大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰陸拾話

横須賀軍港は数多の艦艇が出入りしており、やや遠慮がちに榛名は一番沖に近い区画へ停泊した。艦内は上陸の支度にかかる者たちが立ち働いている以外は静かである。

操艦の指揮を執り終えた嵩利は、艦橋からは降りずにそのまま外を眺めていた。軍港が一望でき、懐かしい鎮守府の白亜の洋館が奥のほうにみえる。

汽船が何隻か、停泊している艦を迂回してこちらへやってくるのを認めて、嵩利は慌てて携えてきた双眼鏡を掴んで覗きこんだ。上陸するにはやや遠い区画に停泊した榛名を認めて、鎮守府の港務部長が気を利かせてくれたのだろう。

次々と、短艇や迎えの汽船に乗り込んで桟橋へ向かってゆく乗組たちを見送っているうちに、気付けば艦橋には嵩利ひとりが残されていた。

そのころ右舷梯下では、艦長を乗せるための内火艇が待機している。航海士の中尉は、いつまでも姿を現さぬ艦長を待つのも慣れた様子で舫綱を繰っており、出発の準備に抜かりはない。

そこへコツコツとデッキ上で靴音がして、航海士が艇内から顔を覗かせてみると、舷傍に姿を現したのは艦長ではなく、長官だった。

「まだ艦長は降りて来ないかね」

「はい」

嵩利が居る艦橋を振り仰ぐと、鷲頭は目許に微笑を残して舷梯をおりてゆく。港務部が寄越した迎えの汽船がちょうど梯下に横付けにされたところだった。

「では、私は一足先に行かせて貰うよ」

鷲頭を乗せると汽船はすぐさま、颯爽と引き返す。昼下がりの海風が、波を切って進む汽船を追うようにして吹いている。

桟橋に迎えに来ていたのは、新見と橘田だった。鎮守府の長官と参謀長が揃って庁舎を抜け出して来てよいのかと、些かくびを傾げたくなったが、敢えて何も言わなかった。

連れ立って白亜の庁舎へ向かう道すがら、鷲頭はふたりへぽつぽつと身辺のことを語った。―と言っても殆どが自身のことではなく、嵩利に関することだったが。

「ふーむ。では、ご子息はおそらく…渡航したいと考えていると、鷲頭長官はそう思っておられるのですね?」

庁舎の応接室で寛ぎながら、引き続き鷲頭の話を聞いた橘田は、顎を撫でながら深く頷く。

「うむ。…もっとも、はっきりとそのように私に言ったことはないのだが、恐らくそうだ」

同じ榛名の艦内に居ても、鷲頭は長官公室、嵩利は艦長公室と、殆ど顔を合わせることがなかった。

ときどき夕食後に、参謀長と共に公室へ招んで語らうことはあったが、誰も挟まずに嵩利と遠慮のない会話を交わせる時間は、以前より格段に少なくなっていた。

それでも、かれこれ十年ものあいだ伴侶として共に過ごしてきた間柄である。眼の動きや微妙な表情の変化で、嵩利が内心に抱えている想いの深さくらいは推し量れている、という自負が鷲頭にはある。

「あれが…長門の艤装員長の候補に名を挙げられていることは私も知っている。あれはあれなりに努力を重ねて、ご奉公の道を歩んでいるのだろう」

「ひとまず…、海軍省へ打診することから始めましょう」

何とかならないか、という鷲頭の言外の訴えに、新見は真剣に相槌をうった。大佐に進級する以前、大戦中の海軍省に於ける嵩利の働きぶり、現在の戦艦艦長としての腕を認めている。前職の人事局長だった頃の伝手を駆使すれば、早期の渡航実現も可能かもしれない。

「大臣がうんと言ってくだされば、すぐにでも手を打ちましょう。私も出来る範囲の支度をしてあげたい。英国で病を得ていたときに、かれには随分助けて貰いましたから、今度は私が助ける番です」

橘田は英国大使館で長きに渡って駐在武官を務めた経験があり、かの国に限らず各国の海軍士官に多くの知己がいる。頼もしい限りである。

嵩利も当然、このふたりを恃みにする心算でいるだろう。世話を焼いて先回りした形になったかもしれないが、話が進むのだとしたら少しでも早いに越した事はない。
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| 綿津見の波の色は・151―160話 | 23:17 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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