大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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千尋に届く波の音・第参話

 言われたとおりに、朝食を終えてから部屋を訪ねると、那智は長椅子のうえに寝転がって本を読んでいた。起き上がりもせずに、端正な姿勢で佇んでいる暢生の顔をまじまじと見つめてから、にやりと悪戯っぽく笑いかけてくる。

 「あのなァ新見、ああいう手合いは放っておくに限るぜ」

 開口一番、暢生が抱いている不満に対して、切って捨てる那智。

 胸中を見透かされたような言葉に、暢生はほんの僅か目を瞠った。那智はお見通しだとでも言いたげに、鼻を鳴らすと手枕をして暢生を見返す。だらしのない姿勢とは裏腹に、その眼差しは厳しくなる。

 「そンなことに眦吊り上げてる暇があるなら、この新型艦の性能と操作を、今のうちに頭と体に叩き込んでおけ。あとで苦労してェなら別だが、そうはなりたくねェだろう」

 「どういうことですか?」

 「おいらたちァもうすぐ、比叡、金剛から追ン出される身ってことさ。お偉いさんの方針とは雖も、いつまでも新型艦に候補生を乗っけて、遊ばせとくわけにはいかねェ状況ってことらしいぞ。来月の頭には、東海鎮守府に繋がれている練習艦、肇敏と浅間に分乗するンだとよ」

 「そうでしたか…」

 それを聞いても、暢生は眉ひとつ動かさない。静かな光を湛えて那智へ眼差しをむけたままでいる。まだ二十歳を越したばかりのくせに、何につけても敏感で思慮深く、胆の据わり具合も申し分ない。

 「ああ。だから、一々くだらねェことで悩むな!」

 「は、はい…」

 有無を言わせぬ強い口調と眼差しに気圧され、尻すぼみに答えつつ口篭る。周囲から軽んじられるような態度をとられようが、那智中尉にとってはどうでもよい問題らしい。暢生は益々、己の器の小ささを感じて恥かしくなった。

 そんな暢生の態度をみると、いつも一瞬、横っ面を殴り飛ばしたい衝動に駆られるのだが、これは不思議と直ぐに引っ込む。口より手が先に出ることも少なくない那智にしては、数少ない例である。

 ―しょうがねェな…、まったく。

 内心で、呆れたように呟くのが常であった。

 候補生の教育を受け持つことに決まっていた那智も勿論、海兵第九期生の噂は聞いていたが、些細なことと気にも留めていなかった。

 この風変わりなクラスヘッドたちが、少尉候補生として那智の分隊へ配属になったときも、色眼鏡でみることはしなかったし、そうしてかれらを指導してゆくにつれ、頼もしく成長していると感じたことに一片の偽りもない。

 ただ、この新見候補生だけは違う。

 私心、私欲の片鱗を全く見せないということが、気になった。それも些か度を越してい、自身のこととなるとまったく無関心、無防備極まりない。非の打ち所がないような男だけに、唯一それだけが際立っていて、目に付く。

 ―どうも、危なっかしくて放って置けねえンだよな、こいつァ。

 那智はかれから眼が離せなくなっていることについて、特に自身の心に理由を求めなかった。手間のかかる弟を見守るような心境に似ているとおもっていたからだ。

 「で、おいらの言ったことは、分かったのかよ?」

 「はいっ」

 じろり、といくらか苛立ちを篭めて上目に睨みつけられ、暢生は畏まって返事をする。

 「おゥ、…今日も確り頼むぜ」

 長椅子のうえで胡坐をかいて、ウンと伸びをしつつ言う分隊長に向かって、暢生は正しく敬礼をする。もうその後は何も言わずに、那智中尉の私室を出て行った。

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| 千尋に届く波の音 | 23:40 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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