大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰肆拾玖話

慌しい軍部の動きに沿って報道に専念していた高田だが、あの日海軍省で顔をあわせた嵩利の精悍な海軍士官の姿に、身内としての誇らしさを禁じえず、かれの生家がある片瀬へ、休暇をとって報告に帰った。腰越の親戚たちも、高田の訪問を知って片瀬へ詰めかけた。

大正四年の初夏になったが、長閑な南の海辺は波の色も島のかたちも、変わらない。そこに住む人々の気質も然り、であった。高田の持ってきた知らせを聞いて、こどもたちは無邪気に喜んだし、おとなたちも感慨深げに頷いたものであった。

勿論ここにも去年、海軍が引き起こした汚職事件は知れ渡っていたし、千早家も多少肩身の狭い思いをしたのは否めない。しかし、千早家を取り巻く人々は、嵩利を信じていたし、嵩利を養子として迎えた鷲頭春美海軍中将が、次官へ就いて縁の下で確りと海軍を支えていることを知っていた。

世間に殆ど姿を現したがらない鷲頭だが、次官に就いてからはそうもゆかず、記者会見の態度などから徐々に評判を買われつつあった。そういった内輪の経緯を一々訊かずとも、時々このように報せを携えてくるときの、敏腕記者の表情をみるだけで、心が寛ぐのであった。親戚が集まって酒をあけたりすると、嵩利の父は決まって、

「なーに、一年や二年帰って来なくたって、心配には及ばん。お国の為に働いてる証拠じゃろ」

と言うのが常だったが、そうは言っても千早家の人々はいつだって、嵩利の帰りを心待ちにしているのである。

                           ※
                 
―独逸との戦闘が収束したいま、欧州の海域へ艦隊を派遣すべし、との声が高まりつつあった。

しかし、保有艦隊を割く余裕はない、と、軍務局長、人事局長、海軍次官が口を揃えて海相へ訴え、議会などへ軍部の現状を説明し、英国からの要請を断っていた。

日英共同作戦となった青島の攻略、南洋諸島の攻略は成功に終わったものの、大日本帝國が持つ軍事力では、地中海などに艦隊を向かわせるのは無理な話である。

帝都の本陣に居座っている士官が一番よくわかっている筈であるのに、何故かこのような話が持ち上がる。海軍省に身を置いている鷲頭たちは、省内に生まれる不穏な動きに眼を光らせつつ、政府の動静をみる、といった姿勢でいる。

そんな騒がしい、大正四年の七月末。

帝都へ、第一艦隊司令長官として黄海にいるはずの那智が何の前触れもなく、ひょっこりと姿を現した。

いつもならば、真っ先に赤煉瓦を訪ねて、新見の居る人事局長の執務室へ潜り込み、かれをひとしきりからかったりするのだが、伴侶はおろか、友人たちを訪ねることもせず、人目を避けた早朝に、まっすぐ海軍大臣の官邸へ向かう。

潮のにおいが抜けきらない陽に灼けた貌には、いつもの飄々とした微笑を湛えてはいたが、眼にどこか厳しい光を宿している。

時の内閣で不祥事が起こり、成瀬は海相から身を退くことしたのだが、後任に指名したのが那智だった。退任の理由は、現内閣に於ける内務大臣秘書官の汚職である。

不意を突かれたかたちで、那智は摂津の長官公室で書状を受け取った。海軍の先輩である成瀬からの頼みとあっては断れず、第一艦隊司令長官の座をおりることにしたのだ。

こういった慌しい経緯であるから、まだ周囲には知らされておらず、成瀬と会談を終えた那智は、新見が起居する官舎の門をそっとくぐった。かれの部屋へ身を潜ませて、漸く人心地ついたように肩を揉み解しながら、くるくると腕を回す。海軍省へゆけば記者などに見つかるおそれもあるし、彼らの相手をするのも面倒なうえに、疲れてもいた。

もう、海へは帰ることはなかろう、とこのとき那智は確信めいたものをおぼえていた。せねばならぬことが、頭のなかで駆け巡っている。

寝台へ仰向けに寝転がり、大の字になって天井を見上げると、そこにはまだ見ぬ、八八艦隊の先駆けをつとめることになるであろう新型戦艦のすがたが、おぼろげに浮かび上がる。

―最低でも、あの二つの艦は建造しなけりゃ、収まらねェだろうな。この際、胆ァ括るしかあンめぇ―

成瀬の、独裁的とも言える海軍改革だったが、政府と共にある海軍、と見せておきながらも、新艦隊建造の案は水面下で着々と進められていたようだった。折りしも、欧州大戦に参戦した成果が、軍部にとって追い風になりつつある。

民主主義に基づいた国民の意思は、時として世論の奔流を生む。何もかも押し流してしまう恐ろしさを秘めているというのに、世論というものは移ろいやすく、それでいて儚くもある。その、無視できぬ要因のひとつに、軍部は動かされているということを、海軍は今回の不祥事と、それに続く大戦への参加によって痛感した。

―ここで確りしなけりゃ、先行きの見通しなんざ立たねェってことだ―

新たな人事編成を半ばまで組み立てたとき、那智の意識は夢の中へおちいった。佐世保から殆ど碌にねむりもせず、帝都へ駆けつけたのだから、無理もなかった。
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| 綿津見の波の色は・141―150話 | 21:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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