大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰伍拾漆話

半舷上陸の出た週末に、嵩利自身はその休暇を使わず、代わりに"宿敵"霧島へ内火艇で出かけていった。

もう観艦式まであと十日である。いつか大尉のころ指揮をとった短艇競争も恒例で、その訓練が始まるところらしく、上甲板が賑やかなことになっている。佐官将官の居室のある中甲板の後部まで、兵曹たちの足音、指揮を執る中尉大尉の声や策具を上げ下ろしする音などが聞こえてくる。

どこで何を聞いているのか知らないが、霧島の乗組は何故か"目下の敵"である榛名艦長の嵩利と通路などで顔を合わせると、

「あッ、鷲頭艦長!」

と言って正しく敬礼をしたあと、親しみの篭った眼差しや笑顔を向けてから去ってゆく。世辞や取り繕っているのではないことは眼を見ればわかるが、それにしても奇妙である。艦長室で差し向かいになったときにそのことを問うてみると、それがナ、と守本が微笑ましそうにして口許を緩めた。

「それぞれ磐手の話を、艦の全員に聞かせたらどうかと貴様、前に来たときに言っただろう。実はあれが覿面だったんだ」

「ああ、それはもうぼくも話したよ。でも、随分とその…、態度が変わり過ぎていやしないか。一体どんな風に聞かせたんだ」

「そりゃ、おれが貴様をあのときまで、友として認めていなかったのを悔やんだことさ。貴様ほど海のことを真剣に考えている奴は他に居ない、だからその鷲頭艦長に率いられている、榛名の連中を馬鹿にするのは許さんと言ったんだ。負けないようにするのは結構だが、下らん敵愾心は捨てろと言ってやった」

大戦が終わりつつあるなかで、今回の観艦式は、言ってみれば海軍軍人にとって一種、鎮魂と士気高揚の祭事を行うような気持ちが含まれている。張り切るのは頷ける。

その気持ちにもうひと声と、酒席の議論で熱が少々入りすぎている二艦長を出汁にするのは構わないが、何の根拠もない問題で対立して、つまらぬ禍根を残すのは以ての外だ、とも言ったらしい。

「…守本。あのとき磐手で総員挙げて訓練したのは、所謂負けじ魂から来る向上心であって敵愾心ではないという主旨の話をしよう、と結論を出しただろう。それで何故、ぼくの話が出てくるんだ?」

「殆ど艦内勤務で碌に艦隊訓練に出ていないのに、いざ海へ出ると十年潮に揉まれていたような顔をして、ヒョイヒョイこなすような士官なんか、貴様くらいだからだよ。くだらん対抗心を燃やす暇があったら、貴様のようなシーマンらしさを見習えと言ったんだ」

「大袈裟だよそれは。幾らなんでも持ち上げ過ぎだ」

「榛名は実質、殆ど貴様が切り盛りしているようなものだろう。鷲頭長官も有賀参謀長も、ありゃァふたりで昼間から、のんびりチェス盤を囲んでいるときもあるってもっぱらの噂だぞ」

「そんな根も葉もない噂を信じてくれるなよ…」

「おッ、まあ今のは冗談だが。しかし…今回の異動で、周りが貴様のことを何と言っていたか知らんのか?」

「知らないよ」

「相変わらず頓着しないんだな。いいか、六年も赤煉瓦に居て、あいつに旗艦の艦長なんか務まるもんか。接岸のとき絶対ぶっつけるぞ、とこうだ」

「ふゥん…」

海へ出たくて仕方のなかった嵩利からしてみれば、大佐に進級できた上に、戦艦を操艦できることが嬉しくて、榛名に乗艦してから艦のことに夢中だったから、そんな噂など耳に入ってこない。気のない返事をして、机の上にある錨の置物を弄っている。

「出動して初めて寄港したときの、みんなの顔を貴様に見せてやりたかったぜ」

嵩利の操艦は、誰にも文句をつけさせない腕前である。まるで岸壁に磁石があって、そこに旗艦がすーっと吸いつくようにしてピタリと停止するのだ。

「…ぼくは、ぼくの出来る事をするまでだ」

「そうか、だがやはり…貴様は、海に居たほうがいい」

「今こうして暢気に艦長をやっていられるのは、きみや…橘田さんのお陰だよ」

しみじみとした守本の声に、面白がるような響きはなく、ただ温かさだけがあった。それは、大尉のころから守本が常々嵩利に対して言っていたことだ。大戦参戦時下の軍政へ行った嵩利が、磨り減るような境遇に置かれていることを案じていた守本は、青島の戦場に身を置いているときでさえ、帝都へ便りを送る事を欠かさなかった。

―あの頃、嵩利も鷲頭も、新見や加藤、そして戦場に在る友人たちからの励ましもあり、務めを果たせたのだと思っている。ふたりだけでは、到底乗り越えられなかっただろう。

「―なあ、ちょっとうちの連中の腕を見てやってくれよ」

少し物思いに沈むような表情をした嵩利の手から、錨の置物を取り上げながら言って、それを台座に立てかける。守本はすっと席を立って、嵩利に上甲板へ行こうと眼で促した。その言い方が、まるで大尉の頃と変わらなかった。磐手で訓練担当官だったとき、嵩利に助太刀を乞いにきたときのような。

「艦橋からじゃダメだ、あいつらから見えないからな。明日は貴様の艦と合同訓練だし、ひと波乱起きないように、二人で舷傍から睨みをきかせて置いてやらないと」

「それは、もっともだね」

椅子から腰をあげて、守本へ屈託のない笑みを返しつつ嵩利は答えた。何か、昔をなぞらえる様な、どこか懐かしい気分にさせてくれる予感がしていた。
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| 綿津見の波の色は・151―160話 | 17:01 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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