大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰伍拾弐話

呉の港から、夏霞につつまれるようにして浮かぶ江田島がみえて、嵩利は懐かしく眼を細めた。そうして横目に海軍の揺籃を認めながら、那智と共に鎮守府と工廠のあいだを往ったり来たりしていた。

これまで訪れたところとは、那智の眼のいろが違う。優秀な職人を積極的に米国などへ研修に遣っていると聞き、新型艦はこの呉造船所で受胎をするだろう、というのがまことしやかに囁かれ始めた。

海軍トップの単なる視察に留まらない那智の真剣さに、職工たちも“さあいよいよだ”と袖を捲って槌持つ手にも力が入る。まだ空っぽの区画に毎日人々が集ってくる、といった具合に一種独特の静かな熱気に包まれてゆく。

そんな呉に居て、嵩利は気が気でなかった。

那智はいつ眠っているのかわからぬほど、昼夜構わずあちこちへ出かけてゆくからである。或る日の朝も、一陣の風のようにして、ふっと居なくなっている。と言っても鎮守府附の副官と出ていったという言づてが残されている。

このところ嵩利は、帝都の赤煉瓦へ送る資料をせっせと拵える毎日で、殆ど鎮守府へ缶詰になっている。鷲頭を長い間上官にいただき、こういった根気の要る、且つ厳格な精密さを求められる事項を任せられる士官に、嵩利は育っていた。

“造船大臣”と、その揶揄に親しみと尊敬の篭った渾名をつけられている男が、嵩利が送ってきた資料に目を通していた。古賀友哉中将である。海軍に入ってからこのかた造船ひと筋でやってきたが、数学者としても有名で、海軍に身を置く傍ら、帝国大学で教鞭をとるということもしている。

「大臣は呉が良いと考えているようだね」

全て読み終えたあと、その呟きだけを残して古賀は帝大の教壇を去った。

瀬戸内の夏の海は、次々と呉を訪れる男たちの慌しさを迎えても穏やかなまま、眩しい陽の光をはじいて輝いている。

新造艦については、着実にことが進んでいる。鎮守府や工廠に出入りするにつれて、嵩利もいつの間にかすっかり惹き込まれていた。

帝都から馳せ参じた“造船大臣”古賀中将の引いた設計図、数々の資料がいくつも提示されるにしたがって、まだ見ぬ艦がここにいる大勢の男たちの手によって生まれるという瞬間が、近づいている。そう遠くないうちに、キールが据えられることになると知ったとき、嵩利の胸はわくわくと踊り、高鳴った。

さすがに寝食をかたえに置くようなことはしなかったが、嵩利は鷲頭に会えぬ寂しさが心に湧くよりも、この呉の熱気に夢中になっていた事は確かで、不思議とそれを後ろめたく思うこともなかった。かれこれもう半月以上帝都を離れているというのに、伴侶に宛てて絵葉書の一枚も出していない。

あの日、背広を脱いで夏軍装を着込んだ造船中将の古賀を、鷲頭と新見は新橋駅まで見送ったのだが、呉がそれから俄かに活気づいたというのは聞き及んでいる。ふたりは早朝の庁舎の食堂で、顔を合わせて食事をする習慣であるが、口数の少ない両人が、互いの伴侶について案じることが増えてきている。

「―いい加減に戻れと、大臣に言っても構わんだろう」

そう言いながら、眼を閉じて熱い紅茶を啜る海軍次官の瞼には、己が愛息の貌が浮かんでいる。その表情は傍から見れば、むっつりと不機嫌そのものにしか見えないが、深く心配している所以である。

「長くて三日で戻るなどと言っておいて…全く。それに、観艦式も近いというのに、大臣には困ったものです」

破天荒な海相に振り回されるかたちで、艦政を韋駄天の如く切り回している本部長は、疲れを滲ませつつ拗ねたようにくちを尖らせて、羞ずかしげもなく呟いた。

「幾らあれが良く気が利くとはいっても、やはり、那智さんの手綱は貴様でないと捌けないか」

旋風のような那智の立ち回りに、さしもの嵩利も目を回しているに違いないと、呉の状況を知らないふたりは、今朝もそんなことを思っていた。
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| 綿津見の波の色は・151―160話 | 13:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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