大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾漆話

 日が経つにつれて、惟之の自宅はちいさな本部のようになってしまい、通うだけの積もりが、とうとう杉邸へ泊まりこむ羽目になった。と言っても、参謀本部から杉邸へ戻れば、勤務時間内であっても軍服を脱いでしまうし、気分的にはずいぶん楽である。先日会って以来の、惟之の姪と甥である少女と青年のふたりも、和胤が来ることを喜んでいた。

 朝早く、荷物を持って改めて上官の家を訪ねると、まるで和胤が家族ででもあるかのように、出迎えてくれる。

 少女と青年―千代と孝一は、昼間はそれぞれ学校へ通っており、その間はひっそり静かな家も、午後を過ぎると俄かに賑やかになる。惟之は千代たちを構うのがすきで、特に今は小太郎がいるものだから、三人と一匹で階下の庭先や部屋で喧しく遊んでいる声がよく聞こえてくる。

 千代も孝一も、伸び伸びとしていて屈託がなく、こどもらしいこどもであるのに、どことなく器量が大きい。当たり前だが、同じ血を引いているだけあって、惟之に似ている。

 学校から戻ると、居間で勉強を始めるのが日課らしく、惟之は小太郎を抱きながら階下へ行って、督励しに来たぞ、などとやったりする。自宅で療養と言いつつも、あまりじっとして居らず、軍服を着ているときより、ちょこまかと家中を歩きまわっている。

 それを見兼ねた和胤は翌日、二人きりになったとき、こどもたちが居ない間は安静になさってください、さもないと病院へ押し込めますよ、と詰め寄って睨みをきかせた。惟之は口をへの字に曲げて、ふてくされた顔をして聞いていたが、結局は和胤のことばをききいれる。

 しかし、漸く上官をおとなしくさせたところに、電話が掛かってくることはしょっちゅうで、おまけに来訪者まである。その度に和胤は苦い顔をする。

 これでは到底休めまい、と思いつつ時々に上官が居る部屋を覗いてみる。惟之は小太郎を膝に乗せ、寛いだかっこうで本を読んでいて、和胤がそうして様子を見にきても、顔をあげる素振りすらみせない。

 電話のやりとりや、訪ねて来るひとびとの応対は、副官に任せ切りにしている。それらのひとの出入りや、隣室から聞こえてくる、電話のやりとりの声が落ち着いたものだから、出動態勢その他、愈々大詰め、順調にすすんでいるのは容易に感じとっている。

 昼食のあと、寛いでいる間に副官から報告を聞き、

 「出来のええ女房が居るけぇ、おれは何もせんでええちゃ」

 などと、安心しきっている証拠に、籐の椅子に座ったまま、眠たげな声で言ったりする。毛布を肩から掛け、膝のうえの小太郎がその毛布にくるまって、すやすや眠っている。

 「こげな穏やかな日々は、久しぶりじゃのう。ずっとこうして居られればええのにな、おぬしと小太郎が帰るちゅうたら寂しゅうて、おれたちァ三人で泣いてひきとめるかもしれんのー」

 そのくらい、千代も孝一もおぬしに懐いちょるちゅうことだ、と、和胤へ屈託のない笑顔を向ける。かれこれ、杉邸へ泊まりこんで十日が経とうとしている。和胤はすっかり、この家のひとびとを好きになっていた。それにはもちろん、上官である惟之も含めて。

 「それは同感です。じぶんの家以外でこんなに気持ちよく過ごしたのは、初めてでして。あの子たちが兄弟のように思えてきて…、それに小太郎も可愛がってもらっていますから、離れたらこいつも寂しがるかもしれませんね」

 「なあ山口、時々は遊びにこい。見ての通りの家じゃけぇ、遠慮はいらん。こどもたちも喜ぶが、なんちゅうか、おぬしが居ると…おれも妙にほっとするんじゃ」

 副官の意外な一面をみて以来、惟之は和胤に対する親しみを隠していない。

 それは、つい三日ほど前。

 めずらしく台所が賑やかなのを訝しくおもった惟之は、顔を出した。そこで見たのは、千代と一緒に夕餉のしたくを手伝うといって、帰宅して軍服のままでいる和胤が、袖まくりをして糠漬けの桶に手を突っこみ、野菜を引っぱり出している姿だった。

 「馬鹿なはなしかもしれんが、あれで、おれァますます嬉しゅうなったっちゃ。どうにも、他にことばが見つからんけぇ、言うが。おぬしが好きになったとしか、言いようがない」

 「あ、いや、まさかあれを見られちょるとは…。閣下が懐の深いのをええことに、すっかり甘えちょりましたけぇ。油断してあんなことまでしちょりました」

 つられて郷里ことばがつるりと出てしまったが、この際もうよいだろうという気がして、そのまま通すことにした。上官と副官というだけでなしに、ひとりの人間として付き合い、尚且つひとつ屋根のしたで暮らしてみて、互いを知るには十日もあれば十分だった。

 和胤は、裏表のないさっぱりした人柄だし、何より“良い奴”“悪い奴”の匂いに敏感なこどもたちの、和胤に対する懐きぶりがその証明である。

 この家を包む雰囲気が、家長同様にあかるく、不安を吹き飛ばしてしまう温かなものだけに、惟之にはなるべくこの中心に居てほしい。むしろ普段の働きぶりからして、もっとこうした、穏やかな時間に囲まれていていい筈だ。それには、上官が矢鱈に便利扱いされ、軍務に振り回されぬよう、支えることが肝要で。

 「欲を言えば軍務以外でも、共に過ごせるのなら、またこうして閣下と穏やかな時間を。と、おれは芯からそうおもっちょります。できれば今このままで、時が過ぎてくれればええのですが…」

 隠さずに告げた。惟之は椅子のうえで文字通り飛び上がりかけ、膝でねむっている小太郎を、うっかり転げ落とす前に踏みとどまる。

 「こりゃァ、参った。そこまで包み隠さず言われたら、おれも白状するしかないのう。あのなあ、おぬしを好きになったのは、実はもっと前じゃ」

 和胤の告白に、惟之はぽりぽりとあたまを掻いて、照れ切っている。

 「あのくそ寒い明け方に、おれが徹夜しちょることを察して来ただろう。それで、握りめしまで持ってな。おぬし、あれァ反則ちゅうにも程がある」

 他の細君は、亭主が軍務で詰めていようが、さすがにそこまでやりおおせたことはない。惟之が普段、和胤をことあるごとに女房、と言っているのは、単に副官だからというのではなく、そういう面倒見のいい部分を指してもいる。

 「おれの性分ですけぇ、閣下が心配で…。いま思えば、あの宴会のとき二人きりで話したあたりから、閣下を好いちょったのかもしれませんのう」

 そっと、あの時のように、惟之の体から落ちかかった毛布を背凭れから掬いあげ、すこし屈むとその華奢なからだをうしろから包みなおす。そのまま、抱きしめるようなかっこうで、和胤は囁きかけた。
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