大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第佰伍拾伍話

こうして、盟友たちは生きて再び相見えることが出来たわけだが、軍務に勤しんだ場が海にしろ陸にしろ、間接的な立場ながら欧州大戦を経験したことによって、それぞれの物の見方、考え方が変わりつつあるのを認識した瞬間でもあった。

世界の情勢が大きな変革を遂げたことに、これから日本がどのようにして動いてゆくのかについて、軍に属する誰もが胸中に抱く関心事になった。

各国へ大戦の視察をした陸海の観戦武官たちが、続々帰国してくると、かれらのもたらす話によって愈々その意識は揺さぶられる。もはや時代は、植民地保守の為の限定的軍事力発揮には止まらず、国家対国家の総力戦へと突入したのである。

これからの国防について、再び海軍内でも議論が持ち上がり始めていた。

呉の造船所で、職人たちの手によって日々"育って"ゆく次世代戦艦の長門が、これからの日本海軍にとって最も重要な位置を占めることに疑いはなく、改めて八八艦隊の重要性を説く必要が出てきた。那智は海軍大臣として、指針を明確にせねばならぬ立場にあり、もう一度深く吟味した上で答えを出す決意を固めた。

それらについて那智を始めとして、有事には聯合艦隊司令長官となる第一艦隊指令長官の鷲頭、横須賀鎮守府長官となっている新見、主力戦艦艦長を務めるようになった嵩利や守本も、この論戦に躊躇わずに加わっていった。

これまでのような構想はもう通用しないだろうということを、以前軍備について論文を書き上げた鷲頭は良く理解していたが、海軍内にまたひと波乱生まれる事態を考えると、これは些か頭の痛い問題であった。

基本的な姿勢こそ変えないものの、これまで軍備について足並みを揃えていた盟友たちの"軍縮派"の輪が崩れはじめてゆくのを感じつつも、守るべき国の為と、敢えて誰もそれを繋ぎ止めようとしなかった。若し戦いとなったときに如何にして備えるか、綿密に練り上げてゆくこと、それは軍人の為すべきことのひとつだからだ。


―鷲頭の率いる第一艦隊は海上へ出ていて、日本の国土防衛に専念している。

長門の起工式典のあとに盟友たちと再会を遂げて宇品を出港してから、いまはその半月後である。嵩利は旗艦榛名の艦長室に居ることは少なく、前甲板の艦橋のしたにある演習の時などに使う艦長休憩室に居ることが殆どで、そこで執務に就いている。

士官や水兵たちの声が聞こえ、きびきびと立ち回る様子が感じられるここのほうが、嵩利は好きだった。初めて副官として仕えたときの鷲頭のように、中甲板の艦長室で静かに書を解いて己の鍛錬に励む、というような真似は到底できそうにないと、榛名の乗組となってたった三日で悟ってしまったからだ。

戦艦クラスの艦長だからという訳ではなく、ひょいひょいとあちこちに顔を出す艦長というのは役職柄まず稀で、嵩利は"艦長大尉"という妙な綽名をくっつけられた。元気に艦内を走り回る士官は大尉クラスがせいぜいだからというのもあるが、もう不惑に手が届こうかという年齢だというのに、嵩利は相変わらず活発で昔と少しも変わりがない。だから、"大尉"なのだろう。

それでいて、訓練の時などになるとガラリと変わる。戦意に漲った一個の結晶のような輝きをみせ、良く徹る声で厳しく檄を飛ばす姿を見ると、士官水兵の誰もが身も心も引き締まる。面倒見の良いところも相変わらずで、十年以上潮に揉まれた叩き上げの兵曹長などの中には少なからず、昔の嵩利を見知っている者もいて、

「あのな、うちの艦長が三笠に乗ってた頃にな…」

と、昔話を持ち出してどこか自慢げな顔つきをしている。新米の水兵たちなどはそれらが何だかよくわからないまま、榛名のハンモックに揺られて日々の訓練に励んでいたが、段々と"艦長大尉"の天衣無縫な振る舞いを見るにつけ、嵩利に対して親しみを覚えてゆくことになる。

艦長と司令長官の間には、少将の参謀長というポストがある。

榛名の参謀長は、軍令部先任参謀大佐だった有賀友秀少将で、嵩利とは以前、青島作戦の際に一緒に陸軍省へ缶詰になっていて、有賀としては嵩利をよく知っているつもりでいたのだが…。陸でみせていたのとは全く違う、鷲頭艦長の振る舞いに呆れるやら感心するやらで、毎日が飽きないと言って笑っているような人物だった。

