大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰肆拾参話

湯につかって、鷲頭と過ごす二人だけの時間を思い、確かに疲れが抜けてゆくのを感じたものの、明日の会議のことが、どうしても脳裏から離れない。

赤煉瓦の会議室で、独逸海軍の攻撃にそなえる作戦を立てる。その責任の一端を担っているということ。幾ら直に作戦に携わらぬ書記官とはいえ、無視できぬ重圧を感じている。

海上の戦友、上官たちの顔が浮かんでは消えてゆく。嵩利は両手に湯を掬って、顔へ叩きつけるようにして掛けた。そうして、妙な画策をせずに、帰宅早々素直に鷲頭へ甘えていればよかった、という思いが過ぎる。

元々、参戦に前向きでなかった鷲頭ら上官も、海軍が起こした不祥事の前には口を噤むしかなく、殆ど引きずられるようにして、成瀬海相の側近をつとめ、かれの提示する海軍運営を静観している、というほうが寧ろこの場合、正しいのかもしれなかった。

遣る瀬無さを抱きながら、赤煉瓦で作戦の源泉を汲み上げるという、責務を負っている。この矛盾に、鷲頭も嵩利も苛立ちを隠せなかった。しかし、海上へ征った友のことを思えばこそ、軍務中は一切おもてに出していない。

そうして押し込めているものを、ふたりの間でぶつけ合うことだけは、してはならない。嵩利はそこまで思って、やっと思考から、明日の軍務についての憂慮を追い出して素直な気持ちになる。

湯上りのぬくもりを逃さぬよう、手早く和服に着替えて居間へ戻ると、鷲頭は座卓に向かっていて、書類を書いていた。小声でそっと呼びかけてみる。

「お風呂いただきました」

「―ああ、きちんと温まってきたか?」

「はい。あの…、ありがとうございます」

真剣そのものの表情をしている鷲頭の横顔を見つめながら、茶を淹れてこようとおもいたち、嵩利は台所へゆこうと踵を返した。

「茶なら、先刻淹れてきたぞ。…飲むか?」

「あ―。ええ、頂きます」

「きみは何もしなくて良い…。もうすぐ終わるから、待っていてくれ」

「はい」

座卓にひろげているのが、重要な書類のようだというのはわかる。墨の香りがふわりと漂ってきて、嵩利は眼を細めた。筆先を滑らせてゆく端正な姿勢に見惚れ、口許が綻ぶ。

「もう、こうなっては規則も約束もないな。私もこのざまだ」

「いいんです。戦時なんですから、仕様がありませんよ」

包み込むような、限りなくやさしい声が鷲頭の耳を擽る。嵩利の態度は帰宅したときとはまるで違っていた。顔をあげると、座卓の向かいで両肘をついて、嵩利は組んだ手のうえに顎をのせて、鷲頭を見ている。

「先に…部屋へ行っています」

茶を飲んだ後、嵩利は囁くように言って微笑む。座を立って居間を出てゆくとき見せた顔に、どこか羞じいるような色を認めて、鷲頭の胸をざわつかせた。猫のような静かな足音が遠ざかってゆくのを聞いて、密かに息を吐く。

部屋へ入ると床を延べて、上掛けを足元に畳んでおく。

敷きふとんに寝転がってうつ伏せると、枕へ顔を埋めた。そこはかとない眠気がやってくるのを、振り払うようにして寝返りをうつも、気怠けな姿勢で横臥するのがやっとだった。こうして自室に居ると、抑えていた疲労が溶け出してくるのだな、と思う。

「嵩利、眠ったか…?」

束の間、眠りの淵に落ちていた。囁かれた声に慌てて半身を起こすと、すぐ傍に跪いていた鷲頭に抱きとめられる。労わるように髪を撫でられて、嵩利は逆らわず肩へ頭を預けて体から力を抜いた。

「ごめんなさい、春美さん」

「なに、謝らずともよい。お互い様だ」

「お互い様…じゃありませんよ…」

「そうか?」

また拗ねてしまったかと思ったらしい。鷲頭は珍しく探るようなものを声に含ませつつ、訊き返してきた。嵩利は伴侶の腕のなかで、身を預けたまま黙っていたが、そろりと頭を擡げて鷲頭の耳朶へ唇を触れさせた。

「先刻はあんな物言いをしましたけど、いいんです本当に。ぼくがいっとう初めに約束を破ったことは違いありません。だから言った通りに、春美さんの好きにして…」

甘い囁きが鼓膜を蕩かす。鷲頭は返答のかわりに腕に抱いた嵩利の唇を奪いながら、寝具へ傾れこむようにして組み敷いてゆく。襲い掛かるような勢いはなく、まるで愛し子を寝かしつけるかのような、やさしい所作であった。

「―不安を起こす虫は、出ていったか…?」

深いくちづけを終えて離した唇は、微笑を浮かべている。穏やかに笑ませた目許を見上げて、嵩利は鼓動が高鳴るのを感じながら、しおらしく頷き返した。
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| 綿津見の波の色は・141―150話 | 00:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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