酒量を控えていた鷲頭の身を案じての助太刀だったが、酔い潰れるような醜態もみせず、宴の最後まで一度も席をはずさなかったし、客が帰ったあとに床まで連れて行かねばならないとかいうこともなく、酔いが回ったのを隠している様子もなかった。

眠るまえに、明日は少々二日酔いになっているかもしれませんと言って、面目なさそうにして浮かべた照れ笑いは、いつもの嵩利らしいものだったが、ここへ帰ってきてからの振る舞いや言動の端々に、しっかりとした芯があるのを鷲頭は確かに感じとっていた。

大尉、ともすると少佐の時まで、どこか手を差し伸べてやりたくなるような危なっかしさがあった頃が懐かしくおもえるほどだ。そういった意味での伴侶の成長は嬉しく、ひとりの男として頼もしく眩しくもみえてくる。

まったく、あの宴会の賑やかさが嘘のようだな、と鷲頭は明けたばかりの空の下で、前庭から海を眺めながら微笑を浮かべる。

―船を出すには、ちょうど良い凪ぎだ。

昨晩予想したとおりの天候であった。鷲頭はもう一度海へ目を向けながら満足げに頷く。

あたりがまだ、しんと静まり返っているのは、そよとも吹かぬ風のせいでもある。周辺には朝靄がかかっており、肌を撫でる空気はひやりとしていたが、それには今日も穏やかな春の晴天となる予感も含まれている。

鷲頭はもう床から起き出して、和服に袴をつけた姿である。昨晩の宴席で最後まで酒を酌み交わした、腰越分家の親方のような存在である千早邦宝へ頼んで、この早朝のうちに和船を一艘借りにゆく約束をしておいたのだ。

その船に嵩利を乗せて、江ノ島まで漕いでゆこうと考えていた。足音を忍ばせて庭石を踏みつつ、千早家をあとにする。なだらかな坂が続いて海へとくだってゆく道を、ゆっくりと歩いていった。


―鷲頭がひとり、そっと千早家を抜け出してから半刻。

僅かに鈍い痛みを訴える頭を枕からあげて、嵩利は漸くふとんから抜け出した。予想した通りの二日酔いであるが、おもったより軽症のようだった。居間ではもう父が寛いでいて、台所のほうでは母とチカの交わす笑声がきこえ、朝の汁物が煮立つ旨そうな匂いが漂ってきている。

「お早う、タカ。鷲頭殿なら居らんよ。随分早くに海のほうへ出ていったようだがね。ゆうべ邦宝と話し込んでおったから、港にでもいるかもしれんのう」

「そうでしたか。邦叔父さんの所へ行っているのだとしたら、間違いなく朝餉は向こうで済ませているでしょうね」

朝の挨拶、さりげない会話―。

膳が支度されて、久しぶりに父と母と嵩利の三人だけの食事の時間であることに気付き、最後にこうして過ごしたのが随分と昔だったような気がして、不意に、時の経ったあとに残る重みのようなものを嵩利は感じた。

―家族か―

確かに、あの青山のひっそりとした静か過ぎる鷲頭邸をおもうと、心が疼くことはある。以前の那智のひとこともあり、城内の、時にはあからさまな斡旋めいた“招待”にも応じてみたことは何度かあったが、今の嵩利にとって大事なのは、海軍の将来について模索することであり、まったく“嫁探し”に興味が向かないのだ。

かといってそれで、城内が匙を投げる様子はなく、また折りあらばと機会を覗っているであろうことも、嵩利は予想している。

しかし、いまこのようにして父と母の前に座っていると、嵩利は自分が海軍大佐ではなく、ただの、ひとりの息子なのであるということを強くおもう。たぶん、甘えん坊のままで我儘をいっていてもよいのだろうが、ふたりはそろそろ古希を迎えようという齢である。

―いい加減に、嫁を貰うか―

嵩利の心にその答えがすとん、とじつにすんなりと落ち着いた。

まさか、このようなおだやかな朝餉のひとときに、親になすべき孝行はひとつしかないと観念したような気持ちに至るとは、思いもしなかった。何事にも、潮時というものがあるのだなあ、と嵩利は久しぶりの母の手料理を味わいつつ、しみじみと感じ入っていた。
→【14話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・161―170話 | 21:57 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/366-c458d930

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。