大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第参拾壱話

 ついでながら、和胤は恩田に愚痴を零した。他でもない上官のことだ。

 かれの、相も変わらぬ自身への無頓着さについてである。療養の身であるのに、一向に改まらない。他愛もない我が侭を言っているだけなら、こちらも多少はふざけて返せるのだが、笑って済ませられる問題ではない。例えば、すこし具合がよくなると薬を飲まないで、三日も知らん顔をしているといった具合なのだ。

 「うーむ、おれならふん掴まえて、前みとーに百叩きはかたいところじゃがのう。さすがにおぬしは惟之を百叩きにするちゅうわけにもいかんか。そんなら―」

 そうしてこっそりと、惟之の弱みを和胤へ告げる。

 そのようなやりとりをして、恩田が杉邸を辞していったあと。暫くして階上から、惟之が水差しをもっておりてきた。居間にいた和胤はその足音に気づき、廊下に顔を出すと、おう、帰って来たんか。と惟之は少しばかり窶れたような笑みを向けつつ、手にしている水差しを掲げて振ってみせる。

 熱のせいでからだが火照っているらしく、この寒い日に綿入りの羽織も着ないでいる。和胤は慌てて上衣を脱いで着せ掛ける。

 「閣下。…今日は寒いですけぇ、水はいけません。小火鉢に炭を熾して、湯を沸かしましょう。からだを拭いて、それと着替えも…」

 「うん、すまんが頼む。おぬしが帰って来ておってよかったわい。階下におりただけでふらふらしようる」

 慣れたもので、これでもう何度目になるかわからないが、和胤はそっと惟之を抱きあげて、階段をのぼった。惟之も惟之で、肩にあずけるあたまをおさまりのいい場所にのせると、それきり動かない。

 「夕方に新垣軍医長が診察に来られますが、こがいに熱があっては、時間まで待っちょられません。いますぐ、参謀本部へ連絡して、おれが迎えに行ってきます」

 うんうん、と肩にのったあたまが頷いた。

 寝室にもどって火鉢にすぐに炭をくべ直し、火を熾す。そのそばに据えた椅子へ座らせ、寝間着の浴衣を脱がせると、寝汗をかいたからだを、湯にひたして絞ったさらしで丁寧に拭いていく。惟之ははじめ、浴衣を脱がせようとした和胤の手を拒んだが、背に腹は代えられないと諦め、それをゆるした。

 帯を解いて、浴衣を襟の後ろからつまんでひきおろすと、肩と背の半ばまで露わになる。

 ひと目で華奢な骨組みなのがわかった。しかし均整はとれていて、しなやかな筋肉のついたからだは脆弱さのかけらもない。しかも惟之は四十を越しているというのに、血色のいい肌理のこまかな肌で、まるで少年期のような独特の艶をのこしている。惟之にとって自身の肉体は嫌悪の対象でしかなく、この、およそ軍人らしからぬからだつきを人に見られるのは、耐え難い苦痛であった。

 その間は視線を合わせずにいたが、和胤は始終黙っていて、真面目な顔つきを崩さず、病身の惟之を労わりながら、抜かりなくひと通りの世話を済ます。

 さすがに着替えくらいは自身で、とおもい、替えの浴衣へ手を伸ばすが、和胤はそれをゆるさず、手早く着せてしまう。

 「寝台も綺麗にしますから、すぐに横になってください。いま昼食を貰ってきますけぇ」

 「うん」

 沸かし残した湯で白湯をいれ、それを飲んだとき、椅子のうえで漸くほっと息を吐く。浴衣を剥かれて素肌を晒すどころか、一々からだまで拭われても、嫌悪感は湧いて来なかった。それどころか何か温かな、穏やかな気持ちでいる自身に気づく。惟之は熱でぼんやりとしているあたまで、その気持ちの素は何なのだろうと考える。

 その間に和胤は、寝台の敷布から何から、取り払って全て取り替えてしまうと、それらの洗濯ものの山を抱えて出て行った。

 「せっかく着替えたちゅうに、まだそげなところで座っちょるんですか」

 どのくらい経ったか、不意にうしろから声がして、手のなかから湯呑みを取り上げられる。背凭れ越しに両脇のしたへ手を突っこまれ、椅子のうえから腰を浮かされかけ、そこで漸く反応する。惟之は慌てて身を捩ると、和胤を見上げて睨みつけ、頬を膨らませた。

 「そがい寝かしつけんでも、入るわい。おれを幾つかのこどもと間違っちょりゃせんか」

 「四十を過ぎても、こどもじみた悪戯をせるひとが、何を今更言うちょりますか。そげな膨れ面で睨みよっても、ちっとも恐くありませんがのう」

 呆れ返った表情と口調を隠さない和胤は、脇をしたから支えている掌を、くるりと返して脇腹に滑らせ、いきなりその辺りを指さきで擽り始める。

 「あ…っ、なんじゃ。こら、擽るのやめえ…っ」

 感覚が鋭敏な惟之に、これほど堪えるものはない。かれの弱みのひとつとして、そう恩田に耳打ちされたのを思い出し、返答次第では、ここでひとつこらしめるつもりでいる。

 「病がよくなるまで、言うことを聞いてくださらんのなら、やいとすえるしかないですのう。恩田大佐のように百叩きはできませんけぇ、こうします。たとえ“参った”とおしられても止めませんが?」

 うえから顔を覗きこまれ、最後通牒を突きつけられる。その証拠に、ゆるく擽る指さきのうごきは止まらない。
現時点で既に、惟之は擽ったさに耐えられず、からだを捻ったりして何とか和胤の手から逃れようと、もがいている。

 「うぅ…、いやじゃのう…。ちとはぶててみただけじゃちゅうのに、その仕打ちは…。はあ、じらくらんけぇ、擽るの…やめんかァ」

 眉を顰めて、かたく瞼を閉じたまま、惟之はしまいに殆ど悲鳴のような声をあげる。

 それと同時に擽る手が離れると、からだを庇うように身を縮めて自身の腕で抱えた。擽ったさの残滓を振り払うように身震いをして、恨めしげに和胤を見上げる。

 「約束ですよ、閣下。ご自分を労わってくださらなければ、からだはようなりません。そげなことばっかりしちょると…、仕舞いには副官の任からも降りさせていただきますけぇ。その積もりでおってください」

 真剣な、怖い目つきをして言う。惟之はその様子が只事ではないと感じ、しょんぼりとちいさくなって椅子から立つと、寝台へ入って半身を起こす。

 「なんじゃ、そない…怖い顔しおって。おぬしが居らんようになったら…。んにゃ、居ってくれんといやじゃ」

 駄々をこねるこどもと大して変わらぬことを、惟之は切実に困りきった表情で、臆面もなく言い放った。それには和胤を困らせてやろうなどという、悪戯っ気は全くない。これですこしは己が身を顧みてくれればいいと、和胤は内心でひっそりとため息を吐いた。
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