大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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千尋に届く波の音・第弐話

 日を追うごとに、比叡に於ける第三分隊の扱いは、明らかに変わった。

 というと大袈裟だが、他の分隊から奇異の眼で見られていると言えばよいだろう。そしてその原因が分隊長である那智中尉だけにあるのではないことを、暢生は感じていた。原因は候補生たちにもあるのかもしれなかった。そう思い直して、分隊長への訪問をとりやめた。

 それというのも、暢生が所属した海軍兵学校第九期生、というクラスが既に異質な存在として注目を集めていたからだ。

 明治十三年に、暢生は海軍兵学校へ入校した。

 クラスメートには、現在同じ分隊員である鷲頭、加藤、纐纈、有元のほかに、三上、浅田らがいた。

 先のクラスと比べたら三分の二にも満たぬ少ない人数であったことなどから、次第に結束が強まり、結果として非常に固い絆で結ばれるのだが、その道程は決して平坦なものではなかった。

 入校時、暢生と鷲頭はほとんど差のない抜群の成績で、双璧を成していた。このことは喜ぶべきことであるが、それは同時に、好む好まざるにかかわらず、ふたりがクラスを率いてゆく存在になることを意味していた。

 ここからが問題で、如何せん暢生も鷲頭も、その性格に闊達さというものを持ち合わせておらず、成績に於いて一、二を争う存在であっても、クラス全体を率いてゆく位置に立つ者としては、甚だ似つかわしくない性質であったことだ。

 特に暢生はごく物静か、万事控え目で全く目立たない存在であったし、鷲頭には、思い詰めたような悲愴さ、そして一種の諦観めいたものが漂ってい、近づき難さを周囲に感じさせていた。

 このような両雄を持って、苦労したのはクラスメートである。

 ある意味で厄介なふたりを、周囲は根気よく支えた。そして時には拳を交えた喧嘩をし、やや強引に引っぱり回すことも辞さなかった。そうして三年間の学舎で寝食を共にし、苦楽を分かち合ってゆくなかで友として認め合い、いまに至っている。

 そうして艦に乗組んでふた月が経とうとしていた。

 これまでを顧みても、軍務について学ぶべき姿勢に落ち度があったとは思わない。暢生たちを指導する那智分隊長は、軍務となると別人ではないかというほど、的確に合理的に思考を働かせ、行動をとる男であった。かれが指導してきたことに、間違いはない。

 訓練に於いても、作戦に於いても、第三分隊は群を抜いている。そのことが何よりの証明である。

 そこかしこから僻みや妬みが向けられているのを感じている。陰口程度であればそれこそ、気に留めねばよい話なのだが、ものには限度という言葉がある筈だ。その癖に表面で何食わぬ顔をしているかれらが、暢生は嫌で嫌で堪らなかった。

 しかしその嫌だという不満を、暢生は一切表に出さない。友人たちに対してさえ、吐き出したことがない。同じ穴の狢になりたくはない、という意地よりも、普段から私心を表に出さない暢生の気質から出ていることである。まるで石木とおもわれているが、人情に無関心というわけではないのだ。

 ―これから、かれらとうまくやってゆけるのだろうか―

 総員起しのあと日課である甲板掃除を終えた頃、ちょうど東の方、払暁の雲が赤く染まる。続いて四方を照らす陽の光が群青の空を払うのをみるとき、暢生はその光に向けて手をあわせた。

 比叡の舷傍に立って、そうして旭日を拝む者は他にも居た。ごく自然に毎日欠かさずしている者もいれば、戦友に倣ってたまには、という者もいる。何故そうするのかなど、理由は様々にあるだろう。敢えて、誰もその理由を訊くことはしない。暢生の場合は、己の心を静めたいときに、そうする。

 常に平静でありたいと思いながら、ままならぬことが疎ましい。もっと精進せねば、と心の中で呟く。顔をあげると、もうそこには先ほどまでの群青色の空はなく、澄みきった冬晴れの蒼穹がひろがっている。水平線に輝く陽が、暢生に温もりを伝えてくる。それを頬に感じて、束の間、解放されたような安堵感をおぼえて、ゆっくりと息を吐いた。

 作業衣から軍服へ着替えに士官私室へ戻ろうと中甲板へ降りてゆくと、ラッダーのしたで那智が立っていた。暢生が端正に敬礼をすると、さッ、と気軽に答礼を寄越す。その顔つきはいつもと同じく涼しげである。どこか茶目の浮いた眼を笑ませて、那智は口をひらいた。

 「新見候補生。朝餉が済んだら、おいらの部屋ィ来ねェ」

 「はい、分隊長」

 答えてから、暢生は名状し難い焦りを覚えた。その間に那智はもう士官食堂へと足を向けている。その後姿はごく自然体で、ある意味で軍人らしからぬ匂いがあるが、第三分隊の者たちにとっては頼もしい背中でもある。

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| 千尋に届く波の音 | 20:06 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

このような両雄を持って、苦労したのはクラスメートである。

ここ面白かったですw あ同期だったのかと改めて思ったところへ、両雄のダメっぷりに膝を打ちましたw 三つ子の魂w
二人のいないところで加藤、有元、三上で「どうするよ」って話しあったり、色々あったんでしょうね~

| misia2009 | 2011/01/14 23:58 | URL |

本当はね…

そのひと言で片付けてしまったんですが、凄く書きたかったんですよ、海軍兵学校時代。
でも、そうすると那智、城内が全然出てこなくなっちゃうので、やめたんです。

鷲頭と新見、手が掛かったのは断然、鷲頭です。

正直、中尉くらいまであんな感じでしたからね~。嵩利の同じ頃と比べたら正反対。少尉になる前から、藤原サン家に下宿して、って言っても家族同然に暮らすんですけど、そこで何年かしてやっと心が解れてくるというか、そんな設定です。

| 緒方 順 | 2011/01/15 15:27 | URL |















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