大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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千尋に届く波の音・第拾肆話

 海軍省へ那智が参謀適性の研修へ来るようになってからも、暢生たちが忙しさに追われることに変わりはなく、せっかく嘗て面倒を見てくれた上官が所を同じにしているというのに、全く接点がない。

 しかし暢生はあの夜にこそ、那智の腕に抱き上げられて僅かなりとも心の擽られる思いをしたが、置かれている現状に対して一々、上官と語らう時間もないとか、不満を呟くことはなかった。未だそれほどには、かれの存在は暢生の心に沁みてはいない。

 と言うよりも元来暢生には、執着心というものも無ければ、欲―特に私事に関して―というものが殆ど存在していない。軍務に追われている時などは、その揺らがぬ湖水のような切れ長の眸に、清冽な光を弾くのみで、一切他をうつさない。

 己は一個の人間である前に、国を囲む海の護り手であるという確固たる意志の塊になるのである。那智の言う、無頓着で無防備というのは、このことをも指していた。身を削るかのような働きぶりは、やがて暢生を徐々に危うい渕へと追い込んでゆく。


 ―夏の築地での騒動のあと、暢生が海軍省へ異動になり、海軍病院への通院も回数を減らしてきた頃、帝都はすっぽりと冬の気配に包まれていた。

 軍事部の設立が決定を迎え、若輩の少尉である暢生たちも残らず、海軍卿に呼び出されて労いの言葉を掛けられた。激務からの解放も含め、それでふっと力が抜けたのか翌朝、下宿先で暢生は熱を出して倒れた。

 赤坂と青山の中間に、暢生が部屋を借りている家はあり、鷲頭が下宿している藤原邸から近くであった。連絡はすぐに藤原邸へ届き、鷲頭は登庁を遅らせて暢生の居る下宿へ走った。

 「―やあ、鷲頭くん。きみも来てくれたんだね」

 下宿には一足先に城内が訪ねてきていた。かれの邸が赤坂にあることを、鷲頭は今更ながらに思い出し、襖を引き開けようとする城内の行く手を慌てて遮った。

 「城内大尉、あとは私が面倒を見ますから」

 「それは駄目だよ。見たところ、相当熱が高い。新見くんをきみにまかせて、上官であるぼくが知らん顔をして登庁しろと言うのかい?」

 「いえ、そうではありませんが…」

 「新見くんはひとまず、ぼくの家で養生させることにしよう。抱えの医師も居るから心配は要らないし、もし吉永少監が築地に寄越せと言うのなら明日にでも連れて行く。海軍省へはきちんと連絡をするよ」

 毅然とした城内の態度に、鷲頭は圧される。越前福井から出てきた暢生に、この帝都にあって他に頼るべき者が居ないことも確かだった。

 襖越しにそうした会話が暢生の耳に届いていたが、半分も理解していなかった。熱で朦朧としていて、寝返りをうったときにふとんの上へ力なく手が落ち、指が震えるのを眼の隅に捉えても、どこかそれが自分の体として感じ取れず、まるで他人事のようにして見ていた。

 「では、私が新見を連れて行きますから、大尉はご自宅へ」

 「ああ、頼むよ」

 すっと襖が開く音がして鷲頭が部屋へ入ってくる。暢生は登庁のために支度した冬軍衣を身につけたままで横臥していたが、何とか顔だけを鷲頭へ向けた。

 「無理をするな、新見」

 「鷲…頭…くん」

 「おとなしく背負われていろ」

 悪いときに、と鷲頭は暢生の熱い体を背負いながら苦りきった顔をした。

 何故なら、このとき那智は東海鎮守府において、参謀長を囲んでの連泊研修に出ていたからだ。横浜に居て、暢生が帝都で倒れたということを知る機会はまずないだろう。

 忙しさの中にあっても、城内は今まで度々部下である暢生たちを連れて牛鍋をつつきに行ったり、時には、やや艶めかしい茶屋などにも連れて行ってくれたりと、慰労する時間を作って、激務に追われる部下を励ましてくれていた。

 それはいい。暢生も鷲頭も鍋をつつきに行くときは、相伴にあずかっている。

 しかし水交社へ行くときなど、城内の”悪戯”が段々と目に余るようになっているのも確かであった。”悪戯”を仕掛けるときの目当てが暢生であることも、鷲頭は薄々気づき始めている。

 暢生は、酒の強い方ではない。頬と耳朶とを染めるころになれば大分酔っているということになる。そこへ城内が膝を強請りにやって来て、ちょっかいを出し始める。

 酔っててまともに抵抗できぬ暢生の体へ触れる手つきや、顔を窺うときの眼つきに、その色を含んでいることを隠さなくなってきている。

 惹きこまれるような城内の妖しげな色気というのが、何処から醸されるのか、暢生へ戯れ掛かって抱きしめたりしているとき、見ていてこちらまで妙な気分に陥る。それは鷲頭とて例外ではない。

 ―だから、那智大尉は近づくなと言ったんだ。城内大尉に引き摺られる、と。

 懐が深く、度量もある城内に対して、尊敬の念はある。しかしあくまでも軍務の面に於いてである。城内は帰宅すればきっと、暢生の看病をすると言うだろう。あくまでも公務として部下を労わるのであれば問題はない。しかしそこは自邸である。悪癖を持つ城内の食指が動かないとも限らない。

 そんな危い場所へ、暢生を連れてゆかねばならないのだと思うと、足が重くなる。

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| 千尋に届く波の音 | 01:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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