大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰肆拾捌話

秋が深まるにつれて、青島での戦闘が火蓋をきった。

綿密に立てた上陸作戦を始めとする、陸海軍の作戦は成功を収めたと言ってよかった。更に海軍は太平洋へ向かい、独逸植民地である南洋諸島を制圧していった。

同盟を介しての参戦だったこともあり、日露戦争に比べれば遥かに軽微な損害で、帝國は国外に於ける権益を掌中に握ってゆくこととなった。独逸に宣戦布告して一年も経たぬうちに、時の内閣は中華民国に対して、二十一箇条の要求を提示する。

政府の思惑がどれ程のものか、この要求によって明確になったも同然であった。鷲頭は海軍次官であるから、議会に出入りしているだけに、日々の定例会見で、各新聞社から詰めかける海軍記者たちに意見を求められる。

鷲頭はどのような事態になっても欠かさず会見を開いたし、誠実な態度から概ね好意を持たれているという前例があり、意地の悪い質問責めに遭う、ということはならなかった。

しかし、当事者ではない我が帝國が国外へ手を伸ばし、権益を獲得し続けている、ということについては、慎重に言葉を選ばざるを得ず、記者たちから不満気なまなざしを向けられることも、しばしばであった。

次官先任副官に専念している嵩利は、その会見を行う部屋へ出入りすることになったが、鷲頭次官につき従うかたちで入って、会見が終わるまで殆ど黙って侍しているのが常であった。


支那に対する二十一箇条と、戦争景気で浮つきつつある大正四年、五月の帝都。

早くも初夏の匂いが南風に乗って吹き、第一種軍装でいるには、些か暑さを覚えるような、そんな日だった。

嵩利は、偶々その日は加藤参議官から用件を仰せつかってい、朝から鷲頭と別々に行動をとっていた。昼食のあと、海軍省の一階に指定されている記者会見の部屋を覗くなり、嵩利はやれやれと首を振った。

室内は記者たちの苛立ちをそのまま映しているような乱雑さで、椅子はあちこちに出したまま、灰皿から吸殻がおちて、灰が散ってテーブルが汚れているという、なんともだらしのない有様である。

「そろそろ、出入り禁止にするとか、厳しく言うべきかな…」

この部屋は謂わばかれらの為に空けてあり、取材したいときは何時でもここへ来てよいことになっている。せめてもう少し、綺麗に使ってもらいたいものだ、と思いつつ呟き、部屋の隅へ椅子を片付けてゆく。

「次官先任副官殿が、小使いさんがするようなことまで、しなくてもいいんじゃないのか」

不意に窓際から声があがって、嵩利は吃驚して振り向いた。陽の当たる窓の傍へ据えられた長椅子から、記者らしい男がむっくりと身を起こした。逆光になっていて顔は良く分からない。体に掛けていた上衣を無造作に椅子の背へ放り、男は立ち上がって欠伸をした。

「ここで顔を合わせたのも何かの縁だ。少し話を聞かせてくれないか?」

あからさまに、からかうものを含ませて言うのに対し、嵩利はつとめて表情を変えずに、男へ向きなおった。着ているものからして程々に品を漂わせるも、振る舞いはざっくばらんで、どこか親しさを感じさせる人物のようだった。

「残念ながら、私から話せることはありません。午後に会見がありますので、次官にお訊きください」

「冗談だよ。…しかし、立派な海軍士官になったもんだなぁ。小さい頃、おれの傍にくっついていたあの嵩利と同じとは、とても信じられない」

「し、滋さん…?」

薄いカーテンを半ばだけ引くと、男はその影に立って笑いながら言った。嵩利の目に映ったのは、姉婿である高田であった。幻ではなかろうか、と嵩利は幾度か瞼を瞬かせて、漸く義兄へ屈託のない笑顔を向けた。

「お久しぶりです。海軍専属になったと聞いていたのに、一度来たきりで中々顔を見られなくて、どうなさっているかと思っていました。また、上海へ行かれていたのですか?」

「ああ、それから先々週までは新人にくっついて徳島に行っていたよ。板東俘虜収容所の取材を任せてきた。やっと帝都に帰ってきたら、今度は支那への二十一箇条ときた。昨晩遅くまで記事を書いていてな。寝坊して次官の会見に遅れたら大事だから、こうして朝から潜り込んでいたというわけさ」

再び欠伸をしながら言う声は、まだ眠たげである。嵩利は義兄の仕事ぶりに感心しつつも、呆れながら長椅子へ眼を向けた。

「だからって、何もこんな所で仮眠しなくても」

「なあに、慣れっこさ。…そんなことより嵩利、たまには片瀬へ顔を出せ。口には出さないが、寂しがってるぞ。父さん母さん…ふたりとも頗る元気だけどな、それとこれは別だ。ここで逢ったが百年目、お前にうんと言わせて帰らないと、おれが利恵に叱られるんだぞ」

言われてみれば、海軍大学校の教官であったとき―大正二年の暮に帰って以来、帰省していない。戦時に突入してしまったこともあり、そうそう休暇をとるというわけにはいかなかった。

「そうですね、本当はまめに顔を見せに行きたいのですが…」

「養父殿の生真面目さは知ってる。軍務ひと筋、というのは素人のおれから見てもわかるからな。別に盆暮じゃあなくてもいいから、息抜きに連れ出して帰って来いよ」

瞼の裏に両親の顔と、江ノ島と郷里の波打ち際が浮かんで、嵩利は無性に片瀬の生家が恋しくなった。青山の森閑とした自邸は勿論、鷲頭と嵩利にとって愛を紡げる大切な場所ではあるが、望郷を抱くとなると、やはりあの海辺以外にはない。
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| 綿津見の波の色は・141―150話 | 22:24 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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