大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰肆拾肆話

あくまでも、政府の一員として連なることに終始してきたが、そこに身を置いてみる光景は必ずしも本意に副うものではなかった。

止まることなく膨張した政府の意思に、鷲頭は落胆を隠せなかった。このまま、海軍が引きずられてゆくことになるのは明白で、何としても避けたいという思惑が通用しないのも、また明白であった。

議事堂と海軍省を往き来するこうした日々のなかに、副官である嵩利が傍に居ない。そのうえ自邸へ帰ってもひとりである。たった三日だけのことなのに、鷲頭は暗澹たるものに埋め尽くされてゆく心を抱えながら、それらを押し込めて軍務を執っていた。

そして、今朝から参謀本部へ赴いたわけだが、思いのほか厳しい嵩利の表情を目にして、かれを慰めたまではよかった。

夕食の後に、降って沸いた急務に阻まれ、嵩利に帰宅を退けられたとき、鷲頭は形振り構わず苛立ちをぶつけた。抱えているものが屈折した怒りとなって現れ、あろうことか嵩利へ向かってしまったのだ。

理不尽に詰っても、嵩利はあくまで軍務を脇に置かなかった。説かれて宥められ、部屋から出たあと暫くして、鷲頭はひどく後悔した。嵩利をどんな気持ちにさせたか、いたたまれなくなって、逃げるように参謀本部を辞した。

嵩利の帰宅後、甲斐甲斐しくその世話をしたのは、罪滅ぼしに他ならない。

「―先刻、きみが言ったことだが…全くその通りだ」

寝具のなかで抱き合いながら、鷲頭は低く呟いた。甘い刻にそぐわぬ、暗さを含む声音に、嵩利の口許から笑みが消える。

「何です…?」

「私を見損なった、と言っただろう」

ぎゅ、と腰へ回しかけた腕に力をこめて伴侶を抱きしめながら、鷲頭は答えた。あたたかな嵩利の体が強張るのがわかった。言葉を紡ぐのに逡巡しているのか、僅かな沈黙が二人を包む。

「それは…、あの時の、ほんの少しだけです。でも春美さんの気持ちは、わかっていますから、今はもうそんな気持ちはありません。でも、せめて自邸へ帰るまで、我慢して頂きたかったというのは、本音ですけど」

「そうだな…。だが、わかっているからいいというのか、きみは。それで済む問題ではない。きみを落胆させておいて、私は…」

「それ以上、言わないで…。軍務にかこつけて苛立ちをぶつけたのは、ぼくも一緒です。あのとき本当は、あんな風に言って春美さんを追い出すつもりはなかったんです。だから、もういいんですよ」

やさしい言葉を囁かれ、鷲頭のなかに巣食う暗いものが解けてゆく。甘えかかってくる嵩利だが、かれをいいように扱ってやろうなどという気持ちは、ほんの少しも湧いてこない。

「いや…、言わせてくれ」

「だめです。謝るというのなら、そのぶんだけ確りと、ぼくとの約束を守ってください」

身を離そうとする鷲頭の腕を掴み取ってそれを拒む。きついながらも潤んだ眼を向けた嵩利は、拗ねた顔をして暫し鷲頭を見つめていたが、その顔から一向に暗さは抜けていかないようだった。

「春美さんが、包み隠さず本音をぶつけてくれるのは、ぼくだけでしょう…?違うんですか?」

「…その通りだ」

「それなら、いつまでもそんな顔をしないでください。…いいですか?うんと言ってくださらなかったら、今度こそ怒りますよ?」

先刻のやさしい囁きから一転して、ひやりとしたものを言葉に滲ませて詰め寄られ、鷲頭はたじたじとなって頷いた。

「あ、ああ、わかった。だが、今夜は…きみに手を出すような、そんな気分には到底なれん。だから…こうしているだけで、許してくれないか」

「それは後ろめたくて、ぼくを抱く気になれないということですか?」

据わった眼を向けられ、今度こそ鷲頭は観念して頷いた。

「だが、それはきみに、見損なったと言われたからだ。初めてだったからな。…自業自得とはいえ、あれは少しばかり堪えた」

少しばかり、とは言っていても、とてもそう思っていないのは、表情の暗さからもわかる。今度は嵩利が慌てる番だった。

「そんな…あれは…ただ、良い灸になるかと思って、春美さんを少し困らせるつもりで言ったんです。確かに言い過ぎたと思いましたが、そんなに傷つけていたなんて」

「なに…?」

「ごめんなさい」

僅かに色をなした鷲頭に、嵩利はちいさくなって謝った。しかし、すぐにその色は沈み、思い直したように翳ってゆく。

「随分と、きつい灸を据えてくれたものだな。だが少しでも、きみに軽蔑されたことには、変わりあるまい…」

「軽蔑なんてしていません。違うんです、本当に。どうすれば、信じてくださいますか…?」

先刻とうって変わった狼狽ぶりをみせる嵩利を、鷲頭は黙って腕に閉じ込めた。横臥して抱き合っていたのを、再び組み敷く姿勢へもってゆく。嵩利は白い敷布のうえで身じろいで、不安げに鷲頭を見上げている。

「きみは悪くない。私があのような振る舞いをしなければ、こんな事にはならなかった」

「春美さん…」

静かな口調で言われ、嵩利はちいさく返事をする。間近に顔を覗きこむと、潤ませて泣き出しそうな眼をしている。震えている唇を啄ばんで、長いくちづけを交わす。

「たった三日、きみが傍に居ないだけでこの体たらくだ。私はもう、きみ無しではたちゆかぬ。我儘とわかっているが…今の状況は余りにも…」

苦しげに言うも、言葉が途切れて続かない。鷲頭が言葉を濁すことはそうない。海軍次官の立場で、どのようなものを見聞きしているのか、それだけで推し量るには充分であった。
→【15話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・141―150話 | 01:11 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

こんにちわ。

何度読んでも途中で噴いてしまうのです・・・犬も喰わないwww
二人とも生真面目で誇り高く、だからこそ相手への思いやりにあふれ、何としても筋を通そうとする。
まったく軍人さんらしい二人が、その人柄をそのままに、手さぐりで恋を進めるさまが微笑ましくてたまりません。

| misia2009 | 2010/12/23 13:09 | URL |

コメント返信です

嵩利がしっかりしてきたのはいいけど、最近鷲頭が甘えん坊過ぎる。
どっちが年下なんだかわからなくなってきてます(汗

基本的には典型的な亭主関白、で行くつもりだったんですよ~。

でも、思うように動いていかないところが面白くもあるんですけどね。

| 緒方 順 | 2010/12/24 21:04 | URL |















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