大日本帝國軍の愛と友情の日々

逓信省の検閲済でありますが、男色趣味満載ですので、苦手な方は華麗なターンでご退却下さい!所謂BL小説サイトです。右側に注意書きがございます。必ずご一読ください

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  綿津見の波の色は・第佰参拾漆話

朝の数刻を除いて、灼熱の陽射しは、今日も帝都のうえに降り注いでいる。

赤煉瓦で建てられた海軍省の内部はまるごと、石窯に変貌している。居ながらにして、火で炙られてでもいるかのような暑さである。軍令部も海軍省も休日返上で、その様子は戦場さながらであった。

登庁すると嵩利は二種軍装の上衣を脱ぎ、自身の執務室の壁掛けに吊っておくのが常で、それは帰るまでそのままである。

シャツの袖など、肘あたりまで捲り上げた格好で執務に就いているが、嵩利は山科と共に、あらゆる方面を駆け回っている身であるから、そのような身形をしていても、鷲頭は何も言わないし、叱るような眼を向けはしなかった。

対して次官の鷲頭は端正な身形を全く崩していない。この猛暑のなか、上着を脱いだ姿を誰も見たことがなく、鷲頭自身は痩せ我慢をしているわけではなく、暑いとか寒いとか、そんなことを気に掛ける暇があれば、海上に出ている精鋭たちの動きに、全神経を傾けているが故である。

そんな或る日の朝。

嵩利は愛用の小振りの革鞄を提げて、自室から出て来ると、居間で新聞をひろげている鷲頭に呼び止められる。座卓のうえに肘をついて、寛いだ姿勢でいるが、顔をあげて嵩利を見据えるその眼は厳しい。

「もう、泊り込む積もりか?」

「…はい」

忽ち不機嫌そのものの表情で、鷲頭は不貞腐れたのを隠さずに低く唸った。

「事情は分かっているが…、何とかならんのか」

「そう言われましても、ぼく一人の判断では如何ともし難いです」

弱りきった顔で言って、嵩利は頭を掻いた。

今日から軍事参議官の加藤に連れられて、軍令部参謀である山科と一緒に、陸軍参謀本部へゆくことになっている。開戦直前まで海外駐在武官だった手前、補佐と銘打っているが、実質の作戦課長である杉和胤大佐と、対独戦の共同戦線を張るための打ち合わせに入るのだ。

「次官先任副官が同席せぬ訳にはいかんか…。それにしても、こうも早いうちに約束が反故にされるとはな」

軍務については頭で全て理解していても、それは海軍次官の鷲頭中将であって、こうして自邸に居る鷲頭は、駄々を捏ねることも、不貞腐れることも憚らない、嵩利の伴侶としての顔を隠さないでいる。

「何も、そんな言い方しなくても…。春美さん、ぼくだってここへ帰って来たいんですから。少しだけ我慢してください」

恨み言めいた口調と、罪を問うような眼つきに、嵩利は益々小さくなってうろたえる。海軍重鎮の秘書官副官を一手に引き受けている身で、驕りも気負いもなく、自然体でこなしている態度は、周囲にある種の和を振り撒いている。

政府の前例のない方針によって、電撃的とも言える欧州戦争への参戦決定に、成瀬海相は直近に発生した海軍の不祥事の手前、不満をみせることはなかった。

だが、海軍を支える精鋭たちの双肩に、等しくその重責が突然圧し掛かってきたわけで、戦時にあって、嵩利のそういった鷹揚とした振る舞いは頼もしく、小なりとも政治へかかわらねばならぬ、気苦労の多い鷲頭にとって、一服の清涼剤のような存在である。

それが取り上げられることを思うと、憂鬱が滲み出てくる。

「我慢ならん」

厳正な海軍中将は形だけで中身はまるっきり、鷲頭春美そのものである。嵩利は開いた口が塞がらぬ、といった表情で伴侶を見返して言葉もなかったが、仕様のない人だな、と半ば微笑ましくおもいつつ、大きく息を吐く。廊下へ革鞄をおろすと、敷居をまたいだ。

「明日は帰って来ます、約束しますから…」

「守れるのか?」

「守れなかったら…その時は、春美さんの好きにして下さい」

胡坐をかいて不機嫌な顔をして問うてくる鷲頭の前へ膝をついて、嵩利は声音に艶を含ませてその耳へ囁きかけた。それでいて、覗きこんでくる表情は子をあやす母親のような温かさに満ちている。

ぐっと眉間を深くして嵩利の眼を見詰め、物言いたげに唇を僅か、尖らせた。頭を伴侶の胸に預けながら、鷲頭は離れがたそうに背へ緩く腕を回して、抱きついてくる。

以前嵩利に身を任せて以来、激務が拍車をかけるのか、甘えたがる傾向が強くなっている。そんな鷲頭を愛しくおもいつつ常に案じてもいる。かれの秘めた苦悩を吐き出させることができるのは嵩利だけであるというのを、改めて思い知らされる。

