大日本帝國軍の愛と友情の日々

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  綿津見の波の色は・第佰伍拾肆話

欧州大戦の連合軍の一員として、帝國陸海軍はその役割を果たしている。

そうして、少なからず海向こうの戦火が燻り始め、これは日本の視点からみての話だが、アジア方面の海上が穏やかになりつつあったのは、この年であった。

大正六年―。

海軍にとっても嵩利にとっても、様々な面で記憶すべき出来事が続いた。自国で戦艦の建造が出来るようになって六年目であるが、欧州大戦の真っ只中にあって海軍の軍備にまで手の回らぬフランスから、駆逐艦の建造依頼が舞い込んできたのである。

そして、小峰から成瀬、成瀬から那智へと引き継がれてきた、八八艦隊の誕生を意味するその一番艦の起工式が、八月二十八日に行われた。海軍省の主だった面々は揃って呉工廠へ赴き、"長門"と命名された艦の萌芽を見届けたが、式典の列に嵩利も加わっていた。二年前に那智と一緒に呉へ来て、古賀中将の手で描かれてゆく図面を覗き込んだあの艦がと、しみじみと深い思いを抱いていた。

大正六年五月に、嵩利は海軍大佐へ進級している。既に海軍省を出て、いまは戦艦榛名の艦長である。そして次官をつとめていた鷲頭は海軍大将となり、榛名を含む第一艦隊司令長官として、嵩利とともに海上のひととなっている。

海軍のみならず各界の人々が入り混じって賑わっていた式典会場をあとにして、呉の水交社へ引き揚げてくるとそこには、海へ戦いに出ていた盟友たちの姿があった。橘田と守本は青島の戦いでの陸軍との共同作戦に従事し、城内と浅田は黄海の哨戒任務にあたって、有元は南洋諸島へ赴いた―。日本へ帰還したのはつい先月か先々月のことで、皆、幸いにも怪我ひとつなく祖国の土を踏んでいた。

「何だ何だ、おィ。まさかお前ェさんたちァ、幽霊じゃねえだろうな…」

かれらの顔をそれぞれ認めたものの、驚きを隠さずに言ったのは那智だけであったが、赤煉瓦に残っていた面々は信じられないものをみた、という表情で一言も発せないまま、通された室内で寛いでいる友たちの姿を穴のあくほど見つめている。

「いや、存外幽霊かもしれませんよ」

寛いだ姿勢のまま、燻らせていた煙草を指さきに取って、真面目くさった顔つきで慇懃そのものの物言いをした有元は、ふっと紫煙を吐き出して椅子から立ち上がった。煙草の煙が薄く部屋に漂い、鼻先をかすめたその香を嗅いだとき、嵩利はひどく懐かしさを覚えた。たったひと月ほどだったが、有元が軍務局長だったときに先任副官を務めた。その時のことを思い出したのである。

「これはちょっと珍しいな。鷲頭と新見が絶句しているのを、海軍に入っていま初めて見た気がするぞ。なあ有元」

感に堪えないといった様子で浅田が言って笑い、有元の傍へ寄って肩を叩く。どちらかといえば軍政畑ひと筋だった二人だが、すっかり陽に灼けて、潮に磨かれた精悍な顔つきをしている。戦いの名残のようなものを漂わせた男たちの笑顔は、何故かくも眩しく頼もしく目にうつるのだろうか。

「いやはや、珍しいこともあるものだな。城内さんの尻馬に乗って正解だったよ。…おい、鷲頭、新見。おれたちは幽霊なんかじゃあないぞ、いつまで呆けて見ているんだ」

痺れを切らせて、同期生であるふたりが立ってそこへ行き、鷲頭と新見の手を取って引っぱると、肩を抱き寄せた。石のように固まって突っ立っていたかれらはそれで漸く呪縛が解けたようだった。導かれるままに、帰還した友たちの憩いの輪へ入ってゆく。

帰還後のかれらの動向を、海相である那智をはじめ、鷲頭、そして新見が全く知らないでいたのは、ひとえに城内のちょっとした悪戯心からで、長門の起工式典のあとを狙って、不意討ちのようにして出ていってやろうというのが真相のようだった。よくもまあひた隠しに隠したものだと、稚気に溢れつつも周到な企みに嵩利は感心していた。

