大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


web拍手 by FC2

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

  綿津見の波の色は・第佰参拾玖話

海軍次官副官である嵩利は立場上、作戦に関わることには、口を出してはいけないことになっている。規則上でそうなっていても、じっとおとなしくしていられないのが、性分である。

徹夜で書き上げた提案書は、朝食の席で一緒になった山科に、テーブルの下でこっそり手渡している。それを使うかどうかは山科の判断である。

将官ふたり―陸軍省の参議官も、海軍省から来ている加藤も、あくまでも最終の責任者として座に連なっている、という姿勢を崩さない。若手に任せて口を挟まず黙っている。

陸軍の代表は、作戦課長補佐の杉に殆ど任されてい、対する海軍は、軍令部先任参謀の有賀大佐である。 会議に詰めている面々は、それぞれ私的にも交流があり、且つ志を同じくする仲だが、軍務の面となるとやはり、そこは陸海軍のことで、話し合いは中々丸く収まらない。

今日も長い一日になりそうだな、と嵩利は会議の書記係をつとめながら思った。


その頃海軍省では、成瀬海相と議事堂から戻ってきた鷲頭次官が、秘書官と一緒に新聞記者たちに囲まれていた。

厳めしい顔をさせれば、海軍で右に出る者はない、と言われている鷲頭が、記者たちに“門前払いの達人”か何かのように見られたのがその第一印象だったが、鷲頭の記者に対する姿勢は、かれらの予想を良い意味で裏切った。

質問を受けるにしても、答えるにしても懇切丁寧で、威圧的な態度もなく、都合が悪いと姿をくらますとか、追い返すとかいうようなことは一切しなかった。

言葉を濁すというような真似のできない、鷲頭の不器用な真っ直ぐさが、次第に記者たちに信頼を抱かせるようになった。ここだけの話であるから、と鷲頭が前置きすれば、かれらはその厚意に応えて、一切口外しない、というような構図が自然と出来上がっていった。

そんな記者連中で、鷲頭の振る舞いに対して、一段と深く感じ入っている者がいた。

中堅新聞社の海軍専属のベテラン記者で、高田滋という。高田は嵩利の姉婿にあたり、なかなか会えぬ海軍士官の義弟を、実の弟のように誇りに思っている。

具体的に言えば高田は、明治四十二年の陸海軍合同演習に於ける、磐手の活躍ぶりをいち早く江ノ島へ届けた人物である。

かれの敏腕が発揮され始めたのは、それからであったが、程なくして上海へ出張していった為に、海軍専属とは名ばかりになってしまい、妻の生家がある片瀬へ、義弟の活躍を報せてやれることが、めっきり少なくなっていた。

欧州戦争開始間際に本社へ呼び戻され、再び海軍省へ出入りするようになったのだが、何より高田が驚いたのは、鷲頭の存在であった。

妻から義弟が鷲頭家へ養子に行った、というのをきいていたが、嵩利を貰った将官が海軍次官という高職に在り、しかもこうして会見の部屋へ、ひょっこり姿をみせるとは思ってもみなかったのだ。

当然、鷲頭は高田の顔を知らない。正月の休暇に毎年、嵩利の生家へ挨拶に行っているが、五年以上日本を離れていた高田夫妻には、一度も会っていないからだ。

そういう状況の中で高田は、義弟を手許に置いている将官の振る舞いを、初めて目にしたわけである。文句のつけどころのない紳士的かつ武人らしい態度に、安堵と感心と、その他、入り混じったものが過ぎった。

―なんだ。海軍も、とうぶん大丈夫そうだな。

根拠はないが、そのとき高田はおもった。世間が槍玉にあげているほど、軍の内部が爛れているわけではないのだ。いっそ紙面をいくらか割いて、この目で見たものを細々と書いてやろうか、と半ば本気で考えていたし、それを編集部長へ申し出てみようかという気持ちも湧いてきた。

こうして、高田を含む記者たちが会見室を辞してゆくと、鷲頭は次官室へ引き揚げて行く。軍務中は普段から無口で、余計なことは喋らないが、新聞記者に対しては別である。謂わば報道は、軍部と国民を繋ぐ窓口のようなもので、かれらに正しく報せて貰うことが第一で、海軍にとって非常に大事な役割を負った職である、と認識している所以である。

別に愛想がなくとも、真摯に接していさえすれば何とか信用して貰えるものなのだ。今日も記者たちに話したなかで、”ここだけの話”にした事があったが、隣で聞いていた秘書官に何度か眉を顰められた。

あの場に伴っていたのが嵩利なら、あんな表情はしない筈である。いまひとつ器量がないな、と自身の秘書官と嵩利とをはかりに掛けてから、慌てて打ち消した。秘書官もかれなりに海軍を思ってのことなのだ。その思いを酌まずして較べるべきではない。上官にあるまじき倣岸である。

自身を叱咤してから、ふと、柱時計を見上げた。もう時刻は夕方ちかくを指している。今日は閣議が長引いて、それからあの記者会見である。こうなると時間が幾らあっても足りない。

書類を繰る手を止めて、鷲頭はちいさく息を吐いた。

―この分では、今夜も帰って来まいな―

戦時中の次官がこの有様で、嵩利は況してや、その戦の渦中とも言える作戦会議へ出張っているのだ。その忙しさはひとかたではないだろう。昨日の朝、帰ってきます、と言い切ったことを守れなくとも、今回ばかりは目を瞑ってやらねばならんな、と、ちくりと刺す寂しさを揉み消しながら思った。
→【10話】 →目次へ戻る

web拍手 by FC2

| 綿津見の波の色は・131―140話 | 23:20 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://landofrisingsun.blog66.fc2.com/tb.php/284-c7e04232

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。