大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  変わらぬ青空のしたで・第弐拾伍話

 おそらく、二日は徹夜しているだろう。居並ぶ部下たちはその名残で、目がやたらと鋭くなっている。その目つきで以って、こぞって惟之を見つめているのだから、堪らない。針のむしろもいいところで、椅子の上で茶をすする。

 「戻ってこられもしたか。議会が納得してくれたそうですな、杉サン。病み上がりに無理はいけませんよ」

 川上と松沢が部屋に入ってきた。ふたりとも穏やかに微笑んでいる。およそこの部屋の雰囲気にそぐわない。

 「ああ、いや…。おれァ付録みとーなもので。尾木さんと、小峯さんと大城さんが、来てくれましたからのー」

 惟之を挟んで、それぞれ椅子に座る。将官三人が並んだところで、部下たちは机の前に並んで立ち、姿勢を正した。仕事の手を止め、誰も口を開かない。

 惟之にはこの沈黙が、罵声を浴びせられるより辛く、重くて仕方がない。顔を顰めそうになるのを、辛うじて堪え―それでも沈鬱な面持ちにはなっているだろう―ゆっくり立ち上がると、彼らの方へ歩み寄る。

 「―おぬしら、今日はもう仕事はせんでええから、帰ってからだを休めろ。二日三日徹夜して、いらん負担が掛かったろう」

 肩をおとして、小さな声で言う。言いながら、自身の不甲斐なさを痛感し、情けなくなってくる。議会も通すだろう、と気楽に考えていたから、結局は参謀総長にも、泥を塗るような真似をしてしまったと言える。

 「…すまん、おれが至らんばかりに。もしこれが戦中なら、この三日の間、前線に居る将兵がどれほど命を落としたか知れん。おぬしらの何人か、失っていたか知れん。それをおもうと―」

 あとのことばが出てこない。とっさに軍帽をとって、部下たちへあたまを下げた。

 「杉閣下…」

 昼すぎにここを、龍のような威風を纏いながら、猛然と単騎で駆け去って行ったとは、到底思えぬ変わり様だった。その姿はちいさく、打ちひしがれているように見えた。

 実はあの早駆けを、第一局室はおろか、今度の件を知っているほぼ全ての関係者が、喝采を以って見送っていたことを、惟之は知らない。

 ある者は“鞍馬天狗”といい、ある者は“羽柴秀吉”といい、元寇に立ち向かった一番名乗りの武者、“竹崎季長”のようだ、といった者までいた。

 「杉サン、よっく顔を見ておやんなさい」

 川上と松沢に、励ますように肩を叩かれ、惟之はのろのろと顔をあげて部下たちを見る。するとそこには、予想もしていない含羞の笑顔が一様にあり、半ば俯いて涙を堪えている者もいる。

 「おぬしら、なァにを笑っちょる。寝不足でおかしくなったんか!こちとら泣きたいちゅうに。これ以上何かやらかしたら、おれァ辞表を出すつもりで、こうして―」

 眉を吊り上げながら、ごそごそと懐から取り出した辞表を、葵の印楼のように突き出してみせると、それは即座に取り上げられてしまう。振り仰いでみれば取り上げたのは松沢少将だった。

 「あっ、松沢さん。返してくれんと困る。冗談でも何でもありませんぞ、それは。あっ!」

 手を伸ばして取り返そうと、背伸びをしてみるが届かない。松沢は何食わぬ顔で、おもむろに辞表を掌中で破ってしまった。

 「辞表なぞ出させません、私がゆるしませんよ」

 しれッと言い、破った辞表を、騎兵の象徴である金条茜色の軍袴のポケットへ突っ込んでしまう。

 「えー、そうですなァ。これはひとつ今日の馬の貸し賃ということで。異論はありますまい」

 松沢少将が言った途端、第一局の中にどっと笑いが湧き起こった。

 「部下おもいはよいことですが、ああたは、もうちっと寄りかかってよいと思います」

 のんきに言う川上に呼応して、こちらに向かって一同、揃ってウンウンと頷いてみせる。実際そうしても、全くこの連中には苦にならないだろう。何しろ満州の問題が通らなかった時、同時に上官の惟之が倒れたのを嘆いたが、すぐにかれらなりに行動を起こしたのだから。

 その鮮やかな手並みを、川上と松沢とで、明かしていく。聞くにつれて今度は惟之が含羞に顔を染める番になった。

 「ばっ、馬鹿かァ。部下に寄りかかるなんぞ、そんな真似ができるかっ。ちゅうことは…何じゃ、要するにあれか、みんなしておれを担いだわけか」

 照れ隠しに態と恐い顔で睨めつける。怪しからん、三日間なにもおれのとこへ報告もせんで、と言ってふてくされたのも、本心ではない。

 「おい、山口!おぬしが議事堂まで迎えにきたときから、そういう魂胆だったんじゃな」

 和胤は突然自分が名指しで非難されて、最初こそ目を丸くしたが、上官のその態度が単なる照れ隠しだと、分かってくるにつれて、笑みを堪えられなくなる。

 「素直じゃありませんの、栗鼠将軍は。担がれたとお思いになりたいのなら、担がれたということにしておいてください」

 意地っ張りのこどもを、微笑ましげにみつめるような、川上のやんわりとした言い草に、惟之はまごつく。

 「ふん、もうええわい、その話は。で、明日から本格的に始動じゃろ。満州に参謀を派遣するのか、どういう概況になるのか、決めにゃならんっちゃ。しかし、今日は最大の難所を乗り切ったからのう。ほれ、ニヤニヤ笑っちょらんで、おぬしらとっとと帰宅せえ。各々待っちょる女も居ろうが」

 しっしっ、と両手で扉の方へ仰いでみせる。帰宅の許可は受け入れた様子で、寛いではいるが誰も動かない。

 「おれァ、また軍医長の世話になってくる。執務は当分半日だけにしちょけと、忠告されちょるからな。その間だけは仕方ない、おぬしらに寄りかからせてもらうけぇのっ」

 ぷいっ、と顔を背けて帽子を被り直すと、外套を肩に引っ掛けた姿でさっさと部屋を出て行ってしまう。照れている上官の振る舞いを見届けると、第一局の面々は漸く帰り支度をはじめたのだった。
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