「また、あいつの仕業か」

横に立っている那智が怒気を含ませた声で呟くのを聞き、嫌な予感を覚えてかれへ顔を向けかけたとき、嵩利は背後からいきなり抱きすくめられた。

「よかったよかった。削り過ぎの鉛筆みたいになっているかとおもって心配したけれど、海へ出て少しは元気になったみたいだネ」

悠揚とした声がきこえて、それが城内であるとわかる。しかしそれ以上長く抱擁はせずに、ぽんぽんと頭と肩をやさしく撫でるように叩いて、城内は腕を解いて嵩利から離れた。いつもの、那智の説教を避ける為というような素振りではない。那智の前に立つと、頭からつま先までひとわたり眺めてから、

「問題は海相のきみだよ那智くん。避雷針になるのは結構だけれどね、そろそろ高さを低くしてもいいんじゃないかな。これでいてぼくも、きみを案じていたんだからね。このくらいの悪戯は笑って受け取ってほしいな」

と、思ったより真面目な口ぶりで言う城内を、那智は振り上げた拳のおろしどころに困ったような顔つきで見ていたが、仕様がねェなと呆れつつも笑顔を向けて、長年続いてきた友情を酌むほうを選んだ。

「ほらほら、鷲頭くんもおいで」

将官たちの再会をやや遠慮がちに見守っていた橘田と守本が、待ちかねたように嵩利の手を取って室内へ誘った。唯一、青島で本格的に戦闘へ参加し、死線を潜り抜けてきたふたりはすっかり固い絆で結ばれているようだった。どれ程の艱難辛苦を乗り越えてきたのかと、それを問おうとすると、守本はちいさく首を振りながら問いを遮って嵩利の前に手を翳した。そのまま真剣な顔をして指折り数え始め、

「海相、次官、参議官と、貴様、このお三方の副官秘書官、二年の間殆ど任されていたっていうんだろう。幾ら戦時で人手が足りないとはいえ…、とてもおれには真似のできない芸当だぜ」

「全く…、一昨年から段々と便りが減ってきてどうしているかと思っていたが、やっと海へ出て行ったときいて、安心したんだよ」

慈父のような顔つきで、橘田が隣で相槌を打っている。かれは少将に進級しており、聞けばこの九月には横須賀鎮守府の参謀長に就くことが決まっているらしい。鎮守府長官の新見にとってこれほど頼もしい片腕はいない。

このころ既に日本海軍の主力艦は大正に入ってから、河内、金剛、比叡、榛名、霧島、と堂々たる戦艦が海の城として生まれ出で、万里の波濤を疾駆している。嵩利と同じくして大佐へ進級した守本も、一国一城の主としてこれから、戦艦霧島の艦長をつとめるのである。

「―ところでねえ」

と、歓談が落ち着いてきた頃になって、のんびりとした口調で城内が切り出した。

那智と入れ替わりに海へ出て、最後の務めを全うしたという感慨でいるかれは、あと二年で海軍を退く身となったこともあり、若いふたり―嵩利と守本―へ観音さまのような笑顔を向けた。頼もしい海軍の後継であるかれらが、いつまでも独り身であることについて、そろそろ物申したい気持ちになっていたのだ。

「ああ、そうだな。お前ェさんたちの跡継ぎが、まあ謂わば、おいらたちの跡継ぎみてェなものだからなァ」

特に、嵩利は養子へ行った身であるから、鷲頭家を守ってゆかねばならない義務がある。これまで十年という長い間、鷲頭と嵩利は深い絆を紡いできたわけだが、このように城内や那智から言われなくとも、家の存続について薄々とではあるものの、何か手立てを講じなければなるまいという思いは抱いていたのだった。

"嫁探し"の件はその場で、それ以上の段階へ話を持って行くことはなかったが、城内は例のお得意であちこちに手回しを始めて、このあと何かにつけて嵩利たちを然るべき場所へ引っ張り出すのだが、嵩利はというと、結局、一番身近な人物―城内顕範その人の末娘、顕子を妻に迎えることとなる。
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| 綿津見の波の色は・151―160話 | 13:23 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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