「足りないかも知れませんが、今日は、これで乗り切ってください」

拗ねきって、への字に曲げている口の端へ唇を落としてから囁き、思いの丈を篭めてくちづけをする。嵩利とて、鷲頭と二人きりの時間を棚上げにされることに、不満がないわけではないのだ。朝から、眼の眩むような濃厚なくちづけを与えながら、嵩利の胸の奥で熱いものが、ことりと動く。

この安らげる自邸の門をひとたび潜れば、そとはまるで別世界である。

これまで乗り越えてきたものの集大成、と言ってもいい程の難局に、こうして手を取り合って向かえるだけで、満足せねばならぬ状況なのか。それを、こうして僅かな甘い時間を得ることに拘ることは贅沢に過ぎず、不遜なのだろうか。
→【8話】 →目次へ戻る

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| 綿津見の波の色は・131―140話 | 16:46 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

NoTitle

のわーーーーーっっっ(大絶叫)

明日、嵩利帰ってこないで、罰として鷲頭さんに好きにされちゃえYO!とジャ○さんばりの滾り様です(><)くうぅぅぅ!!!
熱いんですね!熱いから上着も脱いじゃいますよね!ワイシャツの嵩利に脳内で萌死しました。どうした私。軍服はしっかり着こなしてこそだろうという持論はちょっと置いておいて、

おおおおお!熱いのに汗もかかずに軍務をこなしてしまう鷲頭閣下ーーー!!!やはり持論を引っ張り返してきて、「居間で新聞を読む」閣下にキュン死。どうかその新聞は東京朝日であってくれ。

すみませんすみません、今日テンション変なままこちらに来てたぎり過ぎています… 杉大佐お久しぶりであります!!まさか大陸の作戦は御自ら出向かれるので…!?ってか読んでなかったからかいつのまにか大佐に(><)すみませんちゃんと予習しますっっ!!

 強気な嵩利におとなのいろけを感じてお腹いっぱいです。いつも楽しみにしてます(^^)

| kanayano | 2010/11/14 18:17 | URL |

お邪魔します。

いやもう本当にお邪魔します鷲頭さん×2.
朝から、と言うか朝だけ。
唇が離れる瞬間も、だだこねまくりそうな春美さん。
口付けも明らかに攻め方にまわってる嵩利くん。

困ったな~~ 私も「居間で胡坐で新聞」の親父くささがイイ!のに、それが受け手で、甘えまくってるとこがまたイイ! 堪らん! であります…男らしい受け手、最高であります。

嵩利くんも、いつもキリッとしてるイメージだったので、二種軍装脱ぎには開いた口が塞がりませんでした。士官シャツってなんだか艶があって色っぽいんですよね…襟ボタンも少々寛げて頂いて…

ラブシーンというのは眼に見えるものを書いていくだけなので飽きやすいのですよね、書くほうも読むほうも。

いつも、国と軍の難局を思う職務上の悩みの描写がとても好きです。また、どれほどの資料に基づいて書くのだろうと感服しております。
同時に、伴侶を思う深い心理描写と、甘々。とても栄養バランスが良く、心と萌えの滋養強壮に良い回でした♪ ごちそうさまでした。

| misia2009 | 2010/11/15 00:02 | URL |

好きにされちゃいます

陸海軍合同作戦の会議が一日で決着する筈はありません。

フラグです、フラグ(笑

意外と、庁舎のなかでは上衣脱いで軍務に就いているらしいです。あと描写し忘れましたが、二種軍装の下に、白い麻のベストも着てます。五つ金釦のです。上衣脱いでその恰好で袖まくりしてます。

鷲頭の「居間で新聞を読む」姿に萌えられた!?
結構やってますよ??そして新聞はあの当時だとやはり、大手の東京朝日は読んでいるとおもいます。

以前メッセージのほうで送らせていただいた略歴に記載しました流れでも、和胤は大正三年現在、大佐になっています。惟之と和胤の話は、明治四十三年の時点で一時打ち切ったので、話自体は現在止まっていますが、「綿津見~」のほうでチョイチョイ出ているので、きちんと時間は流れています。

「変わらぬ~」の登場人物の経歴も、そのうち詳しいものを上げ直しますので、気長にお待ち下さいませ!

| 緒方 順 | 2010/11/16 01:22 | URL |

甘えたがり親父

軍服着崩し、というか上衣脱いだだけでこの反応とは驚きでした。

いや~、さすがに猛暑では庁舎のなかに於いては上衣くらい脱ぎますよ!というか脱がせてやって!

立ち襟のシャツまでは、はだけられませんがね~。そんなことしたら鷲頭の眼つきが大変なことに(何

飽きやすい、わかってくださいましたか~。やっぱり時々のほうがいいですよねえ。そういう描写って。

このくらいのバランスのほうが、わたしも書き易いです。がんばってうまいバランスを追求したいと思います^^

ご意見、ご感想、いつもありがとうございます♪

| 緒方 順 | 2010/11/16 01:28 | URL |















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