大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾陸話

 「閣下、昼の診察の折は、余りの剣幕に押されて、あのような言い方を致しましたが―」

 と、軍医長は存外厳しい面持ちで、医務室に顔を出した惟之を部屋の中へ引っ張りこみ、健康状態を告げる。

 体調は、あまり芳しくない。

 昨年の大戦の満州から復員してきて以来、殆ど働き詰めのうえに、祝賀会、頻繁に主催する宴会などで鯨飲するものだから、体がおかしくならない方がふしぎである。

 この際やはり病院へ、と言う軍医長に、最初に診察を受けたときから、病院に寝泊りするのだけは死んでも嫌だと言って徹してきたので、自宅療養でたのむ、と拝み倒す。朝と夕と、一日二度の往診を受ける約束で、惟之は参謀本部から帰宅していった。

 「おいおい、山口、おぬしも帰れ。杉閣下は、明日から自宅で休んでいただくことになった。あとは軍医長に任せてある」

 惟之のあとを追いかけようとした副官の肩を、恩田が慌てて掴んで押し止めた。

 義務感、心配、条件反射の入り混じった行動だったが、ひきとめられて和胤は足を止める。言われてみれば、二日間ほとんどねむっていないし、家に帰ってもいない。

 そうさせていただきます、と言うと、和胤と同期の参謀少佐たちから、貴様が一番くたくただろう、と声を掛けられる。杉閣下の副官はある意味、非常に鍛えられる役職だから、がんばれよ、などと妙な励ましを寄越してくる者もいる。

 家に帰る―。そうおもったとき和胤の脳裏には、愛犬のすがたが浮かんだ。まだ仔犬で、毎日のようにころころと鞠のように部屋中を走りまわっている。

 「ところで恩田大佐、杉閣下は動物を好いておられますか?それとも苦手でありますか?」

 小太郎を、惟之のところへ連れて行ってみたらどうだろう、と考え、恩田の耳許に小声で問いかけてみた。

 「ん、なんだ?いきなり。…閣下は動物好きだぞ?特に何が嫌い、という話をきいたことはないな」

 「杉閣下の体がよくなるまで慰め役に、自分の家から仔犬を連れてゆくというのは、よろしくありますか」

 「あァ、川上閣下から頂戴したちゅう、あの柴犬か。なるほどな、いいんじゃないのか?閣下にはすこし軍務から離れて、憩う時間が必要だからな」

 と、賛同を得られ、和胤は早速帰宅して平服に着替えると、籐の篭に入れた小太郎を自転車の前に乗せ、のんびり走らせた。平日の昼下がりの街を見ることはあまりないから、妙に新鮮である。途中、果物を買い求めつつ、上官の自宅へ向かう。

 かれの自宅は市ヶ谷にある。

 しかし上官にとって自宅は、あってもなくても、あまり意味がないもののように見受けられる。なぜなら、上官は普段の起居も無頓着で、極端なはなしだが、そのひと月は陸軍省、次のひと月は参謀本部にと、たびたび泊まりこんだりしても、一向に平気な顔をしているという。

 さほど時間も掛からず、上官の自宅へ到着する。そこで和胤が見たのは、この辺りでは珍しい二階建ての洋館だった。それもまだ建てたばかりである。

 開いている門をくぐって玄関まで辿りつくと、扉を叩く。するとすぐに書生姿の青年と、襷がけをした和服の少女が現れた。聞けば、惟之の近しい親類だという。軍服でなく、平服の和胤が誰なのか、すぐにわからないらしい。訪問理由を述べた和胤に向かって、書生は妙な顔を見せた。

 が、それも最初だけで、玄関口に置いた篭から、小太郎がひょいと顔をだすと、俄かにふたりの顔が綻ぶ。

 「杉閣下への、見舞いのお届けものであります」

 などと真面目くさった顔で、冗談をひとつ飛ばしてから、改めて事情を説明した。

 青年に伴われて寝室を訪ねると、上官はこざっぱりした浴衣すがたで、寝台に半身を起こして本を読んでいた。部屋に現れた和胤を認めると、栞を挟んで本を枕もとに置く。

 「帰宅せい、ちゅうたのに。それでおぬしゃ、着替えてわざわざ来たんか。この通りおとなしくしちょるけぇ、そがーに心配せんでええちゃ」

 平服でいる副官を、惟之は半ば呆れた顔で見上げながら言った。しかし、半ばは嬉しく、隠さず素直に口許を緩める。

 「恩田大佐に許可を得て、お見舞いを持ってきました。できれば、こいつと遊んでやってください」

 何のことかとおもっていると、和胤の両手に抱かれて篭から出てきたのは、柴の仔犬だった。その丸まっちいすがたと、つぶらな黒目とに惟之は思わず絶句する。

 「川上閣下から譲って頂いた、小太郎です。杉閣下は動物好きと伺いましたので、少しでも気晴らしになればいいのですが」

 和胤のことばに嬉しげに顔を綻ばせつつ、目を輝かせて仔犬を見つめる。既に視線は小太郎に注ぎっぱなしになっている。和胤はそっと、差し伸べてきた上官の両手に仔犬を預けた。

 小太郎は嫌がりもせず、惟之の手に抱かれている。胸元に抱き寄せて、そのちいさな温もりを感じれば、どこか安堵感に包まれる。

 「いやァ、かわええのう。そうか、おぬしゃ小太郎ちゅうのか。しかしこんなかわええ仔犬を、おれのところへ寄越して、おぬしが寂しくならんか」

 「いえ…、たぶん毎日こちらへ通うことになると思いますから。寂しくはありません」

 上官の体調について心配を隠せず、和胤は帰り際に医務室を訊ねていた。聞けば、当分のあいだ、半日だけの執務と療養が続くだろうということだ。いかに自宅から近いとはいえ、健康が思わしくない体には、通勤も負担の内に入る。

 だから、いっそ参謀本部へは出勤させず、最低限の執務だけを自宅へ届ければ問題ないのでは、と和胤はここへ来る前に恩田や川上らに相談してきている。勿論その連絡役は、副官である和胤が担う。ふたりの上官から異口同音に、そうしなさいと賛同されたのは言うまでもない。
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