司令長官の鷲頭春美はというと、これもまたこれまでと大して変わらず、口数は少なく、方々へ向ける気配りには手抜かりなくといったいつもの姿勢で、中甲板最後尾の司令長官室に居ることが殆どである。

国土の沿岸警備、近海警備に専念しつつも、各艦の艦長以上の士官が招集の信号を受けて旗艦へ内火艇で乗りつけて、諸々の事項を会議で取り決めしたり、はたまた論議をしたりということは、かなり頻繁にあった。

霧島の艦長である守本もそうして必ず榛名へ来艦してきた。そのたびに、嵩利はかれとよく持論を戦わせた。大戦を経験して以来、海軍士官の意識は大きく揺らいでいたし、また互いに深くではないにしろ、"軍縮派"、"軍拡派"のやりとりを見てきている。城内や那智をはじめとする上官たちの思いや、自分たちの進むべき道のことを考えると、語らずにはいられないのである。

政治に関しては、知らぬで知らぬ顔をするのは宜しくない、知って知らぬ顔をせよというのが暗黙の決まりになっているが、嵩利は時々そうした暗黙の決まりを破って、腹蔵のない意見を守本に述べることも少なくなかった。

ここだけの、二人だけの話であるからとそうしているのだが、降った雨が苔に染みて水滴を生むように、どうしてもチラリとそういった話は漏れる。そしてそれらは全て、鷲頭の耳に入ってくる。どんな話をしているのかまでは伝わって来なくとも、概ね想像はつく。

「きみのことだ、軍務を疎かにしているとは言わん。だが少々、余分なことに熱が入りすぎてはいないか」

すっかり居を艦橋下へ移してしまった嵩利が、就寝前になってやっと艦長室へ戻ってくるのを見計らって、鷲頭は一足先に艦長私室に来て待ち構えている。今ではそのようにして訪ねては、時々嵩利を諌めるようになった。鷲頭が危惧しているのは、余計な争いに嵩利が巻き込まれて欲しくないということで、要するに心配で仕方がないのだ。

「ぼくたちの間だけですから、大丈夫です」

と言いつつも、父にして伴侶である鷲頭にならと、交わした持論を打ち明けようとしないのは、やはり"禁じ手"を破っていることについてどこか後ろめたい思いがあるからで、辛抱強く見守ってくれている鷲頭の目の前で、嵩利はしおらしく小さくなっている。

「そうか。だが、これだけは約束しなさい。何か気がかりなことがあったらいつでも私に言うこと。それがどんなに切り出し難い問題であってもだ…」

「それは…長官、どんなことでも、ということですか」

「当たり前だ。…私をきみの何だと思っている」

苦しかった海軍次官の務めを終えて、解き放たれるようにして海へ出た鷲頭には、これ以上何も怖いものはないというような胆力と気構えが滲み出ている。もし、この愛すべき伴侶が危ういところへ足を突っ込んだとしても、我が身がどうなろうと助ける覚悟でいる。こうしてかれを諌め、案じはしているものの、その覚悟はとっくに決めているのだ。

「約束できるか、嵩利」

「はい、約束します。必ず…打ち明けます…」

ジッと見詰めてくる厳しい眼差しのなかに、何があっても揺らがない信頼を見て取り、嵩利は救われたおもいをしていた。そうして誓う言葉を乗せた声に多分の安堵を含ませて、やっと体から力を抜いた。

「いつまで経っても、やんちゃ坊主なところは変わらないようだな。艦長になって少しは落ち着きをみせるかと思ったが」

緊張して対峙していた嵩利だったが、椅子へ身を落ち着かせてほっとしているところに、席を立って部屋を辞そうとする鷲頭がすれ違いざまに言葉を投げかけた。その声音は叱っているようなものではなく、からかいを含めた慈しむもので、嵩利はいつまでも子ども扱いをする鷲頭を恨めしくおもって、かれを振り仰いだ。

「それだ。そういう表情をするところもな」

つと手が伸びて顎先に指さきが触れ、唇を軽く啄ばまれて盗まれる。ほんの一瞬甘い視線を絡めたあとは、何事もなかったかのようにおやすみと言って、鷲頭の背が扉の向こうへ消える。
→【6話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・151―160話 | 19:38 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/347-f0d2e037

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。