大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第佰伍拾捌話

観艦式まであとひと月となったある日、珍しく嵩利は中甲板の艦長公室に姿をみせていた。

松谷は、主の居ない部屋であってもその管理を少しも怠っておらず、むしろ世話すべき艦長が手の掛からない分、その上乗せとばかりに恐ろしく綺麗に整えていた。空っぽの肘掛け椅子が、あとは主人が座ってくれるのを待っている。

そのような様子の部屋を認めて、着任三日目以降全く足を踏み入れていなかった嵩利は、松谷の細やかな気遣いに感心したのであった。

更に長官のお達しにより、艦橋下に引っ越した艦長室の撤去が命じられ、“艦長大尉の執務室”は事実上、榛名からなくなった。嵩利が追われるようにして、ここへ戻ったのには理由がある。

観艦式の際、榛名に乗艦されることになっている宮様が、大層気難しい性格だという専らの評判で、およそ嵩利のような“名士”を見慣れていない。そういったご気性である宮様のご機嫌を損ねてはまずい、というのがそれであった。

嵩利の横顔には、艦橋で指揮を執り、士官兵卒のきびきびとした姿を嬉しげに認めつつ、日々の務めをこなしていたときの快活な色がない。

艦長室というところは潮風の届かぬ、しんとした居室であり、海と空が恋しいと言いたげに時折、丸い舷窓へ目を向けるのを、松谷は艦長の傍に持していて何度も目にした。

まことに、艦長という立場は孤独である。これまでに比べたら束の間といっていい程の、限られた時間だけ艦橋にあがって指示や号令を伝え、あとは殆ど艦長室に篭っている。

引き締まったしなやかな体躯を持て余しているのが、傍目にもわかる。ゆったりとした椅子の上などで大人しくしていられる性質ではないのに、何故急に艦長室へ戻ったのだろう、と、この日から、榛名のあちこちで囁かれるようになった。

気難し屋の宮様が、観艦式を終えて退艦されたあとも、嵩利の“軟禁”が解かれる様子はなかった。

下士官兵たちが、艦長大尉の振る舞いを懐かしがるようになった頃。呉の造船所で“育って”いる長門の、艤装員長の候補に嵩利の名が挙がっているらしいということを、参謀長の副官である羽田大尉が耳に挟んで帰艦してきた。

公務で赴いた先の呉鎮で耳に挟んできたのだから、まず間違いないだろうということで、榛名の幕僚たちの頭からは霧島に負けたことなど、それですっかり吹き飛んだ。

今秋の観艦式は滞りなく終わったが、その際に挙行された艦隊対抗短艇競争に於いて、嵩利の率いる榛名は僅差ながら、ライバルと認め合っていた守本の率いる霧島に負けたので、榛名にはなんとなく沈んだ空気が漂っていたところであった。

海軍の人事はなかなか予定通りに進まない。だからこの艤装員長候補の一件は、幕僚たちの間でささやかな慰めとして留まるに過ぎなかった。それでも、海軍新時代幕開けの旗手として注目されている長門に関することだけに、誇らしい気持ちになったのは確かだった。

借りてきた猫のようにおとなしくなって、艦長室へ引き篭もっているのは案外、この人事を見越しての“鍛錬”なのではないか。そう考えると納得がいく。心なしか、鷲頭艦長の横顔にも、落ち着きが見え隠れしているように感じられる。
→【9話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・151―160話 | 22:27 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/361-55f0883d

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。