大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰肆拾弐話

詰られた理不尽さに苛立ちながらも、鷲頭の唇の感触に心身ともに疼いたのまでは否定できない。なかばまで几帳面に文字が認められているが、ぷっつりと途切れている余白。その、まだ書きつけられていない紙面をみつめてため息を吐く。

「…まったくもう…狡いんだから」

椅子の背に凭れかかって、天井を仰ぐ。日付が変わる前には終わらせ、筆を置くと言い切った手前、手を止めている時間はない。鷲頭を宥めて部屋から追い出したこととも相まって、遅滞は許されない。

と、いうよりも、きちんと有言を実行せねば、鷲頭の身勝手な我儘を叱ることができない。その目的があるからして、是が非にでも終わらせたいのである。しかし思い返してみればあの時、もう夕食も済んでいたし、厳密には軍務中ではない。相変わらずさらりと抜け道を作っていることに気づき、腹立たしさが増す。

一刻半を費やして記録の整理を済ませるころには、嵩利はすっかり不機嫌極まりない表情になっていた。応接室で待っていると聞いて行ってみれば、居るのは加藤と杉だけである。

「春美なら、随分前だが先に帰ったぞ」

父子喧嘩をしたことを察してい、鷲頭が辞していったときの珍しい慌てぶりを思い返しつつも、加藤は何食わぬ顔をしながら返事をする。明日もあるから早く帰れと、背を押して嵩利を部屋から出してしまう。

「まさに、触らぬ神に祟りなし、だな」

静かに扉が閉まったあと暫くして、嵩利の眉間を寄せた表情をさして、加藤は呆れたように呟きながら苦笑を漏らした。他愛もない父子喧嘩に口を挟む気はさらさらない。


音もなく降る小糠雨のなか、嵩利は参謀本部を出て、身ひとつで夜道を歩いてゆく。白い第二種軍装が、ぽっかりと薄闇のなかに浮いていて、青山の森閑とした緑のなかへ入っても、まるで嵩利自身が光を放ってでもいるかのように、その姿は白く際立っていた。

「ただいま、帰りました」

自邸の門を潜るころには、身に纏った軍装は霧のような雨に濡れそぼって、ひやりとした夜気に晒されて冷たくなっている。玄関で靴を脱ぎながら、しんとした廊下へ帰宅を告げる。さすがに凍みてきたものに体が震えて、くしゃみをしてしまう。

廊下の半ばあたりに光が漏れている。居間の襖が細く開いているらしいが、人の気配はない。普段ならば迎えに出てくれるのだが、鷲頭は今日はそうする積もりもないらしい。玄関先に腰をおろして両掌で鼻と口許を覆うと、嵩利はもう一度くしゃみをした。

おもむろに、ふわっ、と背後から温かなものに包まれる。毛布にくるまれたのだと理解すると同時に振り返る。そこには、いつもの和服に袴をつけた鷲頭が立っていたが、襷がけの出で立ちに、眸を丸くしてしまった。

「…お帰り」

「何を、なさっていたのですか?」

「ちょうど風呂を沸かし直したところだ。その身形では風邪をひくぞ」

何時に帰ってくるか明確にしていなかったのに、定期的に湯の加減をみていてくれたのだろうか。たとえこれが、理不尽に投げつけた我儘を省みたうえでの行為にしても、度が過ぎているのではなかろうか。

「小糠雨は、侮っていると後々体に障る。雨の加減を見て…きみの身を案じて、そうしていたまでだ」

毛布にくるんだ嵩利の身を抱き上げ、鷲頭は歩きながら言った。薄闇のなかで、表情はよく分からないが、声音は穏やかでやさしい。だが、喉の奥で唸るような咳払いをしたあと、逡巡をみせる。

「我儘をぶつけたこと…、まだ怒っているか?」

鷲頭の心遣いに、もうそんなものは溶け消えていたが、嵩利は敢えて不機嫌を装って、冷たい態度をとった。

「どうして、訊くまでもないことを訊くんですか。場もわきまえず、あんなことを放言するなんて。…見損ないましたよ。―でも、それとこれは別です。ぼくはもう、これ以上約束を破りたくありませんから、今夜は春美さんの好きにしてくださって結構ですよ」

「そうか…」

辛辣な言葉に、明らかに落胆のため息を吐く鷲頭。言い過ぎたな、と嵩利は毛布で口許を隠したが、伴侶の反省している様子に、胸が切なく圧されるのと同時に、このまま閨に入るまで、敢えて怒っているふりをし通すくらいしても良かろう、ひとつ良い灸になるだろう、とほくそ笑む。
→【13話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・141―150話 | 00:15 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

こんばんわ。

ご無沙汰いたしました。前回の「だ~れだ」にも参りましたが、
今回はぶすったれた嵩利くんがすごく可愛いですwww
戦時下に静かに秘めたものを交わしてるのですね。
さて、次回は好きにしてくれるのかな、してあげるのかな~?

| misia2009 | 2010/12/04 02:47 | URL |

コメント返信です

お返事おくれまして、申し訳ございません。

筆が進みませんが、更新していきますのでよろしくお願いします。

欧州大戦が終わるまで、鷲頭たちにとっては暗い隧道のなかを、ずっと歩いているような年が続きます。

父ちゃん、息子がいないともう折れそうです。表でしっかり頑張っていても、裏では嵩利に甘えたくてしょうがない。そんな状況です。

| 緒方 順 | 2010/12/14 10:25 | URL |















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