大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰参拾捌話

まだ始業前だというのに、陸軍参謀本部も、海軍軍令部と同様に慌しかったが、対独戦の作戦課に当てられた室内は思いのほか静かであった。

カーキ色の軍装に参謀飾緒を吊った、やや厳しい出で立ちをした杉和胤大佐の出迎えで、加藤を始めとする海軍の面々は室内へ足を踏み入れる。

海軍からは他にも海軍省から軍務局長先任副官と軍令部から参謀が二名来ており、あわせて六名の訪問である。

「折角英国から帰ってきたと思ったら、今度はここに缶詰か。尚坊と靖坊に、そのうち父御は顔を忘れられるかされそうな境遇だな」

加藤は部屋を眺め渡して、杉作戦課長補佐に向かってつくづくと、同情するような口調で言った。

「義父がいますから、流石にそれはありませんよ」

そう言いつつも、杉は痛いところを突かれたといった表情を隠さずに、太い眉をさげて加藤へ笑いかけた。

杉和胤は旧姓を山口といったが、中佐のとき、上官で現参謀総長の杉惟之大将の養嗣子になり、かれの姪と結婚をして、いまでは二児の父である。

それから、加藤の後ろに立つ士官のなかに嵩利と山科がいるのを認めて、その笑顔のまま親しげな身振りで中へ招く。陸軍からも追々、要所に務める将官、士官がやってきて席に着き、打ち合わせが始まる。


陸海軍の足並みが揃わねば、黄海からの上陸に続く陸戦に支障が出てしまう。

互いに主張したい部分はあったが、慎重に論を重ねる必要があり、会議は一日では到底終わりそうになかった。時間は飛ぶように過ぎて、嵩利たちは昼食も夕食も陸軍省の食堂で済ませた。

一度も海軍省へ戻らずに過ごし、会議の中休みには陸海軍入り混じって、集まった面々と和やかに歓談しながら、それはそれで充実してはいたが、夜中になって漸く会議が終わった。

嵩利は参謀本部の中庭へ出てゆき、ひとり腰を落ち着けながら、鷲頭のことをおもった。

―明日は帰るなんて、偉そうに言ったけれど…この分だと無理だろうなァ―

上陸作戦となれば、その方面へ出ている艦隊の編成を再要請せねばならないし、本国から万端の準備を含めて指示を伝えねばならない。前線へゆく者たちに負担を掛けては本末転倒である。

「鷲頭くん、ここに居たのか」

「あ、山科さん」

「もうそろそろ、休んだらどうだい?明日は赤煉瓦とここを、行ったり来たりになりそうだからね」

「ああ…、もう、とうに零時を過ぎているんですね」

全く眠気の訪れていない頭を振りながら、懐中時計を引っ張り出して呟いた。

参謀本部の上階に、寝泊りできる部屋があり、そこを貸して貰う事になっている。本音を言えば今からでも、疲れ切った身を引き摺って自邸へ帰りたかったが、それは無理な話である。嵩利はふう、と息をついて回廊へ入った。

明後日には、陸海軍の要たる上官にも列席して貰わねばならない会議なのだ。

ここで自分たちが確り提案をしなければ、何の為に役に就いているのかわからなくなる。嵩利はあてがわれた部屋へ引っこんだが、寝台に潜らず、机へ向かった。

いまこの瞬間にも、海上へ出ている敬愛する上官や大切な友たちは、独逸軍の出方を窺って気の休まる時もない、という状況に置かれているのだ。それを考えれば陸に居て、ひと晩やふた晩寝ずにいるくらい、どうということはない。

加藤参議官や杉補佐官から聞いたことを反芻しながら、もう一度考えを組み立ててゆく。嵩利の居室に於いて、紙面を滑る万年筆の音が絶えることはなく、それはとうとう払暁まで続いた。

結局、嵩利は一睡もせぬまま、できあがったそれを綴じた黒表紙の計画書を抱えて、部屋を出た。廊下には朝の陽が燦々と射している。

その光へ顔を向けて、射るように眼を眇めた。精悍な表情に眠気は微塵もなく、廊下を歩く足取りは確りとしている。きちんと二種軍装を着込んだ姿で、早朝の食堂へ向かう。

その姿を目にした者は誰もいなかったが、もしここに、日清戦争のとき大尉だった、若き日の鷲頭を知る者がいたとしたら、今の嵩利に、全く同じものを重ねて見たことだろう。
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| 綿津見の波の色は・131―140話 | 00:48 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

杉大佐…!!

立派なお父上になられて・・・(号泣)
内地で踏ん張る嵩利の苦悩を感じました。
春美さんの背中を見ながら、息子は大きくなったのですね。
血のつながりが無くても、志の経脈受け継いだ彼らは、本物のそれ以上に親子そのものです。

| かなやの | 2010/11/16 19:14 | URL |

コメント返信です

伴侶でもあり、父子でもある、というふたりの関係を、今回ちょっと離れたところから描いてみたつもりです。

軍人同士の絆みたいなものも、何となく感じて頂けたらいいなあ、と思っています~。

| 緒方 順 | 2010/11/19 03:26 | URL |















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