大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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千尋に届く波の音・第拾弐話

 軍事部準備室に配属されている暢生と鷲頭の少尉ふたりは、上野精養軒での会食で、ぎこちない作法を駆使してフル・コースを”堪能”したのだが、それから暫くして、鷲頭が下宿している藤原家へ、那智が訪ねてきた。

 自身を案じて那智が訪ねてきたのであると知ると、鷲頭は眉間に寄せた小皺を和らげて安堵の表情をみせた。

 こうした表情は直属の上官である城内の前では見せたことがない。鷲頭は暢生と違い、明らかに城内に対して警戒を露わにしている。

 見境なく色事に耽って、自邸にも帰らずに翌日登庁してくることが多々あるのだが、城内はそれを別段隠そうともしないし、恥ずべきことだとも思っていない。無邪気に振舞っているだけに、始末が悪い。

 他の者のように、私的なことと割り切って目を逸らすとか、苦笑いとともに黙認するとか、鷲頭にはそうした器用な真似ができないのである。上官の振る舞いを受け入れることができず、部内では極力距離をおいている。

 「そうかィ、あいつにゃ近寄らねえほうが賢明だ。しかし、お前ェさんは真っ直ぐだからなァ…。もし、ぶつかるようなことがあったら、おいらに直ぐ言って来なィ」

 と、頼もしくうけあってくれる那智だが、ふと心配そうな顔つきになって、改めて鷲頭に向きなおる。

 藤原家の人々には良くして貰っていることや、毎日温かく見送り、出迎えてくれることなどを素直に告げると、那智はひとまず納得したと言う風に頷く。

 それらが心を和ませているのは確かだが、不自由のない暮らしをさせて貰っているというのは、血縁もなく、しかも少尉の身には過ぎた境遇である、と鷲頭は思っている。

 恵まれた立場であるという、それらの思いが先にたって、実際はまだ藤原家の人々とは、芯から打ち解けてはいなかった。

 鷲頭の深層にあるものは頑なで、そう簡単には解けないようだった。那智は不器用で頑固で真摯な後輩をいじらしく思ったし、これから何があっても守ってやろうと密かに誓う。

 「よゥ、ところで…精養軒で食った洋食はどうだったンだ?」

 美味かったのかと訊かれ、鷲頭は恥かしそうに俯いて首を振った。作法を学ぶので手一杯、料理の味を楽しむ余裕などは全くなかったのである。

 「じゃ、明日はここへ新見も呼びなィ」

 「何故ですか?」

 「そりゃァ、藤原の御大直々に、作法を仕込んで貰うためさ。斯く言うおいらもテーブルマナーってやつは、良く知らねェからよ」

 深川名物の泥鰌鍋が好物という江戸っ子の、気取らない哄笑に鷲頭は目を丸くした。帝都へ来いという辞令の内容も、徹底的な行儀作法習得と参謀適正があるか否か、ということを含めた研修の為である。

 ―翌朝。

 登庁するなり、暢生は鷲頭に引っ張られて中庭へ連れて行かれた。このところずっと不機嫌そうだった口許に、珍しく微笑が浮いているのを訝しんだが、鷲頭の口から出た言葉に、それもかき消える。

 何事もスマートにこなす那智が、洋食の作法に疎いというのには驚いた。藤原邸に於ける私的な会食ということで、幾らか落ち着いた気分で作法を学べるに違いない、と密かに喜んだ。

 午前中に軍務を切り上げて、暢生はまた築地の海軍病院へ向かった。軍医少監の吉永とは、もうすっかり親しくなっている。診察室へ入ると、珍しく主治医が先に居た。暢生の微妙な表情の変化に気づいて、吉永はほんの少し拗ねたように唇を尖らせた。

 「何です?今日は珍しく待たされないのだな、と言いたげですね」

 通院しなさい、とここへ呼んでおきながら、回診や学生への講義などで、いつも最低でも半刻は待たせていることに対して、吉永なりに済まないと思っているらしい。

 暢生にしてみれば、待っている間にゆっくりと読書をするなり、思案を巡らせたりという時間に充てられて、ちっとも迷惑ではない。吉永へ、生真面目そのものの眼を向ける。

 「新見くんなら、そう言ってくれるだろうと思っていましたよ」

 と、どこか楽しげに言って微笑を浮かべる。吉永も、藤原邸で開かれる会食に招かれているのだと聞いて、暢生は那智の手際の良さに舌を巻いたのだった。

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| 千尋に届く波の音 | 01:23 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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