大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第佰伍拾話

何も知らない新見が、普段と変わらぬ時間に海軍省を退いて官舎へ帰ってきた。那智はそれに気づくことなく、微かな息をたてて眠ったままでいる。自室の扉を開いてまず新見の目に入ったのは、寝台のうえで無造作な寝姿をみせている那智だった。

海軍大臣の後継が決まっていないだけで、内閣解散の報はとうに赤煉瓦に届いているのだ。新見は深くため息を吐いて、寝台の傍へ近づいた。つくづくと那智の寝顔を見つめてから、音をたてぬようにして部屋の隅から椅子を運んで戻る。

手足を伸ばしているとはいっても、第二種軍装の上衣も解いていない。些か窮屈そうな恰好で眠っているのを、新見はどうにかしたいと思ったが、起こしてしまうのが忍びなく、結局は諦めて手を引っ込める。

寝台の傍へ置いた椅子へ腰を落ち着けて、新見は思考を巡らせた。しかし、黄海にいる筈の那智がここに居るということ自体、言わずとも答えが出ている。

次の海相に指名されたか、成瀬の相談を受けたか、そのどちらかしかない。

室内に薄闇の帳がおりても、新見は己が伴侶の傍から離れなかった。膝へ置いた書籍を読みながら、身じろぎもせずに昏々と寝入っている那智へ、時々眼を向ける。ランプのあたたかな光に包まれた室内に、ふたりはそうして一緒に居た。

「…おい、何だ。帰って来たンなら、起こしてくれたっていいじゃねェか」

目を覚ました那智の眼にうつったのは、部屋に散った柔らかなあかりと、椅子へ憩っている新見の姿だった。軍装を解かずにいるのを認めて、那智は不機嫌そうに唸ると、寝返りをうって横臥する。

「いつ帰って来たんでェ」

「定時ですが」

「ふゥん…」

訊いておきながら気のなさそうな返事をする。軍務について口に乗せる気はないらしい。新見はそう思って椅子から立ったが、すかさず伸ばしてきた手に上衣の裾を掴まれる。

「お前ェさんを見込んで頼むんだが、ちぃっと艦政へ行っちゃくれねェか?」

シーメンス事件から後、造船機関を整頓せねばなるまい、というのは現海相の成瀬が常々考えていたことで、それは那智も同様であった。行政と、研究生産とを、分けて運営してゆくべきで、その行政方面の整頓を新見に担って欲しいというのが、那智の願いであった。

「私が、艦政本部長…ですか?」

意外な言葉に、新見はつい訊きかえした。

「おう。何度考えても、適任は暢しか出てこねェのよ」

やりがいのある軍務を預ける、というようには見えず、全体の流れを汲んで仕方なくといった風の、重い表情と口調である。軍縮派で知られている那智と新見が、八八艦隊の先駆けを挫くどころか、その先鋒を担う姿勢を取ることになる。

盟友はともかく、かれらを密かに支持している士官たちは、この振る舞いを見て何と思うだろう。傍からみれば、世論や情勢に引き摺られるままに海軍の運営をしてゆく、という情けない態度にしか映らないかもしれない。

「艦を造るってェのは、急に決められる話でもねェし、急に取り止めできる話でもねェ。水面下でここまで進められてちゃァ、新型艦は少なくとも、二隻こさえなきゃ収まりそうもねェんだよ」

海軍大臣に就くからといって、全て思うように出来る訳ではないということを、会談の席で成瀬にこぼされて、那智は大いに驚いた。あれだけの改革を布いた成瀬をして、そんな言葉をきくとは思わなかったのだが、内閣総理大臣に就いていたときの城内が言ったことを思い出していた。

―ぼくが内閣総理大臣だからって、何でもできると思われちゃ困るなァ。…那智くん、これはねェ…もう、お上にだって覆せないほどの流れなんだヨ―

歯痒さを抱いて、自分がその位置に立たなくてはならないことを、那智は痛感したのだが、ここまで来て悔いたり、悲観したりはしない。決心したことが揺らがないと言ったら嘘になるが、那智は一人ではない。

黙りこくっている新見の顔を覗きこんで、掴んだままの裾を軽く引く。甘えるような仕草であるが、向けてくるまなざしは真剣そのものである。

「…な、頼む」

「お引き受けします、軍務に対して否応はありませんから」

暫し視線を交わした後、新見は素っ気ないほどの返事をする。表情も同様で、軍務に就いているときと変わらない、生真面目一辺倒な態度である。こういうときの新見に対して機微を求めること自体が間違っているのだが、那智は如何にもつまらない、というような不貞腐れた表情になる。

「何でェ。おいらからのたっての頼みなら、とかよゥ。お世辞にでも付けとくもンだろ、ここは」

「そういうことを…、大事な話に絡めないでいただけませんか」

上衣を掴んでいる那智の手を取って、確りと握りながら言う新見。照れているらしく、困ったような怒ったような表情で、寝台の縁へ腰をおろした。そんな新見をからかうことはせず、那智は黙ってその横顔を見つめ、ほっと安堵の微笑を浮かべた。
→【10章・1話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・141―150話 | 19:33 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

知れば迷い、知らねば迷う、なんとやら。

緒方さんの祖国(この言葉はどうしてこんなに悲しく響くのでしょうね)を思う気持ちを、お付き合いを重ねるたびに深く深く感じ入ります。
願いとは本来儚いもので、かなわないから夢なのであって、那智が新見を軍艦建設の最高責任者に任じたことは、どこか彼の現実に対する「夢」を見るような淡い感情を禁じ得ません。非戦論に戦艦弩級2隻の建艦という矛盾のなかでかれがどういう帰着点を見出すのか、史実の通りになるとは限らないと思いますので、一読者として楽しみにしたいと思います。

わああんっっ(>0<。)
久しぶりの那智司令官、新見局長にドキドキ☆邂逅の巻き\(^0^)/なのになんでこんなに切ない気持になるのおぉ(大泣)

| kanayano | 2010/12/25 01:09 | URL |

長門は三年後に起工

海軍のみならず陸軍も、明治後半から政府と折り合いがつかなくなっていきます。

それも、第一次大戦の開戦決定くらいからです。時の政府は御前会議も開かず、海軍大臣は軍令部の意向も訊かず、それであのような電撃的なはやさで参戦となったわけです。

海軍はシーメンス事件のことがありますから、肩身が狭いというのもあったでしょう。そうせざるを得ない状況に立ってしまったからには、そのように、流れに乗るしかなかった。史実ではこのことがきっかけで、政府と軍部が対立してゆくようになります。

鷲頭はこのようなときに海軍次官。那智は第一艦隊司令長官→海軍大臣になります。
国を守るために最善を尽くしてきたかれらは、「これで良いのだろうか」と不安に駆られることも少なくないような時代に足を踏み入れています。

長門、陸奥が竣工したあとはきっと、またもとの前向きなかれらに戻してやりたいと思っています。

器用に二足の草鞋が履けない性質なので、暫くは、千尋に~の方ばかり書くとおもいますが、落ち着いてきたら綿津見~も書きますので、よろしくおねがいします

| 緒方 順 | 2011/01/15 15:18 | URL |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/302-ff57155d